とだ*やすこの「いまここ@島本」

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大阪府島本町議会議員
とだ*やすこの活動報告

静岡県長泉町研修の報告

2011年02月08日 | とだ*やすこの町政報告
1月18日~19日、総務文教委員会の調査研修(年間ひとり6万円の予算)で、静岡県長泉町・熱海市に行って参りました。その成果をここに報告させていただきます。長文です。

静岡県長泉町:住民の視点にたったまちづくりについて
(行政経営改革、組織・機構の見直し)

■考察
かつて昭和時代の高度成長期には、企業が自ら社宅を用意し、保養施設やレジャー施設をも建設。従業員とその家族の福祉に供することができる財政的余裕と瞬発力が日本企業にあり、立地を決めた土地で企業城下町を形成していました。社会の変容とともに企業の立地条件も変化しており、施策の魅力で従業員家族=「人」を呼ぶことができなければ、誘致は実現しないことが今回の研修で理解できました。

「量から質への転換」「開発よりも維持管理」への転換時期を見誤った自治体は、近い将来、行政負担の重さに苦悩することになる可能性を秘めているとわたしは考えます。

大型公共工事が、その借金はやがて償還できても建物の維持管理補修費が自治体に重くのしかかるように、人口増加により多少の固定資産税増収を実現しても、「質」と「多様性」が求められる行政サービスの膨らみによる行政コストを吸収できないのではないかと、懸念します。

人口、世帯数の全国的減少により、需要と供給のバランスが逆転するなかで、土地家屋価格の適正な下降減少が起こるのは必然的と考えます。高額であった土地付一戸建ての家が、人生一度目の住宅取得で既に入手しやすくなる一方、過去には期待できた土地の急激な価格上昇やマンション価値向上は実質的に起こりにくく、土地家屋を資産と考えるわが国の文化歴史的価値観に、今後一定の変化が起こるとも考えられます。

人口の減少を抑制し、より適正な規模の自治体運営をめざして、既存住宅ストックの活用などに重点をおき、21世紀的豊かさの象徴であった「量」から「質」へ、「小さいことの美しさを享受できる」町へと、総合的、戦略的な方針を示していかなければなりません。

長泉町は積極的な企業誘致を戦略とし、どのよう企業を誘致するのか、その方向性を明確にしておられます。長泉町の強みは、今後の人口減少が唯一起こらないであろう首都圏に近いことであり、大阪府内に位置するベッドタウンである当町とは若干条件が異なる点は見落としてはならないと思います。

さて、島本町が企業の誘致を実現したいのであれば、めざす企業誘致の計画(案)を描き、住民に期待できる効果を示したうえで推進条件を整えれば、充分に可能性が生まれてくると考えます。

対象となる土地、誘致の条件を定め、誘致したい企業あるいは研究所に相応しいプレゼンテーション能力を高める必要があります。そもそもどこに誘致するのか、それは公共施設の総合的な計画案のなかに位置づけられるべきものと考えます。

比較的まとまった町有地があり、大阪・京都間の位置し、有効な鉄道アクセスが強みの島本町にとって、企業誘致は重要な課題のひとつと考えています。


■企業誘致について
長泉町内には、長泉工業団地、藤長泉工業団地、長泉一色工業団地、ファルマバレー長泉工業団地と、複数の工業団地があります。ファルマバレーについては、静岡県が進めるプロジェクト(富士山麓最先端健康産業集積プロジェクト)に基づく事業として、県立がんセンター周辺地区に健康・医療関連企業等を誘致するため、県企業局が事業主体となって造成を進めたものです(開発面積2.7ヘクタール)。

2007年(平成19年)4月から「ライフサイエンス分野事業」の新拠点として民間事業者が業務を開始。がん治療最先端技術を誇る「県立がんセンター」を中核とした先端健康産業の集積をめざす「ファルマバレープロジェクト」と連動、相互に発展が期待できる医療・健康関連企業の誘致を進めておられます。

ファルマバレー効果の一例として、土地価格の上昇とともに、医療機関の充実等をあげられました。地域診療と総合病院を結ぶ地域連携医療の充実につながっているとの分析です。また、オリンパス㈱三島事業場(血液自動分析装置・人工骨)をはじめ、血液の分析を行う企業などの誘致を実現されています。

特筆すべきは、造成して誘致するのではなく、町で埋蔵文化財試掘調査を行い、下水道・電気設備などのインフラ整備を準備したうえで、企業の希望に沿うかたちで造成を行う「オーダーメード方式」を採用されていることです。

具体的誘致活動として、自ら頻繁に東京へ出向き都内各企業を訪問(県職員同行)、企業誘致を目的としたプレゼンテーションをされています。パワーポイントを使用した実際のプレゼンテーションを拝見しました。

誘致条件のみならず、町の概要、特産品の紹介、自然、文化、祭、イベントなどを紹介し、従業員が移り住むに魅力ある環境のPRが印象的でした。既に数十社への説明を重ねておられ、懇親会においての「交流」「意見交換」を重視し、人脈を広げる努力をされています。また、県と協力して、静岡県の東京事務所を通して常に情報収集されているとのことでした。

周辺住民への対応、配慮としては、利便性のある施設誘致、雇用の拡大、バス停の設置などをあげておられました。環境的な配慮に関して特に説明を受けませんでしたが、例えば医療研究分野の誘致では、周辺住環境にさまざまな負の影響が起こる可能性を否定できず、企業誘致には充分以上に慎重であることが必要と思われます。

