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『ゴールデンカムイ』アイヌ文化の解説本発売 「オソマ」など漫画の名場面も説明

2019-03-15 | アイヌ民族関連
北海道新聞 03/15 00:00

 人気漫画『ゴールデンカムイ』でアイヌ語監修を務める文化研究の第一人者・中川裕氏が、漫画の名場面を引用しながらアイヌ文化の解説を行った同作の公式解説本『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』が15日、発売された。同作の作者・野田サトル氏によるオリジナル描き下ろし漫画も掲載している。
『ゴールデンカムイ』は明治時代の北海道を舞台にし、アイヌが遺したという大金を手に入れるため、元兵士の杉元佐一がアイヌの少女・アシリパと行動をともにし、一攫千金を夢みるサバイバル漫画。2014年から『週刊ヤングジャンプ』(集英社)で連載中がスタートし、その後アニメ化もされ、『マンガ大賞』など数々の漫画賞を受賞している。
 発売された公式解説本は序章から終章を含め第10章で構成されており、「アイヌの先祖はどこから来たか?」「アシリパたちの言葉 アイヌ語とは」「アイヌ語監修というのは何をやっているのか?」など、アイヌ文化へ興味を抱いた人に向けた一冊となっている。
 例えば原作で人気があるシーンで、アシリパが初めて見た味噌を「オソマ」と呼ぶ場面では、「こういった話は実際に起こりえたのか」などの疑問に触れている。
 また、野田氏による6ページの描き下ろしオリジナル漫画も収録されており、中川氏によるアイヌ文化の解説に絡んだストーリーとなっているほか、付録で『ゴールデンカムイ』をより楽しむためのブックガイドが収録されている。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/286493

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サハリン先住民族 文化伝える 南部に観光施設 森で犬ぞり体験も

2019-03-15 | 先住民族関連
北海道新聞 03/14 05:00
 【ユジノサハリンスク細川伸哉】ロシア・サハリン南部のコルサコフ(大泊)に、犬ぞりなどサハリンの先住民族文化を伝える観光施設が登場した。サハリンではかつて樺太アイヌ民族などが犬ぞりを移動の手段としていたが、現在はほぼ姿を消しており、設立したアレクセイ・トカチェンコさん(28)は「犬ぞりの楽しさを通じて先住民族の文化を伝えたい」と意気込んでいる。
 コルサコフ出身のトカチェンコさんは、ロシア政府が極東地域の定住促進を目的に2016年に導入した「極東ヘクタール」制度で郊外の1ヘクタールの土地を無償で譲り受け、昨年末から営業を始めた。約500万円の自己資金で、先住民族の住居を模した小屋や犬の飼育施設を手作りした。
 サハリンでは、樺太アイヌ民族やニブフなどの先住民族が、南極観測隊で活躍したタロ、ジロでも有名な「樺太犬」を飼育し、犬ぞりは暮らしの一部だった。施設名は「アイナ・ツアー」。トカチェンコさんは「犬を大切にしていた樺太アイヌ民族に尊敬の念を抱いた」といい、「アイヌ」を由来に名付けた。
 シベリアンハスキーや、シベリア北東端のチュクチ半島で伝統的に飼われている犬種など34匹を飼育。4時間の体験ツアー(日本円で約9千円)では、ニブフの踊りや語りを披露し、近くの森に設けた約3キロのコースで犬ぞりに乗ってもらう。施設で働くニブフ女性のナジェズダ・サメンコさん(39)は「サハリンに先住民族の文化を伝える場所は少なく、うれしい」と話す。
 トカチェンコさんは今後、先住民族の伝統料理の提供などを計画。サハリンで犬ぞりレース開催も夢見ており、「犬ぞりは冒険性と自由さが魅力。航路でつながっている稚内など北海道の犬ぞりの使い手とも交流したい」と話している。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/286115

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「正しいとされるあらゆるものから自由になりなさい!」──女優サルマ・ハエックからのメッセージ。

2019-03-15 | アイヌ民族関連
