第 一 章 眠 れ ぬ B 女
美女? B女?
『眠れぬ森のB女』。なんで、こんな題名なのよ?
ある日、アタシは愛用のマホウの鏡に向かって、
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰? 割られたくなかったら、よぉ~く気を付けてお返事なさいね」と、優しく尋ねたのです。
「それは白雪姫みたいに、ごっつうキレイなアンさんでんがな。天上天下ユーアー独走(天井天下唯我独尊)」
「おもしろいダジャレだこと。座布団を一枚」
座布団が十枚たまると、鏡の願いを叶えてあげる約束なのです。だから懸命にアタシを楽しませようとします。
「毎度おおきに。ついでに七輪の恋人(七人の小人)はどうや? 熱く燃えまっせ」
「あれはね、ナナニンのコビトと読むのよ。座布団没収」
鏡はアタシから離れるのが夢らしいので、簡単に座布団は与えません。離れたがる相手は離したくないものよ。まだまだ鏡も心の機微が解ってないわね。
ともかく、こういう経過から『眠れる森の美女』みたいな題名にしてと言ったのに。ダンナはアタシの言うことをちゃんと聞いてないんだから。貴女も注意しなさい。世のダンナ族は、うわのそらで「ウンウン」なんて返事をするドーブツなのよ。
『眠れぬ』は、いいわよ。アタシは深遠な真理に思いを寄せて、眠れぬ夜がたくさんあるの。ダンナは昼寝が過ぎるからだって言うけど、食べてすぐ動くのは美容によくないわ。いつまでも美しくいたいオンナゴコロが解らないのかしらね。
『森の』も、いいわよ。アタシの住んでいる所は、前に山、横に山、後ろに山だし、山には木がいっぱいだから字にかけば森になるわね。結構気に入っているわ。澄んだ空気と清らかな川。純緑に囲まれ変化する自然は、アタシの美しさと対応して違和感がないの。
どんなモノでも包み込むフトコロの深さが自然というものだ、というお師匠様の言葉を思い出しますわ。最初は自然に学び、やがて己の自然に気づき、ついには自然に融けていくものだ。その融(解)け方、解放の仕方が個性というものだ、とおっしゃっていましたが、アタシの個性はまだツボミですわ。
えっ、じゅうぶん個性的? 恥ずかしいわ、そんなに褒めないで。
(褒められていると受け取る自信がコワイし恥ずかしい)
美女、ビジョって言ったのに何で『B女』になるのよ。美人でも美嬢でも美婦人でも許してあげたのに。自分の妻を褒めるのはテレるものだと解るけど、B女はないんじゃない。だいいち何の略かしらね。
これで今夜も眠れないわ。
(といいながら、妻はぐっすり寝ています。いまのうちにB女の訳をこっそりバラしましょう。私はウソを書くことには抵抗がありませんが、詐欺はいけないと思っています。本人が何と言おうと、私の良心は美女と記すのを許可しません。
正解はBESTの略です。わるくないでしょう。世界中の評価がどうであろうとも、パートナーであるかぎり、私にとってはBESTな女です。これはどんな夫婦にも当てはまるのです。例え憎しみあっていても、BESTな相手なのです。
決して、BUT〇女とかBAK〇女の略だと誤解しないで下さい。ジョークとしても書く勇気がありませんし、シャレにならない可能性があります。自分のパートナーの悪口は天に向かってツバを吐くようなものです)
(本館は 「氣の空間・氣功療法院」