先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

文化庁長官表彰 道内からは6人

2019-03-12 | アイヌ民族関連
北海道新聞03/12 05:00
 文化庁は11日、文化振興や国際文化交流に貢献したとして、本年度の文化庁長官表彰に道内関係者6人を含む86人と3団体を選んだと発表した。表彰式は18日、文部科学省で行われる。道内関係者は以下の通り。(敬称略、アットゥシのシは小さい字)
 ▽石森秀三(73)=北海道博物館館長(札幌市)▽貝沢雪子(78)=二風谷アットゥシ職人(日高管内平取町)▽木幡サチ子(88)=平取町二風谷アイヌ語教室講師(平取町)▽小原昇(79)=国際書道協会会長(札幌市)▽津田命子(のぶこ)(73)=アイヌ服飾文様研究家(札幌市)▽中川美津江(88)=華道家(札幌市)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/285311

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文化庁、楳図さんら長官表彰選出 18年度86人

2019-03-12 | アイヌ民族関連
北海道新聞 03/11 18:37
 文化庁は11日、2018年度の文化庁長官表彰に漫画家の楳図かずお(本名・楳図一雄)さん(82)=東京都、俳優の泉ピン子(本名・武本小夜)さん(71)=静岡県、日本財団の笹川陽平会長(80)=東京都=ら86人を選んだと発表した。18日に文部科学省で表彰式を行う。
 楳図さんは「漂流教室」などヒット作品を数多く発表し、漫画賞などの審査員として後進の育成に努めた。泉さんはテレビドラマや舞台での活躍が評価された。笹川さんは長年、文化関係団体への支援に尽力した。
 このほか、デビューから60年以上活躍を続ける歌手の菅原洋一さん(85)=東京都=や、木の繊維を原料とするアイヌの伝統的な織物「アットゥシ」の作家、貝沢雪子さん(78)=北海道=らを選んだ。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/285200

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伝統料理に舌鼓 舞踊やトンコリも-アイヌ文化発表会

2019-03-12 | アイヌ民族関連
苫小牧民報 2019/3/11配信

アイヌ語の色に関する解説
 2019アイヌ文化発表会が10日、千歳市蘭越生活館で開かれた。伝統料理の試食を兼ねた昼食を堪能し、アイヌ語教室や舞踊、トンコリ演奏といった発表が繰り広げられた。
 千歳アイヌ文化伝承保存会主催。例年、固有な文化を次世代に伝承し、より多くの人に知ってもらう機会として春に開催。今回は昨年を50人超上回る約90人が参加し、関心の広がりをうかがわせた。
 昼食の献立は、シカ肉を使った汁物「ユクオハウ」や今冬行われたマレク(もり)を使った漁で仕留めたサケの干物など。発表では敬う自然と神々にささげ、さまざまなメッセージを含んだ踊りや歌が披露された。
 「アイヌ語の色」に関する講話では、日本の古代と同様の4色が基本的分類と示された。主に青を表す「シウニン」、白の「レタラ」、赤の「フレ」、黒の「クンネ」といった発音の解説があった。
 会場には技術習得者が作った見事な出来栄えの刺しゅうなど工芸品も多数展示されていた。
 小学校で文化学習している子供たちが希望して家族4人で参加した市内あずさの会社員、山口荘典(そうすけ)さん(35)は「クルミが多い場所だった『根志越』。地名の由来が聞けて面白かったです」と話していた。
https://www.tomamin.co.jp/news/area1/15851/

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デジタルアート×アイヌ古式舞踊!『ロストカムイ』上演開始

