(1)サウジアラビアの最高裁は、6月7日、ウェブサイト「フリー・サウジ・リベラルズ」(既に閉鎖)を立ち上げた同国在住のブロガー、ラーイフ・バダウィー(31歳)に対し、禁錮10年、鞭打ち1,000回、罰金100万リヤル(3,300万円)の判決を下した。
ラーイフ・Bは、サイト上で人権問題、世俗主義について問題提起。国内の宗教指導者、宗教系大学、宗教警察などを批判。「イスラムへの冒涜」「背教者」として罪状を言い渡された。
ラーイフ・Bは、2012年6月の逮捕以降、収監されていて、今年1月には鞭打ちの刑の一部が執行され、かつ、民衆に公開された。
(2)国際人権団体や一部西洋諸国は、ラーイフ・Bの逮捕を「表現の自由」の侵害だと批判し、ラーイフ・Bの釈放ないし減刑を訴えている。しかし、サウジアラビア国内で同人を擁護する声は目立たない。
さらに政府は、その訴えを索制するかのように、今年3月の閣僚議会で、内政不干渉の原則と、イスラム法に基づく人権の促進について確認している。
(3)SNSの国籍別アカウント数で、サウジアラビアは世界でも上位と言われ、ネット上で活発な意見交換が許されているかのように見える。
しかし、同国は宗教法の厳格な適用を含めて、イスラム社会の形成を建国理念として興った国で、イスラム世界の盟主を自認している。こうした背景に立ち、一般の犯罪や不敬罪であれば恩赦の対象とはなっても、「イスラムへの冒?」は最大級の国家反逆を意味する。よって、ラーイフ・Bの釈放ないし減刑は困難である、とされる。
(4)また、ラーイフ・Bが「背教者」とされた点も、彼の無罪放免を困難にする。
国際人権団体や一部西洋諸国は、ラーイフ・Bを「リベラル」な自分たち側の人間と見るかもしれないが、サウジアラビアにとって彼は、自国民、イスラム教徒だ。つまり、彼は単なる「不信仰者」ではなく、イスラムに背いた身内となる。
国際社会がラーイフ・Bの擁護を叫べば叫ぶほど、サウジアラビアは身内の処遇を他人の物差しで決定する道理はない、との考えを強める恐れすらある。
□高尾賢一郎(上智大学アジア文化研究所客員教授)「ブロガー鞭打ちの意味」(「週刊金曜日」2015年6月26日号)
↓クリック、プリーズ。↓
ラーイフ・Bは、サイト上で人権問題、世俗主義について問題提起。国内の宗教指導者、宗教系大学、宗教警察などを批判。「イスラムへの冒涜」「背教者」として罪状を言い渡された。
ラーイフ・Bは、2012年6月の逮捕以降、収監されていて、今年1月には鞭打ちの刑の一部が執行され、かつ、民衆に公開された。
(2)国際人権団体や一部西洋諸国は、ラーイフ・Bの逮捕を「表現の自由」の侵害だと批判し、ラーイフ・Bの釈放ないし減刑を訴えている。しかし、サウジアラビア国内で同人を擁護する声は目立たない。
さらに政府は、その訴えを索制するかのように、今年3月の閣僚議会で、内政不干渉の原則と、イスラム法に基づく人権の促進について確認している。
(3)SNSの国籍別アカウント数で、サウジアラビアは世界でも上位と言われ、ネット上で活発な意見交換が許されているかのように見える。
しかし、同国は宗教法の厳格な適用を含めて、イスラム社会の形成を建国理念として興った国で、イスラム世界の盟主を自認している。こうした背景に立ち、一般の犯罪や不敬罪であれば恩赦の対象とはなっても、「イスラムへの冒?」は最大級の国家反逆を意味する。よって、ラーイフ・Bの釈放ないし減刑は困難である、とされる。
(4)また、ラーイフ・Bが「背教者」とされた点も、彼の無罪放免を困難にする。
国際人権団体や一部西洋諸国は、ラーイフ・Bを「リベラル」な自分たち側の人間と見るかもしれないが、サウジアラビアにとって彼は、自国民、イスラム教徒だ。つまり、彼は単なる「不信仰者」ではなく、イスラムに背いた身内となる。
国際社会がラーイフ・Bの擁護を叫べば叫ぶほど、サウジアラビアは身内の処遇を他人の物差しで決定する道理はない、との考えを強める恐れすらある。
□高尾賢一郎(上智大学アジア文化研究所客員教授)「ブロガー鞭打ちの意味」(「週刊金曜日」2015年6月26日号)
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