VOGUEMARCH 14, 2019
性差別に人種差別、そして年齢に対する差別も乗り越え、サルマ・ハエックは、持ち前のバイタリティとスマートさを盾に、30年にわたってハリウッドを駆け抜けてきた。最新作『ザ・ハミングバード・プロジェクト』(2019年)の公開が控える中、トランプとワインスタインという二人の男、ドラッグと汚職にまみれた故郷メキシコ、そして自身の揺るぎない信念について、赤裸々に語ってくれた。

サルマ・ハエックは私のことを、ちょっとかたすぎると思ったのかもしれない。はっきりと口に出すことはなかったが、片手にタバコ、もう片方の手にグリーンジュースを持って私の前に立ちはだかったハエックは、「あなたに必要なのは」と切り出した。
「もっとダンスをして、もっと愛し合うことね。セクシーなランジェリーを買うといいわ」
私がフェミニストとして、「セクシー」という考えにジレンマを感じていると認めたところ、ハエックは、人差し指を左右に振りながら、私にこうアドバイスした。
「ひとりのときに大笑いして、ダンスして、歌うといいわ。オペラを歌ってみたら? ハメを外すのよ」
ロンドン北部のハエックの自宅を訪れた私は、豪華なソファに座っていた。グッチの教会風のアニマル刺繍クッションに囲まれて、ハエックは、私の新たな神託者だと考えていた。大げさではない。世の中でもっとも融通の利かない旧態依然としたハリウッドで、性差別と人種差別(おまけに年齢差別)の猛攻をくぐり抜けてキャリアアップを成し遂げてきたハエックなら、人生の教訓をたくさん授けてくれるにちがいない。
現在52歳のハエックは、女優としてテレビ界と映画界で30年以上にわたって活躍してきた。試行錯誤の苦難に満ちたハエックのキャリアは、最近になって、ようやく焦点が絞られてきた。これまでも彼女は声を上げてきたが、トランプにブレグジット(BREXIT=欧州連合からのイギリス脱退)、ハーヴェイ・ワインスタイン、そしてアメリカとメキシコ国境の壁問題が取り沙汰される今の時代だからこそ、世の中は、彼女の声に耳を傾ける。
「私は虐待を乗り越えてきたわ」
ハエックは、視線をそらさずに語る。
「とても深いところで乗り越えた。でも、注目を集めるために、自分の悲しいストーリーを利用したいと思ったことは、一度もなかった。私のことを考えた人や、私のことを見た人に、誰でも乗り越えることができると思ってほしかった。無限の可能性があることを、皆に思い出してもらいたいの」
「セクシーキャラを作り上げたの。ハリウッドに入り込むためにね」
ハエックの豪邸には生花があふれ返り、たくさんのアート本やジェフ・クーンズの作品の数々、階段には、ダミアン・ハーストの作品が飾られている。その雰囲気に浸りながら、ハエックが、実際何を乗り越えてきたのかと人は不思議に思うのも、わかる気がした。ハエックは女優でプロデューサー、活動家であり、2009年に、フランス人ビリオネアのフランソワ・ピノー(ラグジュアリーファッションブランドを抱えるコングロマリット「ケリング」のCEO)と結婚した。私が彼女の自宅を訪れたとき、ハエックはお尻の部分に「GOOD KARMA」(良いカルマ)と書かれたスエットパンツをはいて現れた。完全なすっぴん状態で、実際の年齢よりも軽く20歳は若く見える。ハエックは、思い込みにもとづいて自分のことを決めつけてくる人には慣れている。
「偏見は、異物への不快感ね。私は大きな成功を収めた男性と結婚生活を送るようになった。そのことに対しても、偏見を感じるの。私を劣った人間だと見下したかと思うと、今度は、優越感を感じている人間だと思われる。どちらにしても、人は嫌がるってわけ! 奇妙なことだけど、気にしないわ。私は納得して受け入れたから」
ハエックは、メキシコのベラクルス州の恵まれた家庭出身であることを否定しない。母親はオペラ歌手、父親は石油会社の重役だった。23歳のときに、メキシコのメロドラマ『テレサ』で主人公テレサ役を演じ、全国的に名前が知られるようになった。国際的に活躍する女優になろうと、大きな夢に向かって果敢に歩みだしたとき、見えないガラスの天井にぶち当たった。2003年の『ヴァニティ・フェア』誌のインタビューで、ハエックは、ハリウッドの映画会社の上層部から「生まれる国を間違った」、ハエックの発音が「人々にメイドを思い起こさせるから、アメリカでは主演女優に決してなれないだろう」と言われた、と語っている。当時、あらゆる否定派を納得させるために「私は、彼らの性差別を利用して人種差別と闘ったの」とハエックは言う。
