語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】岩田宏「ささやかな訪問」

2015年07月21日 | 詩歌
 ありふれた電車があり
 ありふれたバスがあり
 見知らぬ町筋がある
 ありふれた八百屋があり
 気のふれた犬が走り
 ありふれたカリフラワーがある
 見知らぬ門があり だしぬけに
 四年ぶりの友だちがいる 敷居の外には
 七百人の敵がいる

 意味ありげに 気味悪げに
 ぼくらは互いの顔を見つめた
 友だちは秘密の戸棚から
 つぎつぎと出してみせた
 ぬるい茶を ふるい茶柱を
 つめたいつまらない菓子を
 青い一升瓶を 赤いアルバムを
 産み月の奥さんを たくさんのホオズキを
 七千もある自分の癖を

 実をいえば ぼくらはかつて
 匿名の革命をやるつもりだった
 実をいえば 革命はとうの昔に
 ぼくらを見棄てた筈だ してみれば
 ほかにどんな話題があるだろう
 女を語るか? 酒を? 魚を?
 ブルガリアを? サビシガリアを?
 遠くの海を? 近くの埋立地を?
 七億もいるぼくらの仲間を?

 さよなら さよなら さよなら
 また四五年は逢えないだろうな。

□岩田宏「ささやかな訪問」(『頭脳の戦争』(思潮社、1962)所収)
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 【参考】
【読書余滴】すべてをルフランに変える青春の無知


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【堤未果】【ギリシャ】緊縮財政なのに軍事予算を削減できない理由

2015年07月21日 | 社会
 (1)2015年6月30日、ギリシャはIMFへの返済ができず、事実上の債務不履行に陥った。
 7月5日、緊縮策(EUからの要望)の賛否を問う国民投票が実施された。
 ここまで財政赤字が膨れ上がった原因は、高すぎる年金、公務員優遇だ・・・・などと報道されているが、もう一つの重要な要因には、なぜか報道されていないし、日本人には余り知られていない。
 債務の半分以上を占めるのは防衛予算だ、という事実だ。

 (2)NATO同盟国28ヶ国の中で、予算に占める軍事支出比率は、
   1位 米国
   2位 ギリシャ
なのだ。金融危機から5年経った2015年においても、前年(財政赤字がGDPの175%だった)よりも軍事費を1%増やし、EU最大規模(GDP比2.4%)を維持し続けている。

 (3)(2)の問題について、サノス・ドコス欧州外交政策財団所長はガーディアン紙のインタビューで次のように答えている。
 「1,300両(イギリスの2倍以上の数)の戦車がほんとうに必要なのかどうかは議論が分かれるところだろう。だが、トルコの軍事的脅威に対してバランスをとるためにはやむを得ない措置なのだ」

 (4)トルコの脅威? 本当にそれだけなのか?
 奇妙なことに、危機に陥ってからこの方、IMF、EU、欧州中央銀行から提示された緊縮財政メニューの中に、軍事費削減は載っていない。
 ギリシャへの財政支援条件として最も強く緊縮財政を要求していたドイツ(最大債権国)も、ギリシャに軍事費を半減させ、ドイツと同じGDP1%台に抑えることでIMFへの当座の支払いをさせる、という現実的な要求は決してやってない。
 代わりにメルケル首相は、救済金の大半を国内経済の立て直しではなく、軍事支出に振り分けるようギリシャ政府に圧力をかけている。
 メルケル首相には、そうするだけの理由があったのだ。ドイツは武器輸入大国ギリシャから、米国に次いで最も恩恵を受けている国の一つだからだ。
 ちなみに、ギリシャへの武器輸出国ベスト・スリーは、そして2010年から2014年までの5年間にギリシャ政府が購入した武器の価格は、
   1位 米国
   2位 ドイツ・・・・5億5,100万ドル分
   3位 フランス・・・・1億3,600万ドル分

 (5)2012年に金融支援の条件としてギリシャ政府が課せられた
   ・20%もの最低賃金引き下げ
   ・公務員の給与凍結
はいったい何のためだったのか?
 IMFに言われるがままに、
   ・障害者の自己負担を高騰させ
   ・医師数を大幅に減らし、
   ・病院を閉鎖させ、
国家にとって最大の財産であるはずの国民を公衆衛生上の危機に陥れた対価は、さらなる財政赤字となってギリシャ政府にのしかかった。

 (6)次々に暴露される腐敗劇に、ギリシャ国民の怒りは爆発寸前だ。
   ・2010年、メルケル首相&サルコジ大統領が、借入金が入る前に武器輸入契約の維持をギリシャ政府に約束させた。
   ・2013年、ドイツの防衛産業からの収賄が暴露され、ギリシャの元防衛大臣ほか政府高官らが逮捕された。

 (7)ギリシャでは、100万人の失業者、ホームレス人口の急増、若者の2人に1人が職を失い、20万人もの国民が国外へ逃げ、貧困層の間では感染症が拡大している。 
 欧米の商業マスコミは公務員天国の自堕落なギリシャ像を描くが、彼らと縁のないところで、笑いのとまらない勝ち組が笑っているのだ。

□堤未果「緊縮財政のギリシャで軍事予算だけは削られない理由 ~ジャーナリストの目 第260回~」(「週刊現代」2015年7月25日・8月1日合併号)
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 【参考】
【堤未果】地方の介護現場を完全に無視 ~高齢者の「移住」提言~
【堤未果】本当に患者のためか疑問 ~国民健康保険法の改正~
【堤未果】サービス残業は絶対なくならない ~残業代ゼロ法案~
【堤未果】医師不足に拍車をかける国家戦略特区
【堤未果】「イスラム国」掃討と膨れあがる米の軍事費 ~いつか来た道~
【堤未果】格差大国アメリカの後を追う日本 ~金融緩和と年金改革~
【堤未果】米国社会の変質 ~ミズーリ州の武装警察~
【米国】国民皆保険という美名の裏で大増税開始 ~オバマケア~
【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に
【堤未果】「水道の民営化」が招く社会インフラ大崩壊 ~価格高騰に水質低下~
【堤未果】「社会保障のための増税」のウソ ~来るべき医療崩壊~
【堤未果】世界が危惧する日本のジャーナリズム ~「監視大国」米国以下~
【堤未果】アベノミクスと米国経済の危うい共通点
国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に」
【政治】国家戦略特区法の危険性
【米国】と日本における民営化の悲惨 ~株式会社化する国家~  

 
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