先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

先住民の絆結ぶ氷の道 たくましく生きる人々

2017-12-28 | 先住民族関連
時事ドットコム12月28日(木)

イエローナイフで食べたバイソン(バッファロー)のステーキ【時事通信社】
 カナダは先住民を西欧社会に同化させる政策を行ってきた。取材した先住民の人々はみんな、英語をしゃべっていた。一方で今回の旅を通じ、ニチザ酋長だけではなく、かんじき作りの名人のローレンスら多くの人たちが、自分たちのアイデンティティーである先住民の文化や伝統が失われかねないことに、強い危機感を抱いていることを痛切に感じた。
 しかし近年、先住民の独自性を尊重する活動が積極的に進められており、先住民は自治組織を持ち、教育や文化、政治、経済といった幅広い分野で独自の取り組みを行うことが認められている。フォートスミスの短期大学では先住民の言語が教えられ、イエローナイフでも先住民の文化を紹介する博物館の展示はとても充実している。
 「文化を守るためには子供の教育が大事だ。トリチョ族の子供は高校生になると、トリチョの自治の仕組みを必須科目として学んでいる」
 若者たちに伝統を守ってほしいと思うニチザ酋長の気持ちが伝わる。
 カナダは2017年7月1日、建国150周年を迎える。だが、ノースウエスト準州の旅を通して出会った先住民の姿には、それよりはるか昔から厳しい自然と向き合いながらたくましく生き、文化と伝統を守ってきたというプライドがにじんでいた。
読者プレゼント
 「カナダ・アイスロード」特集をお読みくださり、ありがとうございました。ご感想はぜひツイッターで。
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 ハガキに住所、氏名、年齢、電話番号を記入し、下記へお送りください。
 締切は4月28日必着。
 〒104-8178
 東京都中央区銀座5-15-8
 時事通信社デジタルメディア事業本部
 時事ドットコム「アイスロード」係
 [取材協力]カナダ観光局/エアカナダ/八木一仁
 【関連記事】世界遺産と先住民 ハイダグワイ
https://www.jiji.com/jc/v4?id=201603canada-northwest0010

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先住民の絆結ぶ氷の道 アイスロードの将来

2017-12-28 | 先住民族関連
時事ドットコム12月28日(木)

アイスロードで起きたタンクローリー水没事故を伝えるニュース記事【時事通信社】
 アイスロードができる冬のわずかの期間、トリチョ族の人々は車やスノーモービルで移動し、遠くの村に住む親戚や友人たちとの再会を楽しんできた。
 こうした生活が近い将来、劇的に変わるかもしれない。
 ワチとイエローナイフに近いベチョコを結ぶ一般道の建設計画が進んでいるからだ。道路ができれば陸の孤島ではなくなる。ワチやそれより北の集落へのアクセスも大きく改善される。運賃が高い小型機を使う必要性や経済的負担も減る。
 計画されている道路は全長約94キロ。アイスロードを使う現在のルートと異なり、先住民が罠猟などをしている湿地帯を通る。建設費として見積もられている1億5000万カナダドル(約130億円)はノースウエスト準州や連邦政府が負担。 ワチやガメティなどトリチョ族の自治組織は建設計画を受け入れているという。
 ワチでハンドゲームのルールを教えてくれたヘンリーは計画を支持している。
 「アイスロードで起きたタンクローリーの事故を知っているだろ。温暖化でアイスロードが昔のように長い期間使えなくなるかもしれない。そうなったらどうやって燃料を運ぶんだ?」
 だが賛成ばかりではない。
 特に年配の先住民は、村に道ができることで、禁止されているアルコールやドラッグが持ち込まれ、ざまざまな社会問題が起きることを強く心配している。
 トリチョの自治組織は2003年、連邦政府とノースウエスト準州と3万9000平方キロに及ぶ土地と地下資源の所有で合意。資源開発に伴って得られる利益の一部を受けている。
 「道を建設するのは住民の生活向上目的というより資源開発のためよ。わたしたちの土地から資源が搾取されてしまうだけだわ」
 ベチョコで出会った女性は、計画の背後に腐敗が存在し、道路ができて村を開発しても利益を得るのは一部の人たちだけだと憤った。
 ワチのニチザ酋長は、計画を推進する立場だが、根強い反対論も理解していると話す。むしろ一番の不安は、トリチョ族が受け継いできた文化や伝統が消えてしまわないかということだ。
 「若者たちはいずれ『われわれは何者なのか』と自らに問いかける。道路ができて村の人口が増えた時、それを知るためのトリチョ族の言語や伝統を守っていくのは大きな挑戦だ」
https://www.jiji.com/jc/v4?id=201603canada-northwest0009

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先住民の絆結ぶ氷の道 熱狂の大勝負

2017-12-28 | 先住民族関連
時事ドットコム12月28日(木)