「だから、このセクシーキャラクターを作り上げたのよ。『ハリウッド』が受け入れることのできるキャラクターをね。そうやって私は、ハリウッドに入り込んだ。私は状況を理解しながら、この方法を選ぶとき『私は自分の値打ちを下げている?』と自問したわ。枕営業はしなかった。これが、理解してもらえることだったというだけ。私にこのセクシーさがあれば、観客は私に興味を持ち、スクリーン上での私の発音を受け入れられるだろうと思ったの。そうすれば、ハリウッドの否定派に理解してもらえる。だから、セクシーキャラクターを『やる』と決めたの」
「強い女」の勇敢な改革。
ハエックは、「セクシーガール」の役を手に入れるたびに、きめ細かにキャラクターをつくり込み、手に入れた役の限界を押し広げた。
「ちょっと知性を加えさせて、と言えば、『知的さはいらない、この役に知性は必要ない、外して』と言われる。ちょっとコメディを付け加えさせて、と言えば、『面白すぎる、この男より面白くなっちゃいけない』と言われる。じゃあ、あたたかみか人間らしさを加えさせて……。こうして、1つ2つのシーンに何かを付け加えることができる限り、そうしたわ。今でもやってるかって? もちろんよ。でも、本当にかなり進歩した。プロセスなのよ。改革はシンプルには進まないものね」
こう言って、ハエックは賢者のように微笑んだ。もちろん、今では役柄は変わった。作品を観れば、ハエックを念頭に置いて書かれた脚本であることがわかる。事実、最新作『ザ・ハミングバード・プロジェクト(原題)』のキム・グエン監督は、彼女を想定してこの役を書いている。本作では、アレクサンダー・スカルスガルドとジェシー・アイゼンバーグと共演し、シルバーヘアの極悪大物トレーダーのエヴァ・トーレスを演じた。ハエックは説明する。
「私は、ニューヨークで強大な権力を持つ女性を演じた。最先端テクノロジーを使ってお金を盗むの。以前なら、この役は絶対手に入らなかった。脚本が書かれた時に、この役が女性だったかは知らないけど、ラテン系でなかったことは間違いないわ。だから、グエンが私のために書き換えたの。今では、私はラテン女というよりも、強い女性として見られる傾向があるわ」
トランプとワインスタイン。
この『強い女性』のイメージが確立したのは、わずか1年ほど前のことだ。ハエックは、映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインから何年ものあいだ受けた、ひどいセクハラについて『ニューヨーク・タイムズ』に(一気に手書きで書き上げた)告発文を寄稿した(現時点まで、ワインスタインはその疑惑を否定している)。いうまでもなく、ラテン女性がハリウッドで手に入れられる役に明らかに不満を感じていたハエックは、構想段階から10年かけて、メキシコ人画家フリーダ・カーロの伝記映画『フリーダ』を自らつくり上げた。その過程でハエックは、アカデミー賞に多数の作品をもたらしたことで有名なワインスタインにプロジェクト参加を打診した。この時、ハリウッドの女性蔑視を非難することを狙ったハエックの映画に、映画業界最悪の性犯罪疑惑のある人物を引き入れることになるとは思いもよらなかった。
「彼は何であんなことをしたのかって? あらゆる独裁者が権力を乱用するのと同じ理由よ。どうしてそうするかというと、『できる』からよ。私たちが、そうすることを許すからだわ。トランプもワインスタインも、強烈なカリスマ性を持ち、愛され、尊敬されることに固執した男性よ。彼らは『私を絶対的に愛さないなら、代わりに私を嫌うだろう』と極端な思考を持っていると思う。彼らが権力を持ったとき、そこに脆さというか、とても危険なものがあるわ」
トランプとワインスタインは、ハエックの前に立ちはだかった。
「あの2人の愛し方は、あなたや私とは違う。彼らは必死なの。『私を愛さないならお前を破壊する。私を愛しても破壊するけど、少しはマシだ』ってね」
「彼が、自分以外に何を愛しているのかわからない」
さまざまなアルコールの瓶が並ぶバーカートからメスカルを選び、私に勧めながら、「ハーヴェイの場合……」とハエックは続ける。
