(1)「新国立競技場、950億円で造れる」【5月15日付け「スポーツ報知」の一面】
「民間会社」が提言、「政府関係者」に支持が広がる・・・・米国のスポーツコンサル会社「アンダーアーマー」が提案したらしい。日本ではビジネスとしてのスポーツが未開拓なので、新たな市場を狙ったもの、という【注】。
(2)下村博文・文部科学相は、5月18日、舛添要一・東京都知事に都に資金協力を頼む会談の際、「東京五輪までは屋根を設置せず、座席も一部仮設」と言い出した。
しかし、屋根(正確には防音性遮蔽膜)をあとから取り付けること自体、費用と工事難易度をつり上げる。
舛添知事は、「都知事日記」【「現代ビジネス」】で述べた。
「都が500億円出す約束はない。文科省もJSC(日本スポーツ振興センター)にも能力と責任意識が欠けている
「大日本帝国陸軍を彷彿とさせる」
「東京で都立競技場建設も検討」
(3)ネットでは大反響。
(a)「前の競技場を壊すべきではなかった」「都税を無駄遣いしないでほしい」
(b)「国際コンクールの結果を尊重せよ」「(新国立競技場をデザインした)ザハに失礼」
テレビや新聞も、今さらながら「お粗末」「誰の責任だ」といいだした。ちっとも報道せず、論議の場も作らなかった自分たちの責任を棚にあげて。
(4)「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」は、2013年10月の結成以来、「神宮外苑と旧国立競技場を直して使おう」という提案をしてきた。広く論議を起こし、35,000人の賛同者を集めた。
その結果、入札の不調もあって、解体は2014年7月から2015年1月まで延びた。
安藤忠雄・新国立競技場デザインコンクール審査委員長は、新国立競技場を作るとしても木は一本も切らない、と言っていた。しかし、すでに相当数の木が伐採された。
「技術的に無理が多い。間に合わない。維持費も含め壮大な無駄。直して使うほうが、環境の時代と、IOCのアジェンダ2020にも適合する」・・・・「手わたす会」は、そう言っていたから、「だからいったじゃないの~~」♪♪♪
(5)槇文彦・建築家のグループは、代替案を提案。
「巨大アーチを取りやめ、観客席だけを屋根で覆い、2万席を架設にする」
この問題で果敢に発言してきた森山高至・建築エコノミストは、初代の競技場をもとに環境になじむ案を出している。
これに対し、森喜郎・東京五輪組織委員会会長は、「経済大国日本にふさわしい」「3~千億円かかっても立派なものを作る」と6月になってもまだ言っている。
200万円くらいしか年収のない若者が多い現在、この高度軽罪成長期的感性は度し難い。
(6)そもそも2019年にラグビーのワールドカップをしたいがために、大義なきオリンピックを抱き合わせで招致し、ろくな論議もないまま、こけ威しの実現不可能なプランを当選させた。はじめから、すべて順序が逆なのだ。
(7)キールアーチだの開閉式屋根だの、建築だけに話が集中しているが、新国立を考えるためには、
・景観
・緑化
・交通
・防災
・避難
・ヒートアイランド
・資源
そして、一番大事な都民の公園と住宅をつぶすことを論議しなければならない。
「手わたす会」は、6月16日、無理な現行案を諦めること、作るとしても「神宮外苑に負荷のかからない競技場を」とする緊急市民提言を文科省とJSCに提出した。
オリンピックは所詮、運動会だ。緑の原っぱでやるのも環境の時代にふさわしいではないか。
【注】下村文部科学大臣は、東京オリンピック・パラリンピックの関係団体が集まった会議で、大会のメインスタジアムになる国立競技場の改築について、2019年5月末の完成を目指すとしたうえで、改築費は当初の予定よりおよそ900億円高い2,520億円とする方針を示した。【記事「
国立競技場改築費 2520億円の方針」(NHKNEWSWEB 2015年6月29日)】
□森まゆみ(作家)「新国立競技場、工事遅れや費用増大で責任の押し付け合い 「だからいったじゃないの~」」(「週刊金曜日」2015年6月26日号)
【参考】
「
【五輪】が都民の生活を圧迫する ~汚染市場・アパート立ち退き~」
「
【五輪】公共事業のためか? ~メッセージの発信、新しい試みを~」
「
【原発】放射能の海で「おもてなし」 ~2020年東京五輪~」
「
【原発】東京放射能汚染地帯 ~オリンピック競技候補会場~」
「
【原発】放射能と東京オリンピック招致」