各地区の先住民代表が集まって開催されたハンドゲーム大会の様子。簡単にいうと、相手がどちらの手におはじきを持っているかを当てるゲームで、とにかく盛り上がる【時事通信社】
 ハンドゲーム。
 文字通り手だけを使うゲームだ。ワチ、ベチョコ、ガメティ、ウェクウェティなど、イエローナイフ北方の集落に暮らすトリチョ族と呼ばれる先住民の伝統的な遊びだ。
 厳冬期、大きな大会が開催される村には毎年のようにアイスロードを使って遠くから多くの先住民が集まってくる。2年ぶりにトーナメントが行われるワチの人口は、普段の倍となる1000人ほどに膨らむ。会場の公民館には、ピックアップトラックがぎっしりと並んでいる。
 ハンドゲームは、もともと先住民が集落で絆を深めるために始まった遊びが起源とされる。狩猟などで得た獲物を賭けていた娯楽が、トリチョ族の文化として引き継がれている。
 「やってきた人々はみんなファミリーだ。ハンドゲーム大会はファミリー再会のイベントだ」
 野球スタジアムのように階段式に作られた会場の観客席。アルフォンゾ・ニチザ酋長が、席を埋め尽くした老若男女を見渡しながら説明してくれた。
 ルールは簡単だ。1チーム10人が2組に分かれて対戦。「シューター」と呼ばれるチームの1人が、相手チームの10人がそれぞれ左右どちらの手におはじきを隠して握っているかを当てる。当てられれば脱落し、ミスをすればシューターのチームにペナルティーが科される。双方のチームが交互に当て合いをし、一定のペナルティーに達した方が負け。参加できるのは男性だ。
 トーナメントには27チームが出場。遠くはカナダ北西部ユーコン準州、ノースウエスト準州の南に位置するアルバータ州からやって来たメンバーもいるという。当初は32チームが参加する予定だったが、ワチから北につながるアイスロードが割れ、タンクローリーが沈んだ事故で通行止めに遭ったガメティのチームが来られなくなったのだ。
 ババン、ババン、ババン、ババン!
 ゲームスタートだ。それぞれのチームの後ろに陣取った応援団が、大声でリズムを作りながらカリブーの革を張ったタンバリンのような形のドラムを棒で打ち鳴らす。瞬く間に会場は大音響で満たされる。優勝すれば賞金2万カナダドル(約170万円)、8位でも1500ドル(約13万円)が手に入るとあって、選手の表情は真剣そのもの。応援にも熱が入る。
 それぞれのチームの10人がつま先立ちの正座で一列に向き合う。一方のチームの選手はうずくまって膝元の上着で手を隠しておはじきを握り、そしてリズムに合わせて体を起こしながら腕を組み、シューターとの勝負を待つ。
 パチン!
 シューターが両手をたたき、伸ばした手で左右どちらにおはじきがあるのかをサインで当てる。列の端の選手だけが右、残りは左といったさまざまな指示パターンがあるが、難解すぎて見ていてもさっぱりだ。
 「単純に見えるだろ。でもこのゲームは神経戦なんだ」
 そう話すのはイエローナイフから参加したヘンリー・ゾーイ。シューターは単純に確率50%に賭けているのではないという。
 「若い選手はシューターとの勝負に勝てば、次の当て合いで隠す手を変える傾向がある。年配は頑固だからずっと同じ手のことが多い。シューターには記憶力が要求される」
 気が付けば観客に子供が増え、室内は200人を超えている。ドラムのリズムに合わせて体を激しく動かし、ゲームに熱狂している選手の顔は紅潮し、汗がきらきらと光る。シューターが見事に当ててどよめく選手と観客。外は氷点下というのに、会場は熱気でムンムンしている。
 「子供にハンドゲームを知ってほしいから一緒に来た」
 ゲームを見守る人の中には、先祖から続くゲームを受け継いでもらおうと、子供を連れてきた人も目立つ。ワチやベチョコでは1990年代から学校でハンドゲームを教え始め、伝統を守る取り組みと続けているという。
 会場に半日いただけで、人々の気勢と大音響に圧倒され、疲労に襲われた。トーナメントは3日間にわたって続くが、最後まで試合を見られないのがとても残念だ。
 日が暮れる直前にワチを離れる。男たちが応援する声と激しいドラムの音が外まで漏れる公民館の横を通り過ぎ、イエローナイフを目指した。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=201603canada-northwest0008


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先住民の絆結ぶ氷の道 激走、アイスロード

2017-12-28 | 先住民族関連
時事ドットコム12月28日(木)

雪がなく交通量が多ければガラスのようなアイスロードの表面が現れる。写真はイエローナイフからデタ村に向かうグレートスレーブ湖のもの【時事通信社】
 「陸の孤島」とは一体どうなっているのか。
 旅が後半にさしかかり、アクセスできる地図に道が載っていない集落を見たいとの思いが強く募る。
 それを確かめるため、厳冬期のおよそ3カ月間だけ通れるアイスロードでイエローナイフから北に一路、先住民の集落ワチを目指した。
 イエローナイフから105キロ離れた最初の村ベチョコまでは、グレートスレーブ湖に沿って舗装された道路が北西に伸びている。視界の左右に広がる森は雪に覆われているが、道路は除雪されている。建築資材などを運ぶ大型トレーラーと擦れ違うが、交通量は少ない。
 ベチョコを過ぎてマリアン湖上のアイスロードに入る。入り口につながる道路には「最大重量18500キロ」と標識が立てられている。
 この日のアイスロードは雪に覆われ、ガラスのように見えない。車をいったん停めてアクセルを強めに踏み込むと、四輪駆動のSUVが後部を左右に振りながら走り出す。
 しばらくするとアイスロードの端に設置された標識が見えてきた。
 「ROAD CLOSED(通行止め)」
 近寄ってよく見ると、黒っぽい湖の水が氷上にしみ出している。万が一、ここに気付かずに走行すれば氷が割れ、車が水没する恐れがあるため、アイスロードの一部を三角コーンで囲って注意を促しているのだ。
 ワチにつながるアイスロードは今年、2月5日に乗用車が通れるようになった。氷が厚さを増す2月に末以降はタンクローリーやトラックの通行ができるようになり、1年分の燃料、大量の生活必需品をはじめ、小型機に積めなかったり、高い運賃がかかったりするものを一気に輸送する。だが、今年は暖冬が影響し、氷のコンディションが良くないという。
 実際、ワチよりさらに北のアイスロードでは直前、タンクローリーが走行中に氷が割れ、一部が水中に沈む事故が発生。集落の人々にとってライフラインとなるアイスロードは全面的に通行止めとなり、住民の生活や移動に大きな影響が出た。
 アイスロードは想像以上にデリケートだ。よく注意して見てみると、一方の岸と対岸は最短距離の一直線で結ばれていない。車は岸の手前で大きくカーブして、陸地につながっている。
 「ポコポコポコ」
 イエローナイフとデタを結ぶアイスロードでは、車が通過するときに氷のしなる音が聞こえた。
 湖面が厚い氷で覆われても、重い車が通れば氷がしなって下の水がわずかに波打つ。その波が車の進行方向に向かって勢いを増し、岸辺の氷が割れてしまう事態が起きるのを防ぐため、アイスロードは岸の近くでカーブを描くのだ。
 全長約30キロに及ぶマリアン湖のアイスロードを抜け、白樺やカラマツの森に入る。夏には一面、湿地帯となるが、雪が地表を覆っている。お尻が時々シートから浮かんでしまうほどのでこぼこ道が続き、まるで悪路を走行するラリーカーに乗ったような気分になる。
 イエローナイフから約210キロ。およそ5時間をかけてワチに到着した。
 人口550人の小さな集落には、ブルーやオレンジといったカラフルな平屋が建ち並ぶ。村を挙げて開かれる先住民伝統の賭け遊び「ハンドゲーム」の大会を翌日に控え、住民は準備に追われていた。
 トリチョ族の人々はどことなく日本人に似ている。子宝に恵まれた世帯が多く、村の中心にある学校では、日が暮れた後も子供たちがスノーモービルで雪の積もった氷点下の校庭を走り回っている。
 「さあ、食べて、食べて」
 学校の体育館に設けられた食堂で、村の女性にカリブーのシチューなど、ワチの味で「おもてなし」を受けた。人々は気さくで次々と話しかけてくる。
 「どっから来たんだ。日本?ハンドゲームを見に来たのか?見ないで参加したらどうかね?」
 アイスロードができて陸の孤島でなくなるこの時期、遠くから多くの先住民が参加するハンドゲームには、どんな魅力があるのだろう。期待に胸が膨らむ。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=201603canada-northwest0007