「彼は映画を愛していたわ。一方のトランプは、自分以外に何を愛しているのか私にはわからない。トランプを動かす外部の力、インスピレーションの源が何か、私は知らないから。トランプのストーリーや生活の中に、彼以外の何かとのラブストーリーは見えない。だからといって、トランプがその対象を持ってないという意味ではないけれど。私にはわからないだけ。ハーヴェイは、明らかに持っていたけれど」
アメリカ大統領のメキシコに対する外交政策を考えるとかなり皮肉なことだが、トランプは以前、恋人のいたハエックに自分と付き合うように執拗に迫ったことは有名だ(以来、何度か二人は出くわしたが、「私たちは何もなかったように振る舞った」という)。最近のハエックは、トランプの人種差別的発言を声高に批判する立場を取っている。インスタグラムにトランプのピニャータを投稿したり、彼女の友人のメキシコ人監督アルフォンソ・キュアロンが『ROME/ ローマ』(2018年)でアカデミー賞3部門を受賞したタイミングに合わせ、「メキシコがアメリカに国民を送るとき、最高の人物を送り込んでいない」と力説したトランプのスピーチをリツイートしたりしている。
それでもメキシコ愛は変わらない。
今年のアカデミー賞でのメキシコの評価について話しながら、『ROME/ ローマ』で主演して一躍有名になったヤリッツァ・アパリシオについて、「とても純真な美しさがあるわね」と語る。
「アパリシオは興味深いアカデミー賞候補者なの。本当に好意的な人もいる一方で、彼女をよく思わない人から数多くの攻撃を受けていると、友人たちから聞いたわ。彼女が先住民族の出身であることを理由に、からかう人もいる。メキシコでは、メキシコ人に対する人種差別が大きな問題なの。だから、彼女のノミネーションは、3部門受賞以上の大きな偉業よ」
ハエックは、メキシコへの愛国心を持ち続ける。思うようにメキシコを訪れることはできないが、Netflix向けの番組製作のために、近々メキシコに戻る予定だ。ハエックは、母国とのつながりをはっきり感じるという。メキシコの政治問題からも目をそらさない。
「アカデミー賞でのメキシコの評価は、本当にすばらしいエネルギー源よ。でも、メキシコの治安問題や安全問題、暴力は変わらない。問題は、単に薬物の問題や麻薬カルテルだけではない。そのほかにも、数多くの集団が存在するし、マフィアがはびこっている。たとえ多くを持たない人からでも、人々が一生懸命に手に入れたものをどうやって奪おうかと、皆が考えている。しかも、とても暴力的な方法でね。それ以上にひどいのは、汚職ね。権力を手に入れて、何も持たない人からすべてを奪い取るのよ(筆者注:ハエックが語っているのは、2010〜2016年にメキシコのベラクルス州知事だったハビエル・ドゥアルテのことだ。国家当局が没収した資産と現金は約1億2000万ドルとも言われている。2018年に組織犯罪とマネーロンダリングの罪状を認め、9年の懲役と罰金が言い渡された)。彼らは他者からお金を取り上げ、その結果、人々は餓死し、国家は不安定になる。そんなお金で何を買えるの? 誰かが餓死しそうになっていることを忘れるほど、満足できるものって何? そんなことをしてまで手に入れたもので、喜びを感じる? 私にはわからないわ。ドラッグのようなものね、依存症よ。お金と権力、そしてさらに手を入れたいという依存症。この種の依存症には、リハビリがないもの」
「あらゆるものから自由になりなさい!」
ハエックは率直で、自分の意見を持ち、恐れを知らない。強烈な印象を与える人だ。インタビューの終わりに、彼女は自宅の中をゆっくり案内してくれた。家の中のあちこちで、仕事仲間や親友(ハエック部隊に入隊すると、仕事仲間はたちまち親友になる)が、熱のこもったスペイン語で脚本の問題点を修正したり、豪華ホリスティックホテル開業の構想を練っていたり、インテリアの模様替えを計画したりしている。
「もし今日、俳優としての仕事に終わりがきても、これまでの道のりにとても感謝するわ。ありがたいことに、仮にそうなっても、返さなければいけない借りは私にはないの」
さらりとこう言って、ハエックは続ける。
「だから、美容会社とジュース会社を始めたの。ハリウッドから完全に追放される準備ができたから。私を打ちのめすことはできない。どうしてかわかる? 私はこのシステムを生き抜き、どう転んでも私は満足するから。自分が気に入られているかどうか、そんなことに左右されないわ」