2019-03-12 | アイヌ民族関連
ストレートプレス 2019/03/11

阿寒アイヌ工芸協同組合と阿寒観光協会まちづくり推進機構は、阿寒湖アイヌシアター「イコㇿ」の演目を一新し、デジタルアートとアイヌ古式舞踊を融合した新プログラム・阿寒ユーカラ『ロストカムイ』を制作。3月19日(火)より一般上演を開始する。
「イコㇿ」とはアイヌ語で「宝物」の意味。小さい「ㇿ」はアイヌ語音を表現したものだ(英語表記はIkor)。
この新プログラムは、阿寒湖温泉のアイヌの人々が継承してきた歌や踊りなどの伝統や文化を、国内外から同地を訪れる多くの人々に知ってもらうための企画。
ヨシダ ナギ、Kuniyuki Takahashi、UNO、WOW inc.、坂本大輔(JTBコミュニケーションデザイン)といった写真やデジタルアート、サウンドデザインなどの分野で注目を集めるクリエイターが阿寒湖に集結し、アイヌ古式舞踊・現代舞踊・3DCG・7.1chサラウンドを組み合わせ、5台のプロジェクターで舞台を立体化した新演目『ロストカムイ』を制作した。
作品では、“アイヌとエゾオオカミとの共生”をテーマとした物語がデジタル技術と舞踊で立体的に再現され、自然を尊び共存してきたアイヌの人々の暮らしの中から生まれた歌や踊りなど、アイヌの世界観を存分に体感することが可能。
加えて『古式舞踊』と『イオマンテの火まつり』の演目もリニューアルし、伝統的かつ斬新な演出でアイヌ文化を紹介する。
新演目『ロストカムイ』と『古式舞踊(新版)』は3月19日(火)より上演を開始。『ロストカムイ』の当日入場料は​大人2200円・小学生600円。『古式舞踊(新版)』の当日入場料は、大人1080円・小学生600円。
『イオマンテの火まつり(新版)』は4月21日(日)~11月30日(土)の期間限定上映となり、当日入場料は大人1200円・小学生600円。
チケット購入は、阿寒湖アイヌシアター「イコㇿ」窓口および阿寒湖温泉街の旅館、ホテルのフロントにて。
アイヌ文化への国内外からの注目が集まる中、アイヌ文化に触れ、より深く理解する機会になること間違いなしだ。
■「阿寒湖アイヌシアター イコㇿ」(阿寒湖温泉アイヌコタン内)
住所:北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目7-84
https://straightpress.jp/20190311/272662

