曰エツは、口から言葉を発する意。会意以外に音符になることなく、部首の曰部(いわく・ひらび)となるが、部首や漢字の一部となるとき、ほとんど日の形となる(なお、皆・習の下部の白も、曰の変化形とする説もあり、私も便宜的にその説を採用しているが確証はない)。
曰は音符がないので、本稿では曰が部首となっている字、および曰が含まれて会意になっている音符を紹介させていただく。
曰 エツ・オチ・いう・いわく・のたまわく 曰部
解字 甲骨文・金文は、口(くち)の上に指示記号の短い横線を加えて、口が動いて言葉を発することを表す文字。意味は口を開いて動かし言葉を発すること。篆文は、口の上の横線が上に曲がった形となり、現代字は、口の中に短い横線が入ったかたち。日と紛らわしいが、曰は真ん中の線が右につかない。曰は部首の曰部となる。音符にはならない。
なお、曹ソウの字では、甲骨文が口、金文が口の中に短い横線、篆文で口の上の横線が曲がる形の変化も見られる。
意味 (1)いう(曰う)。ものをいう。 (2)いわく(曰く)。いうことには。「曰く言い難し」(言葉で言い表すのは難しい) (3)のたまわく(曰わく)。おっしゃるには。 (4)[国]いわれ。わけ。
曰を含む音符(会意)
曹 ソウ・ゾウ・ともがら 曰部
解字 甲骨文字は、「東(荷物を入れた袋)+東(荷物を入れた袋)+口(くち)」の形。東東は荷物二つで荷物を運ぶ二人を表す。そこに口がついて、荷物を運ぶ人が互いに話をしている形で、ともがら・なかまの意。金文は口⇒甘になり、篆文は曰(いう)になったが意味は話す意で変わらず、同じ職業のなかまの意。後に裁判用語として使われたため、司法関係の役所やひろく役人の意味となった。楷書から簡略化され、曹となった。東が荷物を入れた袋であることについては、音符「東トウ」 を参照。
意味 (1)なかま。ともがら(曹)。 (2)つかさ。裁判官。役人。「法曹ホウソウ」(法律家) (3)軍隊などの階級の一つ。「軍曹グンソウ」 (4)「曹司ゾウシ」とは、官吏や女官の部屋の意。「御曹司オンゾウシ」(堂上家の部屋住みの子息。名門の子弟)
曹を音符とする字 (音符「曹ソウ」 を参照) ソウ:曹・遭・漕・艚・槽・糟
朁 サン・セン 曰部
解字 篆文は「曰(いう)+兟シン(髪挿し)」の会意形声。曰(いう)に先がするどい髪挿しを加えて、言う行為をゆがめること。つまり、そしる・中傷する意となる。しかし、本来の意味でなく、仮借カシャ(当て字)されて、かつて・すなわちの意となる。現代字は曰⇒日に変化。
意味 かつて。すなわち。
朁を音符とする字 (音符「朁サン」 を参照)
サン:朁・蚕 シン:譖・簪 セン:潜・僭
曷 カツ・なんぞ・いずくんぞ 曰部
解字 「曰エツ(いう)+匃カツ(もとめる)」の会意。匃カツは死者をだいて、そのよみがえりをねがう形。曰エツは、いう意。両者を合わせた曷は、よみがえりの願いを大きな声で言う形で、「請い願う」意味となる。しかし、本来の意味でなく、「なんぞ」「いずくんぞ」の助字に仮借カシャ(当て字)された。新字体の音符になるとき、下部が、匃⇒匂に変化する。
意味 (1)なんぞ(曷ぞ)。いずくんぞ。 (2)いつか。
曷を音符とする字 (音符「曷カツ」を参照)
カツ:曷・渇・葛・褐・喝 ケイ:掲 エツ:謁 アイ:靄・藹
替 タイ・かえる・かわる 曰部
解字 金文は、二人の立った人の形で、二人が話をしているさまと思われる。篆文は「立立+曰(言う)」の会意。立った二人の人が会話をしている形。二人が引き継ぎをして役割を交替するさまから「かわる」意味をもつ。交替が済んだ方は役割からはずれるので、おとろえる意となる。現代字は、篆文の立立⇒夫夫(おとこ)に、曰⇒日に変化した替になった。立った人から夫(おとこ)に変わっただけで意味は同じである。
意味 (1)かわる(替わる)。かえる(替える)。「交替コウタイ」「両替リョウがえ」「為替かわせ」(とりかわす。ひきかえ。交換) (2)[国]かえ。身代わり。「替え玉かえだま」 (3)すたれる。おとろえる。「隆替リュウタイ」(盛んになることと衰えること)
替を音符とする字 なし
沓 トウ・くつ 水部
解字 「水(みず)+曰(いう)」の会意。水は流れる水の意。曰エツは言うの意。水の流れるようにすらすら言うこと[大修館漢語新辞典]。現代字は、曰エツ⇒日に変化した。日本では鞜トウ(かわぐつ)に当て、沓を、くつの意で使う。
意味 (1)すらすらと言う。流暢にしゃべる。「沓沓トウトウ」(得意になってしゃべるさま) (2)あふれる。水があふれる。 (3)あう(合う)。まじりあう。かさなる。多い。「雑沓ザットウ=雑踏」(ひとごみ) (4)[国]くつ(沓)。「沓石くついし」(柱をささえる土台石)
沓を音符とする字 (音符「沓トウ」 を参照) トウ:沓・誻・踏・鞜