ハエックは瞑想について語り、今はアクション好きな夫とともに『24』にはまっているのだと教えてくれた。そして、誰かに呼ばれて、彼女はその場から去っていった。ハエックのアシスタントに送り出されて外に出ると、すべてが刺激に欠け、退屈に感じた。「オペラを歌って、フェミニストのジレンマをくぐりぬけなさい」という、ハエックの言葉を思い出し、思わず笑いが込み上げてきた。ハエックはまた、こんなアドバイスもくれたのだった。
「『正しい』とされる、あらゆるものから自由になるの。食べ方だってファッションだって、方法はひとつではない。自分の肉体に満足して、自由になりなさい。そうすれば魂は不滅よ。誰にも見られていないときは自分の可能性を探求しなきゃ。自分の限界を打ち破るのよ!」
タクシーを止めて乗り込むと、私は『誰も寝てはならぬ』を少しだけハミングしてみた。
Text: Natalie Evans-Harding
https://www.vogue.co.jp/celebrity/interview/2019-03-14/salma-hayek/cnihub/page/7

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羅大佑、メイデイ、クラウド・ルー:台湾ポップスの限りない魅力

2019-03-15 | 先住民族関連
nippon.com3/14(木) 15:03配信
関谷 元子
羅大佑のアルバムから受けた衝撃
中華圏の音楽を日本に紹介する仕事をして30年近くになるが、最初に誘われて行ったのは台湾だった。80年代、私はワールド・ミュージックという世界に起きたムーブメントに狂喜し、個人的にはサルサという音楽が大好きで、生まれた街ニューヨークによく行き、ライブに通った。レコード会社の人に行きませんかと誘われ、台北に行ったのはそんな時。ここはプエルトリコみたいだな(サルサはニューヨークにいるプエルトリコ人が作ったもの)、なんて感じに思っていた。が、そこは一応音楽を紹介する仕事をしている身。レコード店に行き、お薦めのレコードを何枚か買って帰った。
その中に、羅大佑(ルオ・ダーヨウ)というアーティストの「原郷」というアルバムがあった。1991年リリース。これを聴いて衝撃を受けた。インタビューをしたいと思った。
しかし手段がない。はてどうしたものかと思っていたところ、当時ロック・レコードにいた張培仁(ランディ・チャン)氏と、彼がアーティストを連れてきていた東京の音楽祭の打ち上げで知り合うことができたのだ。その時は名刺を見て、「あ、羅さんと同じレコード会社の人だ。ラッキー!」くらいに思っていたが、その後会社を起こし、Simple Lifeというコンセプチュアルな音楽祭を大成功させ(今では中国3カ所でも行っている)、誰でもが作品をアップロードし発表できるstreetvoice.comというサイトを立ち上げた(ここから有名になったアーティストは多い)。さらに、日本のアーティストも多く出演している台北の中心・華山にあるライブハウスLegacyを運営するなど、台湾音楽シーンへ多大な貢献をしている人なのである。
そのランディ氏に、羅大佑氏のインタビューをセッティングしてくれないかと頼んだ。その時、羅大佑氏は香港にレコーディングスタジオを持っており、香港に行けるかと聞かれた。若いときには行動力がある。「もちろん」と言い、すぐに香港に向かった。
90年代の中華圏音楽をけん引した台湾ポップス
スタジオで会ってくれた羅大佑氏は、いきなり、僕は客家人だと言った。えっと、それってどういう意味なんだろう? 音楽の話をじっくりしようと質問をたくさん考えていったのに、出鼻をくじかれた。羅大佑氏は続ける。中国、香港、台湾と中華圏に大きな三つの文化圏がある……この地域の政治はこうだ…台湾には中国の福建省から移住した漢人の他に同じ漢人の客家や先住民族がいる……台湾には外省人と本省人がいる・・・。そんなことを、ホワイトボードを使いながら、まさに先生の講義のように丁寧に教えてくれた。
羅大佑氏はこうも言った。「『原郷』に収録されている曲『火車』のミュージックビデオは列車の中で撮影しているけど、その列車は日本統治時代に作られた線路を走っている。日本は台湾を植民地にしたけれど、インフラも造ったんだ」。講義は3時間にも及び、香港の強い冷房で唇が青くなったが、面白かった。感動した。