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【職人のこころ】人もクマも自然の一部

2019-03-12 | アイヌ民族関連
産経新聞2019.3.11 16:52
 亡くなった人が夢に出てきた。夢の中で「頼みたいことがある」と言う。真剣なまなざしでそう言い放つと、彼は自身の仕事場からなにやらゴソゴソと古い黄色い冊子を持ってきた。そして、その冊子を差出し、「本当のアイヌの、本当のことを伝えてくれ」と切実に訴える。藤戸竹喜さんの眼力は深く鋭く心に突き刺さる。夢の中で頼まれたことも深く心に突き刺さった。
 この夢をみた数日後にNHKのBS放送で「ヒグマを叱る男~世界遺産 知床」という番組が流れた。再放送らしい。私が生まれ育った道東の、父とよく通った知床の映像が目前に広がる。もはやテレビの映像ではなく、その中に自分がいた。
 知床のひんやりした空気や頬にしびれるような風を感じる。厳しい自然ほどすがすがしい。厳しい人との対話ほどすがすがしいように。ヒグマが歩いている。番組のタイトル「ヒグマを叱る男」らしき人がユネスコに対して訴えている。知床が世界遺産に指定された時と、話が違う、と憤っている。夢の中の藤戸さんと重なった。表情が重なったのだ。
 一瞬デジャヴかと思ったほどだ。自然を知りすぎるほど知る漁師がユネスコに話が違うじゃないかと訴えている。「ああ、この人の方が正しい」と本能がそう言っている。自然は地域によって変わる。その土地の物理現象がすべて解明できているわけはない。彼はその土地に生きてきた人からの言い伝えや自分の経験からくる動物的勘のようなものを統合している。それに勝るものはない。もしかしたら、アイヌの知見もそこにはあるだろう。
 藤戸さんは人もクマも狼もみなひっくるめて自然だと言っていた。現代科学は確かに必要だが時折、自然に対して、非情になる。自然の上に立とうとする。ヒグマを叱る男も同じことを言う。人も自然の一部だ、と。なにも特別なものではない。一言一言が腑に落ちる。漁師が少なくなった。伝統的な漁で魚を獲る昔ながらの漁師がいなくなった。魚もいなくなった。人が必要以上に獲るからだ。
 番組の中で加藤登紀子さんの知床旅情が流れる。まさに知床の漁師のことを歌ったような歌だ。ヒグマを叱る男が生活を共にしてきた仲間を失う。病に侵されて、番屋で住み続けることができなくなったので実家のある青森に帰ることになった。番屋はかつて多くの男たちであふれていた。自然とともに生き、自然に愛されていたからこそ、あった笑い顔が消えていく。薪をくべる。真っ赤なストーブにグラグラ湯が沸く。一人一人と漁師は消えていく。昔の日本人が消えていく。職人が消えていく。自然が自然ではなくなると共に生きる場所を失うのだ。
 知床でシャチの研究に来たという外国人がいた。シャチがダンスをしている。これほどまで大軍のシャチがいる知床は研究の対象として楽しみだという。アイヌは知っていた。だから、彼らをレプンカムイと呼ぶ。沖にいる神だ。彼らがいるところまでが食料が豊富だという印なのだ。だから、レプンカムイと呼ぶ。日本の漁師も漁で生活ができなくなった。
 漁師という職人が消えていく。明治の頃に。明治という時代が日本人から「自然」を奪った。
