「眠れぬ森のB女・7」
お師匠様って?
アタシにはお師匠様がいます。アタシだけではなくて、貴方にもいるはずですわ。お師匠様に気づくか気づかないかの違いはありますけれど、どんな人にもお師匠様はいらっしゃいます。そして、必ず貴方と接触しているはずですわ。
気づきにくいのは、お師匠様のイメージが固定化されているからよ。イメージは自分の中にあるアコガレが顕すものなのよ。
地位や名誉や有名な人を求めたり、その逆に仙人のような人を求めたりするわね。みんな貴方自身の願望よ。
何かの達人や特殊能力人にアコガレたり、父性の強い鬼コーチタイプにアコガレる人も多いわね。そういうお師匠様もわるくないけれど、貴方に必要なお師匠様はもっと身近にいることが多いものよ。
年上とは限らないわよ。身内の可能性もあるのよ。夫や妻かもしれなくてよ。子供がお師匠様の場合があるのよ。しかも多いの。部下や従業員かもしれないのよ。こうなると簡単にイバれないわよ。大切なことを指導してくれるのは、人間だけじゃないこともあるし。
お師匠様を意識しだすと、けっこう謙虚になるものよ。とくにアタシのように図に乗るタイプには有り難い存在だわ。
えっ、ちっとも謙虚に見えない?
や~ね~。細かいことを気にするものじゃないわ。もっと大きな人になってよね。
幸いにして、アタシは納得できるお師匠様に巡り会えたわ。巡り会えてわかったけれど、求めたものは必ず用意されているわ。
いいえ、求めたものより一歩先のものが用意されているわ。それを示してくださるのがお師匠様。
そんなわけで、時々エラソウなことを言うのはお師匠様の影響よ。アタシの言葉じゃなくて、受け売りなんだから本気にしてね。異論やモンクがあったらお師匠様にどうぞ。アタシは言ったそばから忘れちゃうから。
不出来で無責任な弟子を持つと、お師匠様も苦労するわねえ。まあ、しょうがないわよ。アタシが苦労するわけじゃないし。
苦労をするためにこの世に来たのではなく、苦労を超えるためにこの世に来た、とおっしゃったのはお師匠様自身なんだし。
そういえばダンナにもお師匠様がいるみたいよ。しかも二人も。でも、どんなにお師匠様が素晴らしい人で幾人いても、学ぶのは本人次第よね。ダンナをみてると、つくづくそう思うわ。だからダンナは先生でもあるのよね。反面教師だけれど。
この世界には自分以外に、お師匠様が必ずいらっしゃって、残りのスベテは先生なのね。そして、一番出来が悪いのが自分なのかもしれないわ。
あら、今日のアタシはずいぶん謙虚だわ。美しさに謙虚を兼ね備えたら完璧ね。どうしよう。自分がステキすぎて怖いわ。これでは今夜も眠れそうもない。
「鏡よ鏡。この世で一番のお師匠様は誰?」
「鏡に映る自分自身が最高のお師匠はんや」
「冴えているわねえ」
「そう思ったら、たまには心と一緒に鏡も磨いてや」
「その一言が座布団をフイにするのよ」
(本館は 「氣の空間・氣功療法院」