企業立地優遇制度に関しては、静岡県との連携で、一定の条件を満たせば最大1億円の補助、ならびに5億円の設備投資補助などを行っておられるとのこと(筆記メモによるので正確さは不明)。都市基盤整理を積極的に進めると同時に、子どもの教育環境の充実に力を注ぎ、特に子育て支援についての重要性を十分に認識されていました。

都市部からの転入を考えるとき、子女の学力低下懸念がないよう配慮し、教育環境を整備することは非常に重要な要素であるとおっしゃいました。従業員とその家族の住環境・教育環境を整えることが企業誘致の鍵となることが理解できました。また、土地の安さだけでは誘致できない、むしろ地価が上がることが転入の動機になる時代であると言われたのが印象的でした。

■「長泉町行政経営改革プラン」について
長泉町が推進されている行政サービスの「質の転換」に重点を置いた改革推進とは、人口の減少をみすえた「量の削減」を意味し、住民の定住満足度を高めるための「質の向上」ほかなりません。はっきりとそのように言葉にされました。

また「福祉分野の削減という発想は湧いてこない」と表現されました。その理由として、まず財政力が豊かであること(経常収支比率70.0%)、さらに企業誘致の条件として福祉が需要であること。そもそも「福祉」は施策の内容が複雑で、削減するにあたって判断できかねる点が多々あります。

誘致の際、企業側から「○○の医療補助はあるか?」というような質問があり、企業が従業員とその家族の住環境の充実に配慮して立地を検討していると実感されています。企業は誘致にあたり、自治体における住民福祉の充実度をチェックするということでした。

見直されたものとして、戦没者追悼・平和祈念事業、敬老会事業などがあります。戦没者追悼から平和記念事業へと「世代交代」「次世代への語り継ぎ」をはかり、中学生を「ヒロシマ」に派遣(修学旅行かどうかは未確認)、その発表を式典のなかに組み入れ、追悼から次世代への継承へと新たな連携事業に発展させておられました。

敬老会事業は、座布団の配布を緑茶セットにし、お菓子を廃止することで約700万円の削減。一方で、窓口業務のワンストップサービス(平成12年実施・各種証明発行と旅券交付などがひとつの窓口で可能)を平成18年に時間延長されました(時間・場所等詳細は未確認)。

所期の目的を達した団体等への補助金を廃止するにあたっては、行政評価を導入(職員の手づくり・実行委員会方式)。役割を明確にして費用対効果を検証するという方法で実現されています。財政豊かな長泉町ですが、各種団体への補助金については、補助要綱が設定されていない団体には支給しない、地域のしがらみはすべて廃止、類似団体の統合、受益者負担の考え方の導入など、指標を示して積極的に取り組まれていました。

職員で作った行政評価システムは、4年で壁につきあたり(スクラップ&ビルドのビルドばかり)、予算投入して外部の目を入れたとのこと。参考にしたいと思います。

■人口増加と税収入について
平成20年のリーマンショック以降、法人税収は減少しているものの、大きな税収減は回避できているとのことです。ひとつの業種に特化しない(医薬・フィルム・食料・倉庫業と多様)という、町制施行50周年の歴史の中で先人の経験により培われた知恵が生きていると言及されました。

人口増加率が高く(平成19年4月4万人突破)、地域活力が向上していると思われる長泉町ですが、生産人口の導入に不可欠の「子育て支援策」を充実されているとのことです。「障害の疑いのある子どもや未就学児への加配」「子ども育成課の臨時職員の増員」などです。

長泉町の周辺自治体には一部上場企業が多く、基本的には町内居住者は就職の機会に恵まれているとのことです。昼夜間の人口流出、流入はどちらも約2万人。生産人口の転入は、印象的には近隣から、要因としては企業誘致の結果、あるいは大手企業の本社移転に伴う借り上げ社宅の発生などがあるようです。

以上。日々多くの情報に埋もれ、記憶も埋没してしまう恐れがあり、まとめることよりも書き留めておくことに重点をおいたレポートです(内容の散漫さの言い訳です)。

余談ですが、帰路、委員会における調査研修として多角的に活用できるよう委員はすべての報告書を共有してはどうかと提案しました。すかさず「議員個人の問題!」「それぞれ意見は違う」「経費削減!!!(紙?)」というような理由で、自民党の委員より非常に強い抵抗があり、公明・民主が追随。そのあまりの必死さに苦笑しました。

昨日は、三重県・伊賀市に「議会改革」「議会基本条例」をテーマにした研修。今日は役場庁舎にて、膨大な量の平成23年度当初予算の予算要求書明細に目を通しました。情報公開請求により閲覧したものです。

少なくとも、わたしとわたしが所属する会派の議員は、自ら調べて質問しないことには得られない情報だけを頼りに本会議、委員会に臨んでいます。わたしが知る限りにおいて、これは非常に恥ずかしい島本町の文化のひとつであり、議会の質疑が長引く要因のひとつです。

そのことを改善できないでいる議会そのものが、わたしにとって最大のストレスですが(改革の本丸は議会と考えています)、エネルギーの使い方に気をつけないと本筋を見誤ったまま、自分が壊れてしまいます。

オール島本でものごとを考えられる住民のみなさんの関心を支えに、本当に公助を必要とする人の立場、視点を忘れずに働きます。年間最大の山場を迎える3月議会に集中しなければなりません!

画像は、椎神社の節分祭(2月3日)
例年になく暖かいお祭りの夜でした
暦の上ではもう立春を過ぎました



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