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震災乗り越え新たな地平 「アイヌ オセロ」来年1月仙台公演

2017-12-14 | アイヌ民族関連
産経新聞2017.12.13 07:10
 東北弁でシェークスピア劇を演じる仙台の劇団「シェイクスピア・カンパニー」が来月、「アイヌ オセロ」を上演する。四大悲劇の一つ「オセロ」の舞台を仙台藩が対ロシア警戒に当たった幕末の北海道に置き換えた作品だ。主役のオセロをアイヌ民族に翻案した前作は上演開始後の平成23年3月、札幌公演を前に中断。劇団は東日本大震災による活動休止を経て、被災地をめぐり他作の上演活動を続けてきた。7年近くたち、“悲願の再演”となる今回は、アイヌ民族とのコラボレーションが実現し、新たな地平が広がる作品となった。(高梨美穂子)
                    ◇
 仙台市若林区の若林市民センターで10日、「アイヌ オセロ」の稽古が行われた。阿寒アイヌ工芸協同組合専務理事でユーカラ劇脚本・演出家など多彩な顔を持つ秋辺デボさん(57)と、アイヌ文化を国内外に発信する舞踊集団「ピリカップ」のメンバー5人が北海道から参加した。
 主役の旺征露(おせろ)役、●守勇さん(46)を前に、秋辺さんは「神様に対する所作は手指を少し開く。何も持っていないことを知らせるように」と指導した。
 冒頭の結婚式の場面にはヤナギの木で作った儀礼具、パスイ(捧酒箸)でアイヌの神に酒をささげるしぐさ。伝統的な模様の入った花ござの配置は秋辺さんのアイデアだ。
 秋辺さんは今回、劇団主宰で東北学院大教授、下館和巳さん(62)と共同で脚本、演出、プロデュースに関わる。「アイヌの神様さやるしかねえな」という妻殺しを決心するせりふは「神様さ返すしかねえな、がいい」と、下館さんに伝えた。
 物語の舞台は万延元(1860)年。択捉に生まれ、ロシア人に父母を殺され祖母に育てられたアイヌ民族の旺征露は、高田屋嘉兵衛に認められ仙台藩の択捉脇陣屋の筆頭御備頭に抜擢(ばってき)され、仙台藩士の娘、貞珠真(でずま)と結婚する…。仙台藩が幕府から蝦夷地警備を任されていた史実からヒントを得た。前作の「アトゥイ オセロ」(アトゥイはアイヌ語で「海」)と設定は同じだ。
 だが、震災を経たからこその違いも生まれた。メンバーも被災し劇団は活動休止を余儀なくされた。そして下館さんは仙台で高齢女性から声を掛けられる。
 「下館さんだすぺ。やめるのすかわ? いっつも楽しんみにしてだがら、やめねで。んでも、長ぐない、誰も死なないシェークスピアやってけさいん」
 震災約1年後。悲劇に喜劇の色と温かさを持たせ、上演時間は軽めにした。被災地の小学校や公民館などをめぐり上演を続け、今回の作品につながった。
 秋辺さんは「東北弁でシェークスピアをやっているのは面白そうと思った。アイヌ民族は150年間厳しい差別と阻害に遭い、伝統的な歌や踊りに固執しているが、今は先住民族復興の機運の時期。だからあえて新しいものに手を出す時なのかもしれない」。
 下館さんは「デボがアイヌの血や信仰、心を注ぎ込んでくれた。来年で作品の構想開始から10年。ようやく神様がゴーサインを出してくれたのかな」と話す。
 仙台公演後は、6月に東京、7月に札幌、8月には英国ロンドンでの上演を予定。6月の東京公演前までの間、沿岸部の被災地でも上演する計画だ。
 仙台公演は来年1月12~14日、エル・パーク仙台(仙台市青葉区)のスタジオホールで行われる。情報や問い合わせは劇団ホームページで。
●=けものへんに犬
http://www.sankei.com/region/news/171213/rgn1712130046-n1.html

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高校生設計コンペ 名寄産業高3年・北田さん、谷口さん最優秀 道内勢で初

2017-12-14 | アイヌ民族関連
北海道新聞12/13 22:25 更新
 【名寄】高校生対象の建築設計コンペ「第63回工高生デザインコンクール」(日本建築協会主催)で、名寄産業高建築システム科3年の北田幹(もとき)さん(18)と谷口毅和(たけと)さん(17)の作品が道内初の最優秀賞に輝いた。作品名は「アイヌ民族工芸館 コロポックルの住(す)み家(か)」。アイヌ民族に伝わるコロポックル(フキの葉の下の人)が立ち寄ることをイメージした空間を設計し、評価を得た。
 コンクールは、手書きが条件で、設計図の作製にトレーシングペーパー(半透明の紙)を使えないなど制限が厳しく、道内では同校が2015年に入選したのが過去最高だった。今年は「伝統工芸館」がテーマで、全国から128点の作品が集まった。
 2人は4月から作品製作を開始。北田さんが設計、谷口さんが模型作りを担当し、「北海道の伝統と言えばアイヌ民族だと思った」(北田さん)と民族の歴史を勉強した。
 工芸館には、ムックリ(口琴)や衣装などアイヌ民族の手工芸品を展示。円柱の建物を組み合わせた構造で、コロポックルが住んだとされるフキの葉を屋根にあしらったほか、室内にも配している。
※「コロポックル」の「ロ」と「ル」は小さい字
全文:850文字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/150963

