(1)衆議院で審議中の「安全保障法案」に対して全国の地方議会が国会に提出した意見書について、NHKが「ニュース7」で報じたが、「反対」の立場にはほとんど触れずに放送していた。
(2)6月20日19時からの「ニュース7」は、守本奈美・アナウンサーが
「去年7月の集団的自衛権の行使容認を可能にする閣議決定以降、先週までに(中略)246議会から意見書が国会に提出され」たとし、
「意見書は賛成の立場が3つの議会、反対の立場が181、慎重な審議を求めるものが53議会」
「それぞれの現場を取材しました」
と続けた。
ところが、実際に「現場取材」で放映したのは、
「慎重」の埼玉県滑川町議会
「賛成」の金沢市議会
だけで、「反対」議会は一切紹介しなかった。しかも、滑川町議会の意見書は、安保法案反対の共産党も含む全会一致の議決だったのに、放送では自民党系議員が「抑止力はあったほうがいい」と発言するなど、全体として「賛成」派に傾いた内容であった。
また、金沢市議会の放送では、坂本康広・議員(自民党、自衛隊出身)に密着取材。集会での「日本を取りまく環境は変化、抑止力で守るしかない」という発言まで流した。
(3)以下、NHKとのやりとり。
(a)永野厚男・教育ライター → NHK(電話)
Q:偏った放送では?
A:全体で慎重・賛成の大きく2つの考え方に分けて報じることにした。反対派は現地取材していない。【男性・「遊軍プロジェクト」責任者】
(b)「週刊金曜日」編集部 → NHK
Q1:偏った放送では?
A2:国論が二分されていることを踏まえ、テレビの放送では、否定的立場の滑川町議会と肯定的立場の金沢市議会を取り上げ、(中略)伝えました。【広報局(文書回答)】
Q1:追加質問(電話)
A2:滑川町議会を取り上げたことが否定的立場を紹介したこと(苦しい説明)。【臼井正徳・担当】
(4)放送法は、第4条で、番組編集について「政治的に公平であること」などを義務づけている。
「反対」議会数181は、意見書合計246の約73.6%にもなる。
にもかかわらず、「反対」議会を一切報じないのは、自民党のメディアへの圧力が問題になっているなか、NHKの「政治的中立性」に大きな疑問を抱かせる作為だ。
□永野厚男(教育ライター)「NHK、「反対」議会報道せず 安保法案への地方議会意見書の7割強占めるが」(「週刊金曜日」2015年7月10日号)
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