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先住民の絆結ぶ氷の道 氷上の漁

2017-12-28 | 先住民族関連
時事ドットコム12月28日(木)

グレートスレーブ湖で獲れた体長1メートルのレイクホワイトフィッシュ【時事通信社】
 ボビー・ドライギース(44)、ポール・マッケンジー(58)。
 2人ともグレートスレーブ湖を挟んでイエローナイフの対岸にある先住民の村、デタの出身だ。都市の近くに住んでいるが、今でも湖で魚を捕り、罠で小動物を仕留めている。2人と行動を共にし、先住民の昔ながらの生活を体験した。
 ボビーのピックアップトラックに乗り込む。イエローナイフからデタには、グレートスレーブ湖にできたアイスロードを使うと近道だ。
 凍った湖と陸地の境目は雪が覆って分からないが、入り口に「重量制限3600キロ」と表示された看板がある。アイスロードは全長約5キロ、幅は約50メートル。制限速度は50キロで車線はない。湖面を覆う氷が露出するように雪が取り除かれ、黒々とした水の上にできたガラスの道のようだ。
 「アイスロード部分に冷たい空気を直接当てて氷を厚くするんだ」
 こうすることで、氷は厚さが5フィート(約1.5メートル)になる。ピックアップトラックは普通の道と同じように走っていく。
 グレートスレーブ湖は北米では最も深い湖で、最深部は614メートルに達する。大丈夫だとは思いながらも、もし氷が割れたらとびくびくしているうちに、6キロ先の対岸にあるデタに着いた。
 車を置き、待っていたポールのスノーモービルに乗り換えてボビーの小屋へ。室内の薪ストーブの上には湖で捕ったイワナの仲間、レイクトラウトの皮が干されている。柱には罠猟で捕ったネズミの一種マスクラットの皮が裏を表にしてぶら下がり、狩猟民族の暮らしぶりがうかがえる。
 ポールが運転するスノーモービルが引くそりに乗り込み、グレートスレーブ湖に仕掛けた網を引き上げに行く。強い風が当たり、体感気温はマイナス30度くらいだ。
 厚さ1メートルほどの氷に穴が2カ所、約50メートル離れて開いている。同じ長さの網が水中に仕掛けてある。
 「よし、この綱を引っ張るんだ」
 穴から引き上げられた長い網にはレイクトラウト、淡水タラのカワメンタイなどが掛かっている。どれも50センチほどあり、中には1メートル近いレイクホワイトフィッシュの大物も。
 網から外された魚は氷の上で跳ねていたが、みるみるうちに凍っていく。カワメンタイは体をくねらせたままの姿で固まっている。
 「きょうは少ないね。魚が湖の別の場所に移動してしまったんだろう」
 残念そうに話すポールたちと、今度は近くの森に仕掛けた罠を見に行った。
 獲物は、凍って水がなくなった川底のトンネルを動き回るマスクラット。マスクラットを探すオオカミやキツネを追って居場所を見つけ出し、湖の藻と煮て臭いを消した罠を氷の下に仕掛ける。7つ仕掛けた最初の罠を確かめようと穴に手を入れたポール。「うわ~」と叫び、腕が奥に潜む獲物に引っ張られるしぐさをしておどけてみせる。空振りだったが、ポールもボビーも陽気だ。
 5つ、6つと成果がなく、あきらめかけて最後の仕掛けを点検するポールの表情が急に真剣になった。
 「何かいるぞ!」
 ゆっくりと仕掛けを引き出す。すると罠に手を挟まれたマスクラットが一匹。ポールは手足をばたつかせているマスクラットを素早く雪の上に打ち付けて仕留めた。毛はふさふさで触ってみるとまだ体温が残っている。
 「俺たちはずっとこうして猟を続けてきた。子供にも猟を教えているが、みんな好きだと言っているよ」
 ボビーは満足そうだが、自然に左右される厳冬期の網漁や罠猟は想像を超える重労働だ。小屋に戻り、寒さで感覚がなくなった手で握ったマグで飲むコーヒーは格別のおいしさだった。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=201603canada-northwest0006

