衆議院解散前日(11月20日)付けで、
萩生田光一・自民党筆頭副幹事長および福井照・報道局長から、
在京テレビキー局編成局長および報道局長宛て、
要請文書が出された。いわく、選挙があるので「公正中立」と「公正」な放送を心がけろ、うんぬん。
萩生田は、総裁特別補佐も務める安部総理の側近。ゆえに、この文書は安部総理に代わって発出された、と受けとめられた。
「公正中立」や「公正」の文言がある要請だから問題なしか、というと、それは全く違う。
(1)A41枚の文書の中に「公正中立」、「公正」という言葉を13回も繰り返し強調していて、本気だぞ、という脅しをかけている。
(2)「出演者の発言回数及び時間等」「ゲスト出演者等の選定」「テーマについて」「街角インタビュー、資料映像」など具体例を挙げて要請している。・・・・こうした問題について自民党は日ごろから文句を言っているので、言われたテレビ局は個別に何をするなと言われているのかがピンと来るようになっている。具体的な圧力なのだ。
(3)テレビ朝日の報道局長の発言が問題となって国会で証人喚問が行われた例(いわゆる「椿事件」)を(具体名を出さない形で)引き合いに出している。・・・・政権党として、言うことを聞かないと国会に呼びつけるぞ、そして、政府は放送免許剥奪の権限があるぞ、と脅しをかける意味合いがある。
自民党の今回の文書発出は、どう見ても政権与党として禁じ手だ。
明らかに憲法が保障している表現の自由への重大な挑戦だ。
これが他の先進国で起きたら、単なる政権批判だけではすまない。政権そのものが揺らぐ大問題になるはずだ。
ところが、驚くべし、この文書を受け取ったテレビ局や、それを知った他の報道機関の多くが、本件を重大な問題だと受け止めていない。自民党の「暴挙」を知りながら、日本の報道機関はほぼ1週間放置した。テレビ局は、報道したら安部総理に睨まれるから、ということでおとなしくしていた。政府を監視するというマスコミの役割を果たす気力も能力も持っていなかった。
官邸詰めの記者クラブにいたテレビ局以外の新聞社の記者たちも、うすうすと知っていたらしい。しかし、どの新聞も通信社もこれを報道しなかった。
インターネットテレビ「ニューズオブエド」が、最初に報道した。
しかし、その後もテレビ局はニュース番組でこれを取り上げていない。・・・・これは、結果的に、在京キー局が選挙に際して自民党擁護の役割を果たすことになる。偏向以外の何ものでもない。これこそ、放送免許剥奪につながる問題ではないか。
「国境なき記者団」が発表している「報道の自由度」世界ランキングによれば、日本はG7の中ではダントツのビリだ。
先進国でも、異例の下位にあり、2014年は何と59位だ。
民主党政権時代は、10位台か、悪くても20位台だった。
第一次安倍内閣の時も51位を記録しているから、安倍総理は構造的に報道に対して弾圧的だと世界にも認識されているわけだ。
日本は独裁国家へ至る会談を着実に歩みつつあるように見える。
政府が報道機関に圧力や懐柔をかけてくる「ホップ」。
国民が洗脳されていく「ステップ」。現在はこの途上だ。
次は、洗脳された国民をマスコミが煽り、選挙による一党独裁が実現する「ジャンプ」。
そして、その先に戦争が待ち受けている。
□古賀茂明「自民党の圧力文書 ~官々愕々第135回~」(「週刊現代」2014年12月20日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走」
「【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案」
「【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で」
「【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権」
「【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り」
「【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~」
「【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
萩生田光一・自民党筆頭副幹事長および福井照・報道局長から、
在京テレビキー局編成局長および報道局長宛て、
要請文書が出された。いわく、選挙があるので「公正中立」と「公正」な放送を心がけろ、うんぬん。
萩生田は、総裁特別補佐も務める安部総理の側近。ゆえに、この文書は安部総理に代わって発出された、と受けとめられた。
「公正中立」や「公正」の文言がある要請だから問題なしか、というと、それは全く違う。
(1)A41枚の文書の中に「公正中立」、「公正」という言葉を13回も繰り返し強調していて、本気だぞ、という脅しをかけている。
(2)「出演者の発言回数及び時間等」「ゲスト出演者等の選定」「テーマについて」「街角インタビュー、資料映像」など具体例を挙げて要請している。・・・・こうした問題について自民党は日ごろから文句を言っているので、言われたテレビ局は個別に何をするなと言われているのかがピンと来るようになっている。具体的な圧力なのだ。
(3)テレビ朝日の報道局長の発言が問題となって国会で証人喚問が行われた例(いわゆる「椿事件」)を(具体名を出さない形で)引き合いに出している。・・・・政権党として、言うことを聞かないと国会に呼びつけるぞ、そして、政府は放送免許剥奪の権限があるぞ、と脅しをかける意味合いがある。
自民党の今回の文書発出は、どう見ても政権与党として禁じ手だ。
明らかに憲法が保障している表現の自由への重大な挑戦だ。
これが他の先進国で起きたら、単なる政権批判だけではすまない。政権そのものが揺らぐ大問題になるはずだ。
ところが、驚くべし、この文書を受け取ったテレビ局や、それを知った他の報道機関の多くが、本件を重大な問題だと受け止めていない。自民党の「暴挙」を知りながら、日本の報道機関はほぼ1週間放置した。テレビ局は、報道したら安部総理に睨まれるから、ということでおとなしくしていた。政府を監視するというマスコミの役割を果たす気力も能力も持っていなかった。
官邸詰めの記者クラブにいたテレビ局以外の新聞社の記者たちも、うすうすと知っていたらしい。しかし、どの新聞も通信社もこれを報道しなかった。
インターネットテレビ「ニューズオブエド」が、最初に報道した。
しかし、その後もテレビ局はニュース番組でこれを取り上げていない。・・・・これは、結果的に、在京キー局が選挙に際して自民党擁護の役割を果たすことになる。偏向以外の何ものでもない。これこそ、放送免許剥奪につながる問題ではないか。
「国境なき記者団」が発表している「報道の自由度」世界ランキングによれば、日本はG7の中ではダントツのビリだ。
先進国でも、異例の下位にあり、2014年は何と59位だ。
民主党政権時代は、10位台か、悪くても20位台だった。
第一次安倍内閣の時も51位を記録しているから、安倍総理は構造的に報道に対して弾圧的だと世界にも認識されているわけだ。
日本は独裁国家へ至る会談を着実に歩みつつあるように見える。
政府が報道機関に圧力や懐柔をかけてくる「ホップ」。
国民が洗脳されていく「ステップ」。現在はこの途上だ。
次は、洗脳された国民をマスコミが煽り、選挙による一党独裁が実現する「ジャンプ」。
そして、その先に戦争が待ち受けている。
□古賀茂明「自民党の圧力文書 ~官々愕々第135回~」(「週刊現代」2014年12月20日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走」
「【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案」
「【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で」
「【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権」
「【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り」
「【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~」
「【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」