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
曰は音符がないので、本稿では曰が部首となっている字、および曰が含まれて会意になっている音符を紹介させていただく。
曰 エツ・オチ・いう・いわく・のたまわく 曰部
解字 甲骨文・金文は、口(くち)の上に指示記号の短い横線を加えて、口が動いて言葉を発することを表す文字。意味は口を開いて動かし言葉を発すること。篆文は、口の上の横線が上に曲がった形となり、現代字は、口の中に短い横線が入ったかたち。日と紛らわしいが、曰は真ん中の線が右につかない。曰は部首の曰部となる。音符にはならない。
なお、曹ソウの字では、甲骨文が口、金文が口の中に短い横線、篆文で口の上の横線が曲がる形の変化も見られる。
意味 (1)いう(曰う)。ものをいう。 (2)いわく(曰く)。いうことには。「曰く言い難し」(言葉で言い表すのは難しい) (3)のたまわく(曰わく)。おっしゃるには。 (4)[国]いわれ。わけ。
曰を含む音符(会意)
曹 ソウ・ゾウ・ともがら 曰部
解字 甲骨文字は、「東(荷物を入れた袋)+東(荷物を入れた袋)+口(くち)」の形。東東は荷物二つで荷物を運ぶ二人を表す。そこに口がついて、荷物を運ぶ人が互いに話をしている形で、ともがら・なかまの意。金文は口⇒甘になり、篆文は曰(いう)になったが意味は話す意で変わらず、同じ職業のなかまの意。後に裁判用語として使われたため、司法関係の役所やひろく役人の意味となった。楷書から簡略化され、曹となった。東が荷物を入れた袋であることについては、音符「東トウ」 を参照。
意味 (1)なかま。ともがら(曹)。 (2)つかさ。裁判官。役人。「法曹ホウソウ」(法律家) (3)軍隊などの階級の一つ。「軍曹グンソウ」 (4)「曹司ゾウシ」とは、官吏や女官の部屋の意。「御曹司オンゾウシ」(堂上家の部屋住みの子息。名門の子弟)
曹を音符とする字 (音符「曹ソウ」 を参照) ソウ:曹・遭・漕・艚・槽・糟
朁 サン・セン 曰部
解字 篆文は「曰(いう)+兟シン(髪挿し)」の会意形声。曰(いう)に先がするどい髪挿しを加えて、言う行為をゆがめること。つまり、そしる・中傷する意となる。しかし、本来の意味でなく、仮借カシャ(当て字)されて、かつて・すなわちの意となる。現代字は曰⇒日に変化。
意味 かつて。すなわち。
朁を音符とする字 (音符「朁サン」 を参照)
サン:朁・蚕 シン:譖・簪 セン:潜・僭
曷 カツ・なんぞ・いずくんぞ 曰部
解字 「曰エツ(いう)+匃カツ(もとめる)」の会意。匃カツは死者をだいて、そのよみがえりをねがう形。曰エツは、いう意。両者を合わせた曷は、よみがえりの願いを大きな声で言う形で、「請い願う」意味となる。しかし、本来の意味でなく、「なんぞ」「いずくんぞ」の助字に仮借カシャ(当て字)された。新字体の音符になるとき、下部が、匃⇒匂に変化する。
意味 (1)なんぞ(曷ぞ)。いずくんぞ。 (2)いつか。
曷を音符とする字 (音符「曷カツ」を参照)
カツ:曷・渇・葛・褐・喝 ケイ:掲 エツ:謁 アイ:靄・藹
替 タイ・かえる・かわる 曰部
解字 金文は、二人の立った人の形で、二人が話をしているさまと思われる。篆文は「立立+曰(言う)」の会意。立った二人の人が会話をしている形。二人が引き継ぎをして役割を交替するさまから「かわる」意味をもつ。交替が済んだ方は役割からはずれるので、おとろえる意となる。現代字は、篆文の立立⇒夫夫(おとこ)に、曰⇒日に変化した替になった。立った人から夫(おとこ)に変わっただけで意味は同じである。
意味 (1)かわる(替わる)。かえる(替える)。「交替コウタイ」「両替リョウがえ」「為替かわせ」(とりかわす。ひきかえ。交換) (2)[国]かえ。身代わり。「替え玉かえだま」 (3)すたれる。おとろえる。「隆替リュウタイ」(盛んになることと衰えること)
替を音符とする字 なし
沓 トウ・くつ 水部
解字 「水(みず)+曰(いう)」の会意。水は流れる水の意。曰エツは言うの意。水の流れるようにすらすら言うこと[大修館漢語新辞典]。現代字は、曰エツ⇒日に変化した。日本では鞜トウ(かわぐつ)に当て、沓を、くつの意で使う。
意味 (1)すらすらと言う。流暢にしゃべる。「沓沓トウトウ」(得意になってしゃべるさま) (2)あふれる。水があふれる。 (3)あう(合う)。まじりあう。かさなる。多い。「雑沓ザットウ=雑踏」(ひとごみ) (4)[国]くつ(沓)。「沓石くついし」(柱をささえる土台石)
沓を音符とする字 (音符「沓トウ」 を参照) トウ:沓・誻・踏・鞜
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