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先住民の絆結ぶ氷の道 発展支えた功労者

2017-12-28 | 先住民族関連
時事ドットコム12月28日(木)

道路や鉄道が通じていない先住民の村や鉱山へ、飛行機で人や荷物を運ぶのがブッシュパイロットの仕事。彼らが使用する機体の中でも有名なのがデ・ハビラント・カナダDHC-6「ツインオッター」機だ【時事通信社】
 グレートスレーブ湖をはじめとした大小無数の湖や川に囲まれたイエローナイフは、1960年にハイウエーでつながるまで主要な町と隔絶した陸の孤島だった。そんなイエローナイフの発展を支えたのが草原や凍った湖面、水上といった滑走路のないさまざまな場所に季節を問わず離着陸できる操縦技術を持った「ブッシュパイロット」と小型プロペラ機「ブッシュプレーン」だ。
 「ブッシュパイロットはしばしば極寒と危険な離着陸環境に遭遇しながら、乗客や郵便物、物資を人里離れた地に運び、カナダ北部の経済発展と公共サービスの提供に重要な役割を担った」
 イエローナイフの旧市街にある、町を一望できる小高い丘の上に立つ展望台の碑には、ブッシュパイロットの功績を称える文字が刻まれている。誘導灯がなかった当時、この丘がイエローナイフを目指して飛んだブッシュパイロットの目印だった。
 イエローナイフと北部にある先住民の村、ワチ、ガメティ、ウェクウェッティを結ぶ定期便を運航しているエア・ティンディ社をイエローナイフ空港に訪ねた。
 エア・ティンディは、遠隔地に急病人が出た場合に出動する5機の小型機を含め20機を保有している。駐機場では職員が3人がかりで単発プロペラ機の乗降口から冷蔵庫を横倒しにして機内に押し込んでいる。こんな大きなものが入るのかと思うようなサイズだ。
 「冷蔵庫のメーカーは横倒しの運搬を推奨していないけど、使う前にしばらく真っ直ぐに立てていれば大丈夫さ」
 かつて自らも操縦桿を握っていたマネジャーのボブ・シュヌアが笑う。
 冬は凍った湖や川にアイスロードができ、先住民の村と都市を車で移動する人が増える。だが、氷が解けてアイスロードが消滅すれば、食料品など生活必需品を運ぶブッシュプレーンの存在感は大きくなる。
 「自分がすべきことをしているだけ。でも道のない村を結ぶブッシュプレーンの運航会社として責任の重さを感じる」
 ボブはちょっと照れくさそうな顔をしながら、得意げに話した。
 駐機場で翼を休めている年季の入った一機が目に入った。ブッシュパイロットの信頼が厚い名機「ツインオッター」だ。デ・ハビランド・カナダ社が開発した双発のプロペラ機で1965年に初飛行。滑走路がない場所でも短距離で離着陸できる。目の前の機体には、タイヤとそりが一体化した着陸装置が付いている。
 「近くまで乗っていくかい?」
 ツインオッターをじっくり観察していると、一人の男性に誘われた。
 マイク・マーフィー。ブッシュパイロット歴25年のベテランだ。
 無賃搭乗でいいのか尋ねてみた。
 「乗りなよ。旧市街までのちょっとだけどな」
 後部から乗り込む。ジュラルミンむき出しの機内に燃料の臭いが充満している。シートは簡素な折りたたみ式。19人乗りだ。客室から機長のマイクと若い副操縦士が慣れた手つきで年代を感じさせる計器盤を操作しているのが見える。手動操作が多く、クラシック飛行機といった趣だ。
 2基のエンジンが煙を吐いて始動する。マイクが右手で操縦席の天井にある2つのスロットルレバーを同時に前方へ押し出すと、ツインオッターはゆっくりと動き出した。
 滑走路まで来た。マイクの右手に副操縦士が左手を重ね、レバーをさらに前へ倒す。離陸だ。
 「ブオーン」とプロペラがごう音を立てる。エンジンの振動が大きくなって走り出したと思った次の瞬間、ツインオッターはふわっと浮かび上がった。離陸時に強い加速で体が座席に押し付けられるジェット機とは異なる感覚だ。飛び上がった機体はすぐに右旋回。イエローナイフのこじんまりした街並みがすぐ下に広がる。
 5分ほどの短いフライトの後、ツインオッターはブッシュパイロットの碑に程近い凍ったグレートスレーブ湖に滑るように着陸した。氷上の駐機場となったここで次のフライトに備えるのだ。
 雪原や雪がかぶった氷上の着陸は、機体がどこまで雪に沈むかが分からず、緊張すると話すマイク。
 「飛ぶ場所が決まっている定期便パイロットの技能は幼稚園生。チャーター便をツインオッターで飛ぶ俺はマスター(修士号)取得者だね」
 屈託のない笑顔に、飛ぶことが大好きなブッシュパイロットのプロ根性が浮かんでいた。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=201603canada-northwest0005

