語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】岩田宏「動物の受難」

2015年07月26日 | 詩歌
 あおぞらのふかいところに
 きらきらひかるヒコーキ一機
 するとサイレンがウウウウウウ
 人はあわててけものをころす
 けものにころされないうちに
 なさけぶかく用心ぶかく

 ちょうど十八年前のはなし

 熊がおやつをたべて死ぬ
 おやつのなかには硝酸ストリキニーネ
 満腹して死ぬ

  さよなら よごれた水と藁束
  たべて 甘えて とじこめられて
  それがわたしのくらしだった

 ライオンが朝ごはんで死ぬ
 朝ごはんには硝酸ストリキニーネ
 満腹して死ぬ

  さよなら よごれた水と藁束
  たべて 甘えて とじこめられて
  それがわたしのくらしだった

 象はなんにもたべなかった
 三十日 四十日
 はらぺこで死ぬ

  さよなら よごれた水と藁束・・・・

 虎は晩めしをたべて死ぬ
 晩めしにも硝酸ストリキニーネ
 満腹して死ぬ

  さよなら よごれた水と・・・・

 ニシキヘビはお夜食で死ぬ
 お夜食には硝酸ストリキニーネ
 まんぷくして死ぬ

  さよなら よごれた・・・・

 ちょうど十八年前のはなし

 なさけぶかく用心ぶかく
 けものにころされないうちに
 人はあわててけものをころす
 するとサイレンがウウウウウウ
 きらきらひかるヒコーキ一機
 あおぞらのふかいところに。

□岩田宏「動物の受難」(『頭脳の戦争』(思潮社、1962)所収)
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 【参考】
【詩歌】岩田宏「むすめに」
【詩歌】岩田宏「感情的な唄」
【詩歌】岩田宏「頭脳の戦争」 ~頭のなかの甲乙丙~
【詩歌】岩田宏「部屋」 ~おふくろ~
【詩歌】岩田宏「ささやかな訪問」
【読書余滴】すべてをルフランに変える青春の無知