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工芸品のように美しい、インドの出版社〈タラブックス〉の本。

2017-12-14 | 先住民族関連
カーサ ブルータスDecember 13, 2017
インド南部の街、チェンナイを拠点に活動する出版社〈タラブックス〉。彼らの代表作である絵本『夜の木』は、シルクスクリーンによる印刷の美しさと、手製本による温もりを感じられる、アートピースのような一冊だ。世界を魅了する〈タラブックス〉の本づくりとは? その背景に迫る展覧会が〈板橋区立美術館〉で開催されている。

世界各国の『夜の木』。2006年にインドで生まれた絵本だが、日本では2012年にタムラ堂から出版された。
隅々まで美しい、手製本のアートブック。
〈タラブックス〉の名を知らなくとも、書店で『夜の木』を手に取ったことがある人は多いのではないだろうか。手触りのよい厚手の黒い紙に、生命力みなぎる巨木の絵がプリントされた大判の絵本だ。シルクスクリーンによる鮮やかな発色。細部まで描きこまれた精密な絵。それらを、古い綿布から作ったという漆黒の用紙が引き立てている。カバーも見返しもうっとりするほど仕上げが美しい。数十人の職人がすべて手作業で組み立てたというのも納得だ。
絵本『世界のはじまり』ができるまで(2015年制作)(c) Tara Books
https://www.youtube.com/watch?time_continue=164&v=BrrmXnNafnc
展覧会『世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦』では、〈タラブックス〉の名を世界に知らしめた『夜の木』の原画をはじめ、1994年の創業以来、発表してきた様々な本が約300点の資料によって紹介されている。ハンドメイドブックは彼らの代名詞でもあるが、彼らが作るのはそれだけではない。インドの口承文学を表現した絵巻物のような本や、インドの伝統工芸であるブロックプリントを活用した本など、常に挑戦的な本づくりを続けてきた。展覧会タイトルが示すのは、そんな彼らのチャレンジングな姿勢なのだ。
民族画との出会いと、それを伝える絵本。
展示室は大きく4つのスペースに分かれ、メインのひとつでは『夜の木』に代表されるゴンド族との仕事がまとめられている。ゴンド族とはインド中央部に暮らすインド最大の先住民族で彼らの描く民族画は、その詩的さ、知的さにおいて卓越している。〈タラブックス〉もその世界観に魅了されてきた。会場には世界8カ国で出版された様々な言語の『夜の木』の他、写真家・松岡宏大が写したゴンド族の村の風景も展示されている。
インド南部の街、チェンナイを拠点に活動する出版社〈タラブックス〉。彼らの代表作である絵本『夜の木』は、シルクスクリーンによる印刷の美しさと、手製本による温もりを感じられる、アートピースのような一冊だ。世界を魅了する〈タラブックス〉の本づくりとは? その背景に迫る展覧会が〈板橋区立美術館〉で開催されている。
もうひとつのメイン展示室では、ゴンド族以外の民族画家とのコラボレーションが紹介されている。『インドのどうぶつ』はその中でも貴重な一冊。この本から民族画家との絵本づくりがスタートしているのだ。
そもそものきっかけは、〈タラブックス〉を主宰する2人の女性、ギータ・ウォルフとV・ギータが、2000年にインド国内を巡回した伝統芸術展で、民族芸術の美しさに触れたこと。そこから専門家を交えて1年のリサーチを行い、様々な民族を訪ね、彼らの描く民族画に触れたという。なぜ、そこまでの作業が必要だったのか。それは、これらの民族画がインド国内でも一部の人にしか知られていないから。ましてや、絵本などの出版物になったこともなかったという。
2003年に発表された『インドのどうぶつ』はシルクスクリーンを用いた美しいハンドメイドブックであると同時に、民族画をひとつのアート作品として取り上げた、革新的な絵本だった。
インド南部の街から世界へ。小さくも挑戦的な本づくり。
同じ展示室には、一際目を引く、簾のような絵も。これはインドの絵巻物で、〈タラブックス〉が手がける絵本『ツナミ』のアイディア源でもある。蛇腹のように折りたたまれた絵本『ツナミ』は、畳んだままだと本のように読め、広げると迫力ある一枚の絵となって、物語を伝えてくれる。
ギータ・ウォルフとV・ギータがインドの伝統文化にこだわるのには訳がある。もともとインドには、子供向けの絵本がとても少なかったというのだ。彼らが嘆いていたのは、「なぜ、子供たちは海外の絵本を見て育たないといけないのか」ということ。これまで口承文学として受け継がれてきた物語を、本という形にし、インドらしい絵本をつくることが、彼らの活動の出発点でもある。
〈タラブックス〉の活動に世界の注目が集まるのは、彼らのつくる本の美しさ、斬新さだけが理由ではない。ギータ・ウォルフとV・ギータが大切にしているのは“チームで本を作ること”。総勢50名のスタッフが一丸となり、企画から印刷、製本、販売まで行っており、信念ある本づくりのために、あえて小規模であり続けようとしている。作家やアーティストだけでなく、デザイナーや工房の職人、営業スタッフからも平等に意見を聞き、全員参加のもと、本づくりをしていることも特徴だ。代表作『夜の木』が世界で90万部を超えるヒットとなっても、チェンナイという小さな街で地に足をつけて活動を続ける〈タラブックス〉。
今の時代における“挑戦的なものづくり”に触れられる貴重な展覧会だ。
https://casabrutus.com/culture/62237

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