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先住民の絆結ぶ氷の道

2017-12-28 | 先住民族関連
時事ドットコム12月28日(木) 極寒のエメラルド

イエローナイフ上空に現れた巨大なオーロラ。気温は-27度。【時事通信社】
 雪が舞う早朝、フォートスミス空港に向かう。乗り心地が予想外に快適だったピックアップトラックとはここでお別れだ。手荷物チェックもなく、そのままイエローナイフ行きの小型プロペラ機に乗り込む。高度2万フィート(約6100メートル)。機内に朝日が差し込む。
 カナダに来てから3日間、晴れたことがない。45分間のフライトで到着したイエローナイフの空は鉛色をしている。ここにやって来たからには、生まれて初めてオーロラを見てみたい。例年より気温が高いためか、曇りがちな天気が続き、だんだんと不安になってきた。
 だが、心配は無用だった。午後になると、雪交じりの曇天がうそのように晴れ渡った。雲一つなく、サングラスがなければ雪の照り返しが強く、目を開けていられない。冷え込んだ快晴の夜によく見えるというオーロラに期待が高まる。
 午後11時。分厚いフード付きのジャケット、防寒ズボン、目出し帽に身を固め、イエローナイフ市内から車で約30分離れた「オーロラ観測スポット」へ。真っ暗の雪原だ。オーロラ目当てで来た数台の車が車内灯を消し、エンジンをかけたまま止まっている。
 車外に出る。気温マイナス27度。今まで経験したことのない極低温の乾いた空気が、肺の奥まで入り込む。宇宙服のように着膨れし、歩く姿はペンギンのように見えるに違いない。
 寒さで積もった雪は粉のようにさらさらだ。手袋は二重にしているが、カメラを設置するために三脚を準備しているだけで指先がかじかむ。カメラに触れた自分の息がたちまち凍りつく。レンズの表面に息が掛からないように注意しながら、澄み切った漆黒の夜空を見上げる。
 「空にはこんなにたくさんの星があるのか」
 思わず独り言が出た。地平線に少しだけ隠れたオリオン座。星もオレンジっぽいものや青白いものなど色々ある。本物の星が輝く「プラネタリウム」はため息が出るほど美しく、しばし寒さを忘れるほどだ。
 時折、ダイヤモンド鉱山に燃料などを運ぶトレーラーがエンジン音をとどろかせながら走り過ぎる。その向こうにある森から半透明のエメラルド色をした光の筋が現れ、やがてカーテンのようになって空いっぱいに伸びる。
 「オーロラだ!」
 音もなく突然現れては消え、そしてまた別の方角から出現するオーロラは、墨汁に色絵の具を流したようで幻想的。だが、強く光ったり、弱く光ったりする様はどことなくこの世のものではないような不気味さもあり、不思議な感覚に襲われた。
 オーロラは、太陽から放出された電気を帯びた粒子が大気圏に入る際に光る現象だ。上空100~500キロで輝き、粒子の原子や輝く高度によってエメラルドや紫、青といった色に見える。イエローナイフでは、光の強さを10段階で分けて予報を出している。この日は「レベル3.5」。若干エメラルド色が薄かった。
 極低温の夜空を見上げ続けて2時間余り。目出し帽の口元が息で白く凍りついている。全身がこのまま凍結してしまうのではないかと感じ始めた頃、イエローナイフに戻ることにした。
 帰路、突如、車が急ストップした。車外に飛び出た同乗のカメラマンが叫ぶ。
 「これはすごい!見て!」
 ドアを開けて空を見上げると、巨大なオーロラが真上で輝いている。先ほどまで見ていたものより近くで光っている。風になびいたカーテンのひだのような部分は、白、エメラルド、紫色と虹のグラデーションに彩られ、瞬時に色を変える。
 激しく動きながら妖艶な光を放つオーロラは、まるでSF映画に出てくる生き物のようだ。写真を撮ろうと思った瞬間、勢いよく輝いていたオーロラは夜空に溶け込んでしまった。
 ホテルに戻ったのは午前3時前。しかし、初めて目にしたものに興奮し、なかなか寝られなかった。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=201603canada-northwest0004


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先住民の絆結ぶ氷の道 かんじき作りの名人

2017-12-28 | 先住民族関連
時事ドットコム12月28日(木)

