(1)米議会上院は、6月2日、その前日(1日)に失効した「愛国者法」に代わる「米国自由法」を賛成67、反対32の賛成多数で可決した。下院では、すでに先月、賛成338、反対83で可決済み。2日夜、オバマ大統領が署名して法律は成立した。
エドワード・スノーデン・米国家安全保障局(NSA)職員(当時)による内部告発によって、一般市民への監視活動が明らかになってから2年。ようやくその活動が制限されることになる。
(2)同時多発テロ事件(2001年9月11日)を受け、米議会は十分な審議も経ず、愛国者法をスピード制定した。NSAのテロ監視に係る権限は大幅に拡大され、同法215条を根拠に、不特定多数の市民の電話、ネットにおける通話記録などが収集された。
(3)大規模な市民へのスパイ活動について、当時情報収集していたスノーデン・NSA職員(当時)は、2013年6月、ジャーナリストに情報を流し、香港で会見。英「ガーディアン」などメディアが、NSAによる大量情報収集の実態を暴露した。
米司法当局は、スノーデン・NSA職員(当時)に係る逮捕命令を出し、米国国内では国家機密漏洩の「反逆者」とされた。
一方で、真実を伝えた「ヒーロー」と見る人びともいて、世論は分かれた。
彼は、同年8月、ロシア移民局から期限付き滞在許可証の発給を受け、現在ロシアに滞在中だ。
(4)米国自由法では、NSAは一般市民の通信記録を収集・保存できず、通信会社に通信記録保存が委ねられる。特定の個人がテロ集団にリンクしている、と証明できた場合に限り、政府はその情報を入手できる。ただし、その際は外国情報活動監視裁判所(FISC)が発行する令状が必要だ。
新法をめぐって、国家安全保障か個人のプライバシー保護か、と激しい議論が重ねられてきた。ヒューマン・ライツなど人権監視機関は、「巨大な監視体制の潮流を変える」画期的な出来事だと、おおむね米国自由法を評価する。
米国自由法の立役者ともいえるスノーデン・NSA職員(当時)は、2日、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのイベントに動画中継で参加し、「歴史的にも重要な一歩だ」とコメントした。「曝露から2年で、政府の監視活動は人権侵害だという意識が市民の間で高まった」と強調した。
だが、愛国者法の延長を主張するマコネル・共和党院内総務らは「米国の安全保障を脅かす」と危機感を表明したりしている。
(5)新法の情報収集制限について、懐疑的な見方をする向きもある。
ジェームズ・コール前司法副長官は、「NSAは大量情報収集を続けていくだろう」と強調し、「FISCが新法条項にどのような解釈をつけていくのかが問題だ」・・・・と、FISCの令状があれば政府は市民の情報を入手できる点に警鐘を鳴らす。
□マクレーン末子(在米ジャーナリスト)「「愛国者法」失効と「自由法」成立」(「週刊金曜日」2015年6月19日号)
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