 それは狩猟の方法、漁労の方法を変えざるを得なくなったことから始まっている。自然とともに生き、自然からさまざまな生産物を得る人々がその得る方法を変えた時から、自然は自然ではなくなった。
 藤戸さんが夢でわたしにくれた冊子はアイヌの古い野菜が描かれたものだった。この番組を通して、知床の映像を通して、「本当のアイヌ」とは本当の人間の姿のことを言っていたように思う。
 事実、アイヌ語で「アイヌ」とは人間のことをいう。つまり、わたしたち日本人も含めて、昔の「アイヌ」のことを伝えてくれと言っているようだった。
 自然とともに生きていた人々。そうした温かい人がたくさんのぬくもりに囲まれて笑っている。自然は彼らに答えるように日々の糧をもたらしてくれる。そうした時代があったのだと。きっと失われていくものの大切さを知るのは本当に失った時なのかもしれない。しかし、完全に消えてしまう前に、消えようとしている火に少しでも空気を与え、力を与えてくれ、と言っているのかもしれない。
<プロフィール>
 井戸理恵子(いど・りえこ) 民俗情報工学研究家。1964年北海道北見市生まれ。國學院大学卒。多摩美術大学非常勤講師。ニッポン放送「魔法のラジオ」企画・監修。ゆきすきのくに代表として各種日本文化に関わるイベント開催。オーガニックカフェ「ゆきすきのくに」にて自然食を提供。二十数年来親交のある職人たちと古い技術を訪ねて歩く《職人出逢い旅》など15年以上に渡って実施中。気心しれた仲間との旅をみな楽しみにしてくれている。主な著書に「暦・しきたり・アエノコト 日本人が大切にしたいうつくしい暮らし」「こころもからだも整うしきたり十二か月」(ともに、かんき出版刊)、「日本人なら知っておきたい!カミサマを味方につける本」(PHP研究所)などがある
https://www.sankei.com/life/news/190311/trv1903110002-n1.html

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台湾キヌア、日本にアピール TAITRA 食物繊維やアミノ酸豊富

2019-03-12 | 先住民族関連
サンケイビズ2019.3.12 05:00
 台湾の先住民族により栽培され、栄養価の高い雑穀「台湾キヌア」が注目されている。台湾貿易センター(TAITRA)は、8日に閉幕したアジア最大級の食品・飲料専門展示会「FOODEX JAPAN 2019」に出展するなど、日本関係者にアピールしている。
 台湾キヌアは通常のキヌアよりも食物繊維やアミノ酸を豊富に含む。生育して穂が出てくると赤やオレンジなどに色づくことから、「穀物界のルビー」と呼ばれている。台湾では、会員制交流サイト(SNS)映えする素材としても人気があり、白米と一緒に炊く食べ方が流行している。
 同展示会で行われた記者発表会では、料理研究家の井沢由美子さんが、台湾キヌアに和風の味を加えた創作料理「台湾キヌアと桜海老の散らし寿司」を披露。井沢さんは「雑穀米とあわせて炊いたり、コロッケや煮物と混ぜてお肉の代わりに活用したりするのもお薦めです」と話した。
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/190312/mcb1903120500004-n1.htm

