「眠れぬ森のB女・8」
夜のB女?
アタシが夜、眠れないのは知っているわよね。でも、不眠症じゃないわ。ドラキュラでもないわよ。夜は魔の時間なの。前にも言ったけれど、魔も真も間も変わりゃしないわ。愛の変形よ。変体よ。変態よ。この文章など、変大よ。
夜っていうのは、昼よりも見えない力が濃く感じられるのよ。けっして昼よりも邪悪なわけではないわ。夜のほうがホントの姿を観る機会が多いのよ。
いいえ、ホントもウソもないのだけれど、隠れているモノや抑えていたモノが現れやすいの。
邪悪なモノが本当に存在するか、という議論は後回しにして、邪悪っぽいモノは昼間は隠れてしまうの。何故って、昼は浄化力が強いのよ。邪悪っぽいモノの一部は溶(解)けてしまうのも事実よ。
でも、自分で邪悪だと決めつけている感情が一番大きいかしらね。これは心の底に抑えてしまって、昼間はなかなか出てこないわ。
実はこの底にあるモノが大切なのよ。大切な気づきを教えてくれるのよ。まあ心に限らず、ほとんどの事は、底のほうがおもしろいものよ。
心は基本的に曖昧なんだけれど、理性で操れる部分はまったく信用できないの。つまり、マジメな人は信用できないってことよ。本人も気づいていないんだから、コマッタちゃんなの。といって、デタラメな人は初めから論外よ。
ホントの理性は無理強いをしないものよ。人間には未だ操れる段階じゃないわ。だから理性ではなくて我性なのよ。我性の強い弱いはあるけれど、強いのはホメられたものではないわ。我も我慢も同じなのよ。人間社会では我慢を理性的なんて褒めるけれど、都合がいいからよ、誰かさんにとっては。
人間としては「いいかげん」が最適かな。この件に関しては、ダンナと同じ認識だわ。実際に魔女として夜に人間を観ると、「いいかげん」な人は黒い固まりが出てこないわ。抑えたモノもあるのだけれど、固まりになる前に動かしてしまうみたい。自分で抑えたくせに、抑え続ける根性が無いみたい。ホントにいいかげんなんだから。
ところで夜の力は複雑よ。成長や再生も夜の分野よ。変化も夜に起こるのよ。昼は体験をして、夜に消化、吸収、変換が行われるのよ。でも、これらは我性が休んでいるから出来ることなのよ。だから人間にとっては夜は眠るのが自然なの。
我性を休ませるって、とても大切なのよ。我性が続くと破滅するだけなのよ。
アタシは昼間、トド妻の真似をしているけれど、夜に魅力が全開する魔女よ。ダンナは眠っているから、いまだにアタシの魅力を知らないんだわ。魅力は隠している間が華よ。だから世のオトコたちはパートナーの魅力を知らない。でも、知らせれば魅力で無くなるから、ちょっとムナシイわねえ。
そういえば猫たちも同じようなことをしているわね。昼間は眠って、夜になると秘密の行動をしているわよ。気まぐれだし、魅力はあるし。魔力も使えるけれど、役に立てないのも似ているわね。
これも力の正しい扱い方よね。自分たちのためだけに力を役立たせるなんて、地球さんからみればメイワクだわ。
使わないことを学ぶために授かった力もあるのよ。イイオンナはナンでもカンでも見せびらかさないものよ。
そんなわけで、特に何もしないけれど、今夜も眠れないわ。
「鏡よ鏡。お前にとって夜とは何?」
「ライバルでんがな。夜は己を映す鏡なんや」
「じゃあ鏡なんていらないわね」
「そのとおりや。今すぐクビにしてや」
「ご希望にそえないわ。アタシは役立たたずを集めるのが趣味なのよ」
(本館は 「氣の空間・氣功療法院」