かんじきを制作する工房で、作り方を説明するローレンス・チージーさん【時事通信社】
 フォートスミスの博物館には、先住民の暮らしぶりを紹介するカヌーや毛皮、当時の写真などが並ぶ。町の若者が通う「オーロラ・カレッジ」の校内ではいろんな場所で先住民の言語を学ぶクラスの案内紙が貼られている。先住民文化の継承に町が積極的に取り組んでいる印象だ。
 カレッジで待ち合わせたのは、学生に木造建築を教えるローレンス・チージー(69)。先住民族に伝わるかんじきが作れる文化の伝承者だ。どことなくアジア人のような顔立ちのローレンスの帽子には、「先住民の誇り」と書かれている。
 白樺の森と雪に囲まれた自宅の作業場。細長い涙形をしたいくつかのかんじきの中には、孫のために作ったという作品があった。大人用の長さ1.5メートルほどのものよりも小ぶり。紫と白の毛糸でできたレースがあしわられ、伝統工芸品のようだ。
 「かんじき作りには長い経験が必要なんだ。わしが作るのは軽くて評判だよ」
 かんじきの枠には、水分を十分に含んだ白樺の枝を使う。かんなを使って角が丁寧に取られた棒状の木材は、雪に接する面に固い表皮側がくるように、水蒸気を当てながらゆっくりと曲げていく。急いで成形すると折れてしまうからだ。
 「伝統的にはひもで固定して成形するが、自分で工具を作ったよ。面倒くさいからね」
 笑いながら見せてくれたのは、かんじきのつま先部分を上方に反らすために『発明』した当て木だ。
 父親から学び、長年かんじきを作り続けてきたローレンスが一番難しいと話すのは、細いひも状にしたカリブーの革を、木枠の内側に網目状に編み上げる工程。革ひもは、大人2人がかりで左右に引っ張った大きな革を、小さなナイフを使って幅5ミリ程度に裂いて作る。そうしてできた革ひもを、雪原を歩いても沈み込まないように目を細かく慎重に編んでいく。木材と革。素材はシンプルだが、作る作業は緻密で手間がかかり、説明を聞いているだけで気が遠くなりそうだ。
 「かかりっきりで作れば4日間ほどで出来上がる。でも白樺の枝といった材料集めから考えると、とても時間がかかるんだ」
 かんじきは体重を分散させるため、雪原で足が深く沈み込まない。サイズが一回り大きなものは猟犬が歩きやすいように雪を踏み固めるために使われる。森の狩りでは獲物に人間の臭いを悟られないよう、動物の毛皮を付けることもあったという。
 1757~58年に現在の米ニューヨーク州で領土をめぐり先住民と英国軍が衝突した戦いでは、かんじきを履いた兵士が雪原の戦闘に参加。冬の作戦でかんじきの威力が認識されるきっかけになったと言われている。
 ローレンスに、かんじきの威力を見せてもらった。向かったのは50センチほど雪が積もった丘。
 歩いた時にかかとが浮くように靴とかんじきをひもで縛り付けたローレンスは、雪原をのっしのっしと歩いて行く。大柄なローレンスが歩いても、深く沈むことはない。
 普通の靴を履いてローレンスの後に続く。だが、足が雪にはまり込んで動けない。おまけに靴の中に雪が入り込み、足はびしょ濡れ。氷点下で足の指が一気に凍った感じだ。
 「今ではアルミフレームのかんじきが手に入る。でも先住民に伝わる文化と伝統を守りたい」
 ローレンスが小さかった頃は、村のあちこちでかんじきが作られていた。しかし、自分で作れる人はいなくなったと寂しがる。先住民文化が廃れていくことに危機感を持ち、3年前からオーロラ・カレッジで一般を対象に作り方を教え始めた。最近は若い世代からも作り方を尋ねられるようになり、伝承に手応えを感じていると目を細めた。
 「文化は、決して失ってはいけない先祖からのギフト(贈り物)。独自の言語と文化を保っている日本がうらやましいよ」
 ローレンスの言葉が重く響いた。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=201603canada-northwest0003

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先住民の絆結ぶ氷の道 伝説の罠猟師

2017-12-28 | 先住民族関連
時事ドットコム12月28日(木)

フォートスミスに住む伝説の罠猟師フィリップ・ケネディー(通称パイさん)。写真は現役当時、犬ゾリで猟に向かうパイさん【Northern Life Museumu提供】
 イエローナイフから20人乗りの小型プロペラ機でグレートスレーブ湖を南へ縦断し40分。1967年にイエローナイフがノースウエスト準州の州都になるまで行政の中心地だった小さな町、フォートスミスにその「伝説の罠(わな)猟師」は暮らしている。
 フィリップ・ケネディー。先住民と入植してきたフランス人の血を引くメティス族の老人は26年生まれ。今年末に90歳になる。人々は親しみと尊敬を込めて「パイ」と呼んでいる。8歳の時から毎年、冬の森にこもり、先住民に伝わる犬ぞりを使った罠猟で生涯生計を立ててきた貴重な人物だ。
 空港からフォード・モーターの巨大な四輪駆動ピックアップトラックで雪道を走り、町外れにあるパイの小さな家を訪ねた。犬ぞりで厳冬の森を駆け巡ったたくましい、大柄の人物を想像していたが、出迎えてくれたのはボストンレッドソックスの野球帽をかぶった驚くほど小柄な老人。
 「心臓発作に見舞われてからはつえを突いているが、歩いてリハビリをしないとね」
 そう言いながら、動物の臭いが染みついた裏の小屋に大事にしまってある犬ぞりを最初に見せてくれた。長さ約3メートルの木製そりは、職人の手作り。前部は一枚板を上方に丸く反らせ、雪上で滑りやすくしてある。心臓発作で罠猟を引退した2010年まで70年近く、犬が引くそりの後ろに立ち、15万ヘクタールに及ぶ広大な森で猟を続けてきた。顔のしわには先住民族が昔から続けてきた伝統が深く刻まれているようだ。
 「犬と暮らすことが大好きだったから罠猟師になった。森の中で独りぼっちという気になったことはないし、罠猟師を辞めようと思ったこともないね」
 10頭の犬が引くそりに乗った雄姿を写した写真や絵が飾られた自宅の室内。パイは父親から受け継いでミンクやリンクス(オオヤマネコ)、クズリ、キツネなどを捕まえて毛皮を作っていた生活を教えてくれた。
 「今はスノーモービルがあるから犬ぞりで猟をする人はいない。犬を一人前に育て上げるには少なくとも2年はかかる。それでも犬ぞりがいいんだ」
 犬にはかつて「ジョージ・ブッシュ」「トニー・ブレア」と名付け、どちらにリーダーシップがあるのか楽しんだことがある。意地悪な2頭の名は「カダフィ」「ホメイニ」だ。
 ユーモアあふれるおしゃべり好きのパイからは、猟の相棒である犬たちへの愛情が話のあちこちから伝わった。
 罠猟生活は自然が相手だけに、苦労も多かったようだ。森にこもるのは10月から翌年の3月のおよそ半年。40年代以降は乱獲のため獲物が激減し、5日間でミンクなど5匹しか得られない時もあり惨めな思いをしたと振り返った。
 「罠猟も農業と同じ。来シーズンのことを考えて捕獲しなかったから、キツネや野ウサギはいなくなってしまった」
 さらに、環境保護団体や動物愛護団体の批判が高まったことで毛皮の需要が減少。近年は取引価格が大きく下がったと悔しがる。
 引退してからは相棒の犬が一頭、そしてまた一頭と死んでしまい、最後の一頭が最近、いなくなった。雪が積もった裏庭には空になった犬小屋がそのまま残っている。
 犬ぞりで罠猟ができなくて寂しくないか、と聞いてみた。
 「まったくないね」
 パイの即答は意外だった。
 「自分ができることがどこまでなのか分かっているし、やりたいことはやった。罠猟を後世に伝える活動もあるしね」
 眼鏡の奥の瞳は、先住民の生き方を自然体で貫いた達成感に満たされているように見えた。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=201603canada-northwest0002