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日本語と日本語教育をどのように守るべきか

2019-03-12 | 先住民族関連
JBPRESS2019.3.11(月) 伊東 乾
言語問題、あなたは「反日」?
皆さんは、ご自分の、あるいは皆さんのお子さんの「進学」をどのような観点からお考えになりますか?
 もっと分かりやすく言うなら、大学で学ぶということを「就職」とどれくらい関係づけて考えておられますか?
 例えば、息子さんが「インド哲学をやりたい」などと言ったとして、親御さんはどのように反応するか?
 「それは素晴らしい、深いテーマだ。頑張りなさい!」と言うか。それとも、「そんなものやっても就職先がないから、やめなさい」とたしなめるか・・・。
 こうした観点で、大変切実な問題がオランダで発生しました。
 同国のトップ大学、アムステルダム自由大学が、オランダ語の学部学生募集を停止(https://www.universityworldnews.com/post.php?story=20190301125347590)したのです。
 もし、東京大学が、日本語やその古典研究を「ペイしないから」と全面廃止してしまったら、いったい今日の日本社会はどのようなリアクションを示すでしょうか?
人類最高の叡智を支える言語
 アムステルダム自由大学とは個人的に長い縁があります。私は一個人の作曲家、演奏家として同市内にあるアンネ・フランク・ハウスとのコラボレーションを長年続けています。
 その国際教育部長ヤン・エリック・ドゥッベルマンの奥さん、ディーンケ・ホンディウス=アムステルダム自由大学史学科教授とも共同のプロジェクトを持っています。
 ディーンケさんは黒人奴隷流通史の専門家で、かつてアメリカ新大陸開拓初期、現在のニューヨークがニューアムステルダムと呼ばれた時代から、複数の大陸間で取引された奴隷貿易を研究する第一人者です。
 ちなみに、現在のニューヨークは、オランダ東インド会社が送った探検隊が発見しました。
 ハドソン川中域に丘の多い具合の良い島を見つけ(マンハッタン島:マンハッタンとは丘が多いという意味の先住民族語とのこと)、防御のために壁をたくさん造って(ウオール街)建設したオランダ植民地の中心街を「ニューアムステルダム」と名づけました。
 ここが「ニューヨーク」になるのは、第2次英蘭戦争(1665~67)でオランダが英国に負け、これらの植民地がヨーク公(のちのイングランド王ジェームズ2世 1633-1701)の所領となったからです。
 以後、第3次英蘭戦争で一時期奪還されますが1674年のウエストミンスター和約で英国領となり、以後は英国植民地として米国東海岸は発展します。
 米国がイングランドからの独立を勝ち取るべく戦争を起こすのは1775~83年と、約100年後のことで、この間に新大陸先進圏の共通語は、産業革命に先んじた英語で定着、21世紀の今日、第1の国際共用語として通用する基礎の一端となっています。
 翻って、日本の海外文明受容はどうだったでしょうか?
 17世紀前半、徳川幕府は鎖国政策を断行し、欧州とのやり取りはオランダのみに限られました。理由は、プロテスタントのオランダが、スペインやポルトガルのように布教を通じた植民地拡大を図らなかったからにほかなりません。
 オランダ人は、日本を植民地とするのではなく、日本の特産物を欧州に持ち帰り、その付加価値でビジネスすることを考えました。
 私のルーツである佐賀、有田や伊万里の磁器は世界に冠たる水準を誇りましたから、鉄砲伝来で対日航路が開けた16世紀中葉から、オランダ人はそれを持ち帰り、欧州で売ることで、莫大な利益を得ることになります。
 白磁は「白いダイヤモンド」と呼ばれました。
 やがて、単に物流で差益を得るだけではなく、オランダ人自身も同様の焼き物を作れないか、というイノベーションの気質が高まります。
そのようにして1580年代以降、極東の陶磁器技術を欧州に従来からあるファイアンス焼きと融合させる「デルフト焼き」が工夫されます。
 中国や朝鮮、日本からの陶磁器は圧倒的な貴重品で、その高度な職人技芸は長らく欧州の追随を許すことがありませんでした。
 また、東アジア側でもオランダ語を通じて西欧の文化を吸収していきます。
 プロテスタントのオランダでは、ローマ・カトリックが禁圧した地動説に基づく科学書の出版が認められ、羅針盤をはじめとする高度な航海技術も確立されました。
 1600年代初頭に始まるケプラーらの新しい暦法はほとんど時差なく日本にもたらされます。西欧由来の暦法はその正確さが評価されて日本でも応用され、貞享暦(1684)以後の暦法として定着します。
 ちなみにこの時代を生きた近松門左衛門は浄瑠璃「賢女手習並新暦」を残しています。
 さらに寛政暦(1798)以降では楕円軌道法が採用されました。
 伊能忠敬の日本全図(1800~15)は、当時のこうした世界最先端、人知の最も優れた成果を反映して作成されたもので、のちに英国海軍が驚愕、対日政策が改まり、明治維新から日英同盟に至る歴史を決定づける一因にもなったと考えられます。