それから台湾ががぜん面白くなり、通うようになった。ある時、ランディ氏が今度レコード会社を始めると言った。名前は魔岩(マジックストーン)レコード。「北京には本物のロックがある。それと台湾の本物のロックを出す」。実際、北京の素晴らしいロックミュージシャン(唐朝、黒豹、竇唯などなど)のアルバムをリリースした。政治的理由によるさまざまな制約がある中でロックをし続ける、強くて個性あふれる北京のアーティストたちも知ることができた。
そして、台湾。1987年に戒厳令が解除され、ミュージシャンたちが自分のアイデンティティーを音楽にぶつけて表現し始めた。それは多種多彩で本当に面白かった。そのアーティストの多くが魔岩から世に出た。
台湾語ポップスの大ヒット曲「向前走」を歌い、後には映画に深く関わっていく林強(リン・チャン)。泥臭いロックがかっこ良くて、小さなライブハウスから3万人規模を成功させるようになったキング・オブ・ロックの伍佰(ウーバイ)。あくまで面白おかしく社会を風刺する豬頭皮(ツートーピ)。アトランタオリンピックの宣伝曲にサンプリングされた先住民の郭英男(ディファン)。おしゃれなスタイルでデジタルサウンドの面白さを見せたBABOO。台湾ヒップホップのキングMC HOTDOG。特徴ある声でとがった作品を出した楊乃文(フェイス・ヤン)。可憐(かれん)ながら芯が通っていて、その生き方も愛される陳綺貞(チア・チェン)など、台湾のポップスを堪能した。
台湾の90年代前半は香港のスターが圧倒的な人気だったのは事実だが、この時代の台湾の音楽には太い骨があった。つまり、どれもこれも圧倒的に台湾的だったのだ。
そして96年12月に先住民族のポップシンガー張惠妹(チャン・ホイメイ)が登場。スーパーバンド五月天(MAYDAY)が99年にデビューし、2000年には中華圏のトップアーティスト周杰倫(ジェイ・チョウ)が現れる。彼らの大成功で台湾ポップスが中華圏全体を席巻するようになっていく。
日本で大成功を収めたF4
台湾エンタメといえば、アイドルグループF4の存在を忘れてはいけない。日本のコミック『花より男子』をドラマ化した「流星花園」がアジア中で大ヒット。主役のF4を演じた4人の男性は一夜にしてスーパースターとなった。
2002年12月、F4の香港コロシアム(中華圏の日本武道館的存在)でのコンサートに行ったことがある。F4のライブと同じ月の香港コロシアムでは、周杰倫や張惠妹もコンサートを行っている。台湾ポップスが中華圏で成功している。そういう印象を受けた。
ライブの前日、多くの人が集まった記者会見で地域別の囲み会見が最後にあった。「香港」「シンガポール」などと呼ばれるとその地域の記者が皆部屋に入って行く。そしてほぼ人がいなくなったと思ったら、「ジャパン」と呼ばれた。友人と一緒に部屋に入ったら我々だけ。彼らのすぐ前に座り、「F4の4人より少なくてすみません」などと言いながらインタビューをした。
その後ドラマ「流星花園」は03年に日本での放送が始まり、08年には横浜アリーナで2日間、日本武道館で2日間、大阪城ホールで3日間のコンサートを行い、大成功させた。この規模のライブを日本で行えた台湾のアーティストは、今のところ彼らだけだ。
日本人の関心も高まる台湾ポップス
現状はどうだろう。まず台湾に対する日本人の親近感がここ数年高まっているという背景がある。東京を歩けば、こんなにあるの?と思うほど台湾発祥のドリンク店があり、若い女性が列を作っている。ネット上では「東京おすすめ台湾ドリンク店」といった記事も多く見る。書店に行けば多くの台湾紹介本がある。台北・台南だけでなく、東部台湾に特化したガイドブックもある。そんな「台湾好き」が増えたことで台湾のポップスがより日本に入って来やすくなったのではと思う。
また、日本のミュージシャンにとっては、ツアーの一部として台湾でライブをすることがもはや特別ではなくなった。台湾人に言わせると、毎週のように日本人が台湾で活動している感じだそうだ。
もちろん、台湾ポップスが日本で続々チャートインするといった成功はまだ見せてはいない。しかし台湾のアーティストの魅力を感じた日本の会社が、台湾のマネジメント会社と関係を持ち活動を始めるところが増えるのを見るにつけ、希望的観測だが近い将来何かが起こるのではと思うのである。