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先住民の絆結ぶ氷の道 イエローナイフ

2017-12-28 | 先住民族関連
時事ドットコム12月28日(木)

ノースウエスト準州の州都イエローナイフが面するグレートスレーブ湖上にできたアイスロードを走る車。【時事通信社】
 凍りついた広大な湖面に伸びるガラスの道。カナダ北西部ノースウエスト準州に点在する先住民の集落を結ぶ「氷の道(アイスロード)」だ。湿地に浮かぶ「陸の孤島」のような集落につながる道は地図にない。だが、1年のうち湖や川が凍る厳冬期の約3カ月間だけ、車が氷上を通れるアイスロードが出現する。遠路はるばる集落の親戚や友人を訪ね、絆を確かめ合う先住民にとってかけがえのない氷の道。3月上旬、ノースウエスト準州で先祖から脈々と受け継いだ文化を守る先住民の暮らしに触れる貴重な機会に恵まれた。(文:近藤真幸、写真:石原彰)
 滞在拠点の州都イエローナイフへは、飛行機で1988年に冬期オリンピックが開催されたカナダ西部アルバータ州のカルガリーを経由し約14時間。人口は約2万人で、観光や行政関連の仕事に就いている人が多い。オーロラが間近に見られる町として知られ、カルガリーからは多くの日本人観光客と乗り合わせた。
 イエローナイフが面するグレートスレーブ湖は面積2万8568平方キロ。琵琶湖のおよそ43倍にもなる巨大な湖の水面は、飛行機の窓から見渡す限り真っ白く凍りついている。そのスケールの大きさは圧巻だ。
 「マイナス17度」
 夕方、ローカル空港然としたイエローナイフ空港に到着し、機外に出る。表示板が示す気温は、イエローナイフが北極圏から南にわずか400キロしか離れていない極寒の地だと自覚するには十分すぎるインパクトがある。湿度が低く「骨まで染みる」といった寒さではないが、それでも外気に直接さらされた顔には氷点下の空気が突き刺さる。ひりひりとした痛みを感じ、小走りで暖かい空港建物の中に急いだ。
 イエローナイフの地名は、かつてこの土地に暮らしていた先住民族デネの人々が、狩猟で用いる銅製のナイフを身に着けていたことにちなんでいる。入植してきたヨーロッパ人が19世紀末に金鉱を発見し、ゴールドラッシュとなった。当時の地元作家はその様子を「黄金で通りが舗装された町」と書き残している。
 金鉱山は2004年に閉山されたが、現在はダイヤモンドが採掘され、鉱山に燃料などの物資を運ぶ大型トレーラーがイエローナイフ郊外のハイウエーを24時間中ひっきりなしに走っている。
 翌日から本格化する取材に備え、夕食に向かう。通りを歩いている人はいない。寒さで雪は解けずに残り、走っている車のほとんどが四輪駆動のピックアップトラックだ。
 ジビエ料理で有名なレストラン「トレーダーズ・グリル」で、バイソン(バッファロー)とヘラジカのステーキに挑戦してみた。バイソンは脂の少ないビーフステーキに似た味と食感だ。ヘルシーな肉として人気があるという。ミディアムレアのヘラジカ肉は、真っ赤な色をしている。柔らかい肉をかみしめると、何とも言えない独特の「獣臭い味」がする。美味しいかと言われれば、「…」。
 「今年はエルニーニョ現象のせいよ」
 ウエートレスの若い女性によると、最近までは夜間の気温が例年並みのマイナス30度程度まで下がっていたという。ところがこの数日は冷え込みが緩んでいるらしく、「マイナス17度しか下がらないのは異常だ」と当惑気味だ。
 氷点下になることも珍しい東京とは余りにも異なる感覚に驚きながら、口の中のヘラジカ肉をビールで一気に胃袋に流し込んだ。
動画 https://www.jiji.com/jc/movie?p=mov655-movie03
https://www.jiji.com/jc/v4?id=201603canada-northwest0001

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大地のへそ・ウルルを彩る光の芸術 豪州の旅

2017-12-28 | 先住民族関連
時事ドットコム12月28日(木)

