語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】中野重治「わかれ」

2015年07月07日 | 詩歌
 あなたは黒髪をむすんで
 やさしい日本のきものを着ていた
 あなたはわたしの膝の上に
 その大きな眼を花のようにひらき
 またしずかに閉じた

 あなたのやさしいからだを
 わたしは両手に高くさしあげた
 あなたはあなたのからだの悲しい重量を知っていますか
 それはわたしの両手をつたって
 したたりのようにひびいてきたのです
 両手をさしのべ眼をつむって
 わたしはその沁みてゆくのを聞いていたのです
 したたりのように沁みてゆくのを

□中野重治「わかれ」(『中野重治詩集』(岩波文庫、1978))
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 【参考】
【詩歌】中野重治「あかるい娘ら」
【詩歌】中野重治「しらなみ」
【詩歌】中野重治「浦島太郎」
【詩歌】中野重治「豪傑」



【沖縄】翁長知事訪米のインパクト ~メディアが伝えてないもの~

2015年07月07日 | 社会
 (1)翁長雄志・沖縄県知事の米国訪問について、報道がひどい。
 米国政府は、駐留軍と地元との関係を重視し、親睦という名の懐柔政策をとっている。彼らは沖縄の民意に敏感で、住民の理解を得られない辺野古移設に強い懸念を持っている。また、沖縄に対して適切な対応をとることができず、反発ばかり強める安倍政権にやきもきしている。冷静と冷遇を装いながら、最重要キーパーソン(ジョン・マケイン上院軍事委員会委員長)が直接対応したことに、その深刻さが現れている。

 (2)米国の動揺をメディアは正確に伝えていない。
 米国のパフォーマンスをそのまま報じることで、翁長知事訪米の歴史的インパクトを伝えそこなっている。

 (3)そもそも、米国政府は20年前に海兵隊の沖縄からの撤退を構想していた節がある。
 ウォルター・モンデール・元駐日大使(クリントン政権)にたいするインタビューが昨年公開されたが、彼は実に驚くべき証言をしている。彼が駐日大使だった1995年、沖縄で少女暴行事件が起き、米軍への厳しい世論が巻き起こった。モンデールは「県民の怒りは当然」で、自分も同じ感情を共有した、という。事態は、米軍が沖縄から撤退すべきか否かという問題まで及び、米軍のプレゼンス削減は避けられない、との認識に至った。米国としては、沖縄の要求に大幅に譲歩せざるを得ない状況に追い込まれている、と考えていたのだ。
 ところが、これに待ったをかけたのが、ほかならぬ日本政府だった。
 モンデール元大使いわく、「彼ら(日本政府)はわれわれ(在沖縄海兵隊)を沖縄から追い出したくなかった」。
 その結果、翌年4月、橋本龍太郎・首相とモンデール大使の緊急記者会見となり、「普天間基地の5~7年以内の返還」という合意が発表された。これは、海兵隊の沖縄からの撤退ではなく、沖縄の米軍基地への統合案で、米軍のプレゼンス削減とはほど遠い内容だった。

 (4)海兵隊は、さまざまなシチュエーションに即応しなければならない。ために、多様な環境での訓練が必要だ。各地を巡回する訓練が重要であり、沖縄に駐屯しなければならない特別な理由はない。
 いま、沖縄で新しい歴史が動き出している。
 この息吹を日本政府やメディアが捉え損ねると、大きなしっぺ返しが待っている。

□中島岳志「翁長知事訪米のインパクト ~風速計~」(「週刊金曜日」2015年7月3日号)
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 【参考】
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
【沖縄】辺野古対抗と「わが軍」 ~安倍政権の思考停止~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【沖縄】辺野古対抗と「わが軍」 ~安倍政権の思考停止~
【沖縄】の今(2) ~日米同盟の再構築へ向けて~
【沖縄】の今(1) ~東アジアの中の琉球~