盧廣仲(クラウド・ルー)という台南出身のシンガー・ソングライターがいる。私は、このアーティストがディープ台湾的な部分と洋楽的テイストの両方を持っているところに感心し、日本でも受け入れられるのではと思っている。周囲の音楽業界の人に盧廣仲の音を聴いてもらうと大抵評判が良い。そんな思いが通じたのか、2017年から日本のワイズ・コネクションという会社がエージェントになった。
盧廣仲は2008年のアルバムデビュー時から才能を高く評価されてきたが、17年に大ヒットしたドラマ「花甲男孩轉大人(邦題:お花畑から来た少年)」に主演し、その演技が評判となり台湾のエミー賞と呼ばれる金鐘奨で主演男優賞を獲得した。ドラマの主題歌も彼によるもので、「魚仔」は今や台湾で最も愛される曲の一つになっている。
忙しくなった盧廣仲は日本になかなか来られない。しかし日本に窓口があることで宣伝が行われ、17年は400人収容のライブ会場で、18年には1000人規模の会場で、いずれもソールドアウト(完売)にした。18年にはビルボード東京で追加公演も行った。
日本で観光とライブをセットで楽しむ
東京と台北両方にあるライブハウス「月見ル君思フ」。東京では台湾のアーティストが頻繁に、台北では日本のアーティストがライブを行っている。主催者は2地域のアーティストを一緒に中国も含めてツアーを行い、台湾アーティストのCDリリースにも積極的だ。
面白い現象がある。2018年、台湾で最も若者の支持を得た草東没有派對(No Party For Cao Dong)というバンドが東京でライブを行った。彼らは日本では全くと言っていいほど活動していないにも関わらず、あっという間にチケットはソールドアウト。当日は多くの若者が台湾から来ていた。日本で観光をしながら大好きなバンドを見る、そんな動きもあるのだ。
五月天もそうだ。18年に日本武道館での2日間のコンサートチケットを売り切り、19年は4月に大阪城ホールで2日間行なう。ビートルズがライブをした日本武道館でコンサートを行うことは彼らにとっても特別なことで、中華圏から観客が来ることで商業的にも可能になった。
台湾は今も良質の音楽を生み出す中華圏のメッカだが、中国からも才能のある若いミュージシャンが続々出てきており、台湾の音楽業界の人は「5年後の状況が今と同じかどうかは分からない」と言う。また台湾には、中華圏全体で活躍するアーティストもいるが、台湾独立を主張することで中国では活動できないアーティストもいる。
小さいながらも豊かな音楽を生み出す台湾と、われわれ日本人はどう関わっていくのか。それは台湾の向こうにある巨大市場の中国大陸など中華圏全体を見ることでもあるのだ。
【Profile】
関谷 元子 SEKIYA Motoko
音楽評論家。桐朋学園大学音楽学部音楽学専攻卒業。ワールド・ミュージックを専門としてきたが、90年前後から台湾をはじめ中華圏のポップスを主に紹介している。InterFM『World Music Cruise』DJ、国士舘大学非常勤講師など。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190314-00010001-nipponcom-cul

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アラスカの犬ぞりレース、今年は現地先住民が9日と12時間超で優勝

2019-03-15 | 先住民族関連
ロイター3/14(木) 15:15配信
[アンカレッジ(米アラスカ州) 13日 ロイター] - 米アラスカ州で開催された「アイディタロッド」と呼ばれる犬ぞりレースは13日、同州先住民のピート・カイザーさん(31)のチームが昨年覇者を抑えて初優勝した。
アンカレッジから北端の町ノームまで、雪原を約1600キロ駆け抜ける過酷なレース。今年は接戦となり、2位との差はわずか12分だった。記録は9日12時間39分06秒で、これまでの最速となる8日3時間40分13秒には遠く及ばなかった。
アラスカ先住民のマッシャー(犬ぞり使い)が優勝するのは2011年以来のことだという。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190314-00000056-reut-eurp

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