世界最大級の一枚岩、ウルルを彩る光のイルミネーション「フィールド・オブ・ライト2016」=2016年3月、豪州・ノーザンテリトリー・ウルル【時事通信社】
 世界で2番目に大きい一枚岩としてだけではなく、そこで暮らす先住民の文化も魅力的な豪州ノーザンテリトリーの世界遺産「エアーズロック」。近年では中央オーストラリアに住む先住民、アボリジニのアナング族が古くから使っていた「ウルル」という名で呼ばれている。
 そのウルルの麓が、2016年4月から1年間限定で幻想的な姿を見せる。国際的に有名な芸術家、ブルース・マンロー氏によるインスタレーション「フィールド・オブ・ライト」が公開されるのだ。日没後、約5万個の色とりどりの電球に命が吹き込まれ、影が落ちたウルルと共演する光景は、今回が初お目見えとなる。
 南半球ではまだ厳しい暑さが残る3月、初秋の中央オーストラリアに飛び、その美しさと雄大さに迫った。
(時事通信社写真部・本間裕貴)
 夜10時、羽田空港からカンタス航空のシドニー行きの便に乗り込んで約9時間半。翌朝に国内便に乗り換えてさらに3時間半のフライトを経ると、シドニーから約2100キロ北西に位置する中央オーストラリアの都市、アリススプリングズに到着した。
 ガイドを務めてくれるツアー会社「ウェイアウトバック・オーストラリアン・サファリズ」のアダムさんと落ち合い、空港のエントランスを出ると、肌を刺すような熱気に襲われた。3月の中央オーストラリアは本格的な夏は過ぎたものの、まだ日中は40度近くになる日もある。湿度が低いのが唯一の救いだが、それでも数分で玉のような汗が額から流れ落ちる。
 小型バスに乗り込むとアダムさんが「水は絶対に手放すな。こまめに飲むように!」と1リットルの水が入ったペットボトルを手渡してくれた。命の水だ、大切にせねば。
 アリススプリングズは、「アウトバック」と呼ばれる砂漠を中心としたオーストラリア内陸部のうち、赤茶色の荒野が広がる「レッド・センター」に位置する。人口は約2万5000人と少なく感じるが、これでもアウトバック最大の都市である。かつて、砂漠地帯の南北の交通拠点として建設されたそうだ。
 最初の目的地は、交通事故などで母親を亡くした野生の赤ちゃんカンガルーを飼育している保護施設「カンガルー・サンクチュアリ」。舗装された道路を外れて茂みの中を少し進むと、カンガルーのシルエットが描かれた標識と赤茶色の小屋が見えてきた。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=201605ulr0001

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「JAPAN-NEW ZEALAND GEOTHERMAL WORKSHOP」開催報告

2017-12-28 | 先住民族関連
PR TIMES (プレスリリース)2017年12月27日 17時33分
 JOGMEC(本部:東京都港区、理事長:黒木啓介)、GNS Science International Limited(本部:ニュージーランド・ウェリントン地方自治区)およびニュージーランド貿易経済促進庁(本部:ニュージーランド・ウェリントン地方自治区)は、2017年11月20日(月)および21日(火)の2日間にわたり、ニュージーランド(以下、NZ)のロトルア市、タウポ市にて「JAPAN-NEW ZEALAND GEOTHERMAL WORKSHOP」を開催しました。
 今回で2回目となるJOGMECとGNS Science International Limitedとのワークショップでは、持続的な地熱資源開発を念頭にして、両国における地熱事業と温泉・間欠泉、観光、環境等に関係する分野において、双方の地熱資源開発事業者、地方自治体、研究機関、およびマオリ族関係者等、合計14名の講演者が成果や現状等を講演したほか、フィールドトリップを開催して、NZの地熱発電所、地熱直接・二次利用施設および間欠泉を訪問し、のべ100名を超える方々に参加いただきました。
 本ワークショップは、JOGMECとGNS Science International Limitedが2015年7月16日に締結した地熱分野における環境影響評価、資源調査手法の開発、探査技術の向上、貯留層維持・管理、開発地域の地元の理解促進等を含む協力分野において、双方向的技術協力を促進することを目的とした「地熱エネルギー分野での協力に係る覚書」(Memorandum of Understanding:MOU)の下、開催されました。
 NZは、地熱資源に恵まれ1950年代から地熱発電が行われており、約60年の地熱発電の歴史を有しています。我が国においても約50年におよぶ地熱発電の歴史があるものの、NZの発電設備容量は我が国の約2倍となっています。NZにおける地熱発電は先住民であるマオリ族が培ってきた温泉文化との共生を経て成り立っており、地熱発電の一次エネルギー供給割合は22%に達しています。また、地熱発電後は地域に熱供給が行われ、観光や農業など地域の産業に活用されています。
 地元住民や温泉事業者等との共生は、我が国においても地熱資源開発を促進していく上で不可欠な要素であり、本ワークショップではNZ、我が国の地熱資源開発における地熱資源開発事業者、地方自治体の持続的な地熱資源開発への取り組みに焦点をあてました。
 JOGMECでは、地熱資源開発事業者、地元住民、温泉事業者や地方自治体等と協力して、今後も地熱資源開発を一層促進するべく、活動を続けて参ります。
詳細につきましては、プログラムをご参照ください。 
日程 2017年11月20日(月)、21日(火)
場所 NZ ロトルア市(フィールドトリップ(同ロトルア市、タウポ市))
共催 GNS Science International Limited、NZTE(NZ貿易経済促進庁)
講演者・登壇者 地熱資源開発事業者、地方自治体、研究機関等
参加者 のべ100名以上
1.Day 1
 ワークショップでは、GNS Science International Limitedのイアン・シンプソン理事長やGeothermal New Zealandのマイク・アレン代表の出席の下、グレッグ・ビグナル地熱担当本部長よりNZにおけるマオリ族等の地元住民との共生に関する基調講演がなされ、地熱資源開発事業者より地熱資源開発時の地元住民への対応や直面した課題、地方自治体より政策や資源管理制度、研究機関よりモニタリング手法や環境アセス、マオリ族関係者より地熱資源開発における取組等が講演されました。
2.Day 2
 フィールドトリップでは、地熱資源開発事業者向けと地方自治体向けの2コースを設けて、ロトルア市、タウポ市の地熱発電所(Mokai Geothermal、Ngatamariki、Te Mihi)、GNS Science International Limited研究センター、Plenty Flora(ガーベラ栽培所)、Huka Prawn Park(エビ養殖場)、Arataki Honey(養蜂施設)や間欠泉を訪問しました。NZの地熱資源開発におけるマオリ族や地元住民との共生を学ぶことができ、地熱資源開発の歴史を知ることのみならず、我が国においても地熱資源開発の理解醸成を図る上で参考となる事例となりました。

マオリ族のシンボル
→全文を読む http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_06_000350.html?mid=pr_1712227
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000345.000012624.html

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