 こうした人類最先端の叡智を、江戸時代の日本人は主としてオランダ語で、しかし後には英語でも輸入するようになります。
 例えば親藩の岡山、津山藩では洋学が盛んで、初期には蘭学が、また開国前後からは英学など欧州諸言語での学問百般が輸入、咀嚼され、近代日本の基礎を準備します。
 津山出身の箕作麟祥(あきよし)や菊池大麓らは維新後の1873(明治6)年・・・この年、日本はグレゴリオ暦が導入されて、完全な近代暦制となりますが・・・に「明六社」を結成、1877年に創設された東京大学では最初の日本人教授陣として指導にあたります。
 菊池は理化学研究所の初代所長、東京大学、京都大学双方の総長、文部大臣なども歴任しています。
 それくらい、その時代で人知の最高水準を担う言語は決定的な意味を持つわけですが、オランダ語はすでにその役割を果たさなくなって久しくなってしまいました。
運営するだけ赤字が増える
 アムステルダム自由大学のスポークスマン ヴェッセル・アフターホーフ氏は、「運営すればするほど、赤字となる」と、オランダ第1の大学がオランダ語コースを閉鎖する背景を述べています。
 ここ数年、志願者が激減し、過去10年で60%の減少、今年は5人の入学希望者しかいなかった。「国文科」の教授数の方が志願者よりも多くなってしまうことになり、コース閉鎖が決定されたとのこと。
 「学生1人当たり、教員1人の給与を政府が負担するわけではない」という分かりやすい理由で、今後成長が望めず、コストばかりがかさむ「国文科」の閉鎖が決定されたというのです。
 もちろん、激しい批判の応酬があります。冒頭に引いた報道リンクで同大学のジョン・コッペンホール=オランダ文学科教授は「ただごとでない遺憾な事態」とコメントしています。
 「私たちは母国語について議論しているのであって、それは私たち自身の文化の理解に本質的で、継続することそのものが極めて重要なのである」と。
 ここで皆さん、考えていただきたいのです。
 例えば「源氏物語」の研究を、あるいは古代日本史の実証的な研究を、東京大学がやめてしまったら?
 あるいは「国文学」(「日本語学」)の学部レベルでの教育・人材育成を、我が国の主要な大学が停止してしまったら?
 どうでしょう。源氏物語を研究したからといって、それで就職に有利になるというようなことがあるのか。私にはよく分かりません。
 しかし、少なくとも古代王朝の正統論争や、古墳から出土する鉄剣文の解読などが、年収の良い仕事に繋がるなどとは到底思えません。
 そういう「人気のない専攻」は、維持すればするほど赤字がかさむから、経営判断でやめてしまった方がよいのでしょうか?
ちなみに・・・日本の事例で考える
 日頃、とても「国家的」な話をされる方が、こういうところではいとも簡単に「経営的」な意見を開陳するのを目にして、私はしばしば驚嘆します。
 当然ながら、こうした基礎的な人材育成を一国の中核的な教育機関が手放してしまう あるいは廃止することに対して、私は徹底的に批判的、反対です。
 個人名を伏せますが、かつて1回目の「共通1次テスト」が実施されたとき、全国1位だった高校3年生は、東京大学「理科Ⅲ類」ではなく「文科Ⅲ類」に志望を出願しました。
 この生徒は私の母校の先輩にあたり、こうした事情を当時の恩師である校長(故・大坪秀治先生)からうかがいました。
 「(全国1位の学生が)理Ⅲ(医学部)に出願せず、文Ⅲに出すというのは、理と文を間違えているのではないか?」
 「本当に文Ⅲなのか?」
 「せめて文Ⅰでは?」
 「もったいない」
 ・・・といった意見が、校長会のような場で矢のように出され、上記の母校校長(大坪先生)は烈火のごとく怒って大演説をされたそうです。
 なぜ「点が高い」と「医学部」や「法学部」でないと「もったいない」のか?
 この生徒は、当時から歴史を専門とすることを心に決めており、実はクラブの先輩として私も知る人でしたので、裏話を聞いたのは30年近く経ってからでしたが、そりゃそうだろうと大いに首肯しました。
 この「第1回共通1次試験全国第1位」の学生は、現在は国史・東アジア古代史の分野に関わる人であれば誰もがその名を知る碩学となっておられ、東京大学文学部教授として後進の指導に当たってもいます。
 例えばこういうキャリアパスを、つまらない経営判断で潰してしまうと、二度と元に戻すことはできません。
 学術は、学術それ自身の価値において研究・教育を徹底すべきである、と私は考えます。その時々でどのようにでも変化してしまう、市場価値やら人気やらで、フラフラすべきではありません。
 上に記した。医学や法律学でさえ、そうでしょう。人気その他で内容がどのようにでも変化して、人の命が救えるか、正義を全うすることができるか・・・。できるはずがありません。
 オランダ、アムステルダム自由大学の「国文廃止」の決定は、極めて遺憾なものと言わざるを得ません。
 市場価値的な人気でふらついてはいけない価値のために、官費つまり税金を原資として、研究教育機関の独立性を確保する必要があると言わねばならないでしょう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55698

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IWC脱退・商業捕鯨再開と日本政府の「説明責任」

2019-03-12 | 先住民族関連
ニッポン.コム3/11(月) 15:08配信
ドキュメンタリー映画『おクジラさま』で、捕鯨問題から見える世界の分断の構図を描いた佐々木芽生監督。国際捕鯨委員会(IWC)脱退を表明した日本の今後の対応について、「脱退と商業捕鯨再開の理由を『伝統論』に逃げることなく丁寧に説明していくべきだ」と指摘する。
【佐々木 芽生】
2018年12月26日、菅義偉官房長官が談話という形で、日本の国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を正式に発表した。脱退が有効になる19年7月1日以降に、日本は排他的経済水域(EEZ)内で商業捕鯨の再開を目指すという。
日本がIWCを脱退すると聞いて、最初は「まさか」という驚きがあった。日本は「和をもって尊しとなす」の精神で、国際社会でも独自路線を歩む道を選択するとは思えなかったからだ。国内からは、「短慮に過ぎる」「トランプに倣って自国優先主義に走るのか」「もっと粘り強く交渉を」という厳しい声が相次いだ。これまでは、国内世論もメディアも捕鯨擁護の論調が強かっただけに、一変したのは意外だった。
感情的対立で機能不全に陥ったIWC
私自身は、IWC脱退は賢明な選択だと思っている。なぜなら、IWCは国際機関として機能不全に陥っているのが明らかだからだ。これまで3度総会を取材したが、感情的な対立ばかりが目立ち、お互いに歩み寄り、合意に達することができない。このような膠着(こうちゃく)状態から一歩も踏み出すことができない国際機関が存続していること自体が驚きだった。
IWCは、国際捕鯨取締条約の実行母体として1948年に設立された。捕鯨国が集まって「『鯨資源の保存』と『捕鯨産業の秩序ある発展』を図る」、つまり「持続可能な資源管理をして、みんなで末永く捕鯨を続けよう」がその目的だった。しかし今は当初の目的とは正反対の方向へかじを切っている。加盟国の状況だけを見ても明らかだが、加盟国89カ国(2018年のブラジル・フロリアノポリスでの総会時点)のうち、捕鯨国は日本、ノルウェー、アイスランドの3カ国のみ。このほか米国のイヌイットのように捕鯨をする先住民らを抱える国が4カ国。残りの82カ国は捕鯨とは無関係で、モンゴルやオーストリアのように海に面していない国さえある。クジラを資源として持続的に利用したい、つまり捕鯨賛成側(約40カ国)と、クジラをできるだけ殺さずに保護したいという反対側の両陣営に分かれて、実りのない議論が何十年も続いてきた。
今回のIWC脱退について反発が起きたのは、一部の政治家による強引な判断がベースになっているという唐突感があったからかもしれない。しかし脱退を正式に決定するまでには、「何段階ものプロセスと5年近い準備期間があった」と、東京海洋大学教授の森下丈二氏は言う。森下氏は、IWCの科学委員会や総会に日本政府代表として30年近く参加し、捕鯨論争の最前線に立ってきた。
これまでIWCの膠着状態を打開しようという提案が何度か出され、和解が試みられたが、全て失敗に終わっている。クジラを持続的に資源として利用しようという国々がいて、もう一方では捕鯨は悪だとして、1頭も捕らせないというグループがいる。正常に機能している国際機関であれば、歩み寄って妥協案を作るが、IWCではそれが不可能な状況だ。なぜかと言うと、森下氏によれば、反捕鯨国にとって、「交渉で少しでも捕鯨枠を認めるのは、テロリストと交渉して彼らの活動を認めることに近い感覚」だからだ。「テロリストとは交渉しない」と言われるように、捕鯨賛成の日本と交渉して少しでも捕鯨を認めたとなれば、「交渉担当者が解任されるか、政府が世論やNGOから批判を浴びることになる」と森下氏は言う。だから「なぜ反対するのか」という突っ込んだ議論をオープンにしようとしても、それさえ拒絶されるのだ。
“クジラ保護仲良しクラブ”の中で「共存提案」は否決
長年の経験を経てこうした状況が分かったので、日本政府代表は2018年ブラジルで開かれたIWCで最後の切り札とも言える斬新な提案をした。それは、捕鯨に対する全く違う考え方を持つ2つのグループが、一つ屋根の下で共存するための模索だった。IWCに2つの下部委員会を作り、片方は「持続的保護委員会」(捕鯨賛成派)、もう一方は「保護委員会」(捕鯨反対派)として、それぞれが決めたことを総会で共有し、尊重するが「基本的には互いに邪魔をしないという『共存提案』」だ。つまり総会はあくまでも決定の確認の場にとどめ、全体としての決議は行わない。一方ホスト国で急進的な反捕鯨国のブラジルは、日本に対する反対声明ともいえる提案をした。「国際捕鯨委員会は進化した。今後はクジラの保護のために頑張ろう」という内容の「フロリアノポリス宣言」。結局この宣言が可決されて、日本の「共存提案」は否決された。
この総会で半世紀ぶりに日本から選ばれて議長を務めた森下氏は、IWCがすっかり変質してしまった現実が改めてはっきりと見えたと言う。以前は科学委員会が提示したデータを元に、けんけんごうごう議論する場面もあったが、今やIWCは反捕鯨国側が占拠して、和気あいあいとした雰囲気で「クジラ保護仲良しクラブ」と化したと感じたそうだ。
かつて私が取材した時には、まだピリピリとした対立の雰囲気があった。それさえ感じられなくなったIWCで、日本がどんなに粘って交渉しても、らちが明かないだろう。「脱退」という選択しかないという判断は、納得できる。
「捕鯨は日本の伝統」は通用しない
今後、国際社会から日本が捕鯨問題で理解を得るのは至難の業だ。今まで、日本側から有効な情報発信ができなかったのは、大きな敗因と言える。IWCを取材した際に、日本政府が開くプレス向けのブリーフィングには日本人記者しか入れず、ブリーフィングは全て日本語だった。外国のメディアからは、日本の政府代表にインタビューを依頼しても断られた、という不平が聞こえてきた。一方、反捕鯨国やNGOの代表者にカメラを向けると、皆喜んで取材に応じてくれる。これでは、日本に都合の悪い捕鯨反対のメッセージだけが拡散するのも仕方ないだろう。
そして、日本がなぜこれだけ国際社会から批判されながらも捕鯨を続けるのか。その理由を納得行く形で示す必要があるだろう。「捕鯨は日本の伝統」では、全く説得力がない。欧米人と日本人では「伝統」に対する考え方が違う。彼らは長く続いてきた「伝統」が今の時代に合っているかを精査し、合わないと判断すると撤廃する。だから、「捕鯨も奴隷制度や切腹と同様、時代遅れの野蛮な伝統なので、撤廃せよ 」と一言で片付けられてしまう。
伝統論ではなく、宗教に基づく日本人と欧米人の自然観の違い、人間と動物との関係性の違いを示し、日本人にとって捕鯨は何を意味するのか、捕鯨を長く続けてきた地域にとっては、食や経済を越えてアイデンティティーであり、誇りであることなどを丁寧に説明すべきだ。捕鯨論争は、「情報戦」の一面を持つ。日本の対外的なイメージに、深刻な影響を及ぼす問題なのだから、政府は専門家を雇ってしかるべきPR政略を練る必要があるのではないか。
批判を恐れずに発信を続けることが大事
2018年米国でドキュメンタリー映画『おクジラさま』を劇場公開した時、予想以上に好意的な受け止め方が多かった。映画は、和歌山県太地町という人口3000人の小さな漁村が舞台。ここで400年以上続く捕鯨に反対して、大勢の外国人活動家がやって来ては町に波紋をもたらす様子を描いた。
映画を見た人たちは、「イルカやクジラを捕ってほしくないという気持ちは変わらないが、自分たちも牛や豚などを大量に殺して食べている。日本の小さな村に行って自分たちの価値観を押し付け、彼らがクジラを殺すことを『野蛮だ』と言うのは間違っている」といった意見が多く出され、今までとは違う新しい視点を歓迎してくれた。情報さえあれば、アメリカ人も考えてくれる。批判を恐れずに、発信していくことの大切さを再認識した。
捕鯨問題は、クジラを捕るかどうかだけではなく、多くの問題を象徴している。人口が増加の一途をたどる中で、誰が、何を基準に、何を食料として利用して良いか悪いかを決めるのか。グローバルな価値観が世界の隅々まで押し寄せている今、それに反する地域の文化や伝統をどう扱うべきか。守るべきはグローバル・スタンダードか、地域性か。
私たちは、人種や宗教、国民性の違いなどによって、みな違う価値観を持って生きている。違う価値観を理解し同意できなくてもいい。ただ「違う」という事実を受け入れ、「違い」を排除するのではなく、共存していかなければならない。それが多様性(ダイバーシティ)を認めることだと粘り強く説明し、対話を続けて行くべきだ。IWCでの「共存」は実現できなかったかもしれない。しかし、現実社会では、時間をかけながら少しずつ理解を求める努力を怠ってはならない。
(2019年3月 記)
【Profile】
佐々木 芽生 SASAKI Megumi
映画監督・プロデューサー。北海道札幌市生まれ。1987年より米ニューヨーク在住。フリーのジャーナリストを経て、1992年よりNHKアメリカ総局勤務。その後独立して、テレビの報道番組の取材、制作に携わる。2008年、初の監督作品『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』、13年、続編『ハーブ&ドロシー2 ふたりからの贈りもの』を発表。16年、3作目にあたる長編ドキュメンタリー映画『おクジラさま~ふたつの正義の物語』完成。釜山国際映画祭はじめ多数の国際映画祭に正式招待され最優秀作品賞など多数受賞。日本では17年公開、書籍版『おクジラさま』は、18年科学ジャーナリスト賞受賞。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190311-00010001-nipponcom-pol

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