朝日新聞 2019年3月19日03時00分 芳垣文子

かつてのカラフトアイヌと清朝、日本との関わりを示す文書が、国の重要文化財に指定されることになった。18日、国の文化審議会(佐藤信会長)が開かれ、北海道大学付属図書館が所蔵する「カラフトナヨロ惣乙名文書(そうおとなもんじょ、ヤエンコロアイヌ文書)」を、国の重要文化財(美術工芸品)に指定するよう文部科学相に答申した。
文書はアイヌ民族の氏族長「ヤエンコロアイヌ」の家に保管、伝来したもの。氏族長はカラフト西岸のナヨロで複数の村落を統括していた。全13通で清国の関係文書が4通、日本側が作成したものが9通。2巻に分かれて軸装されている。
当時のカラフトアイヌが、清朝に貢ぎ物を献上するなど朝貢関係にあったことを示す貴重な資料だ。
清国関係文書は18世紀後半~19世紀前半のもので、漢文で書かれたものと、満州語の文字で記されたものがそれぞれ2通ある。満文の1通は、清朝がアイヌ氏族長にあてた公文書。赤い官印が押され、氏族長が貢ぎ物に来る際の季節などについて書かれている。縦書きだが、日本語とは逆で、左から右へ読み進むようになっている。
漢文の文書には、貢ぎ物の献上が途絶えた氏族長に来貢を促すよう、清朝の役人が別の氏族長に依頼する文書も含まれている。
日本側が作成した和文の文書は、18世紀末~19世紀半ばの江戸時代後期のもの。北蝦夷地探査に携わった最上徳内が文書を見て「大切に保管するように」としたためた書き付けや、箱館奉行所がアイヌの村落統括者に与えた辞令類などが残っている。
北大付属図書館によると、明治末期ごろに軸装されたとみられ、1954(昭和29)年に北大が個人から購入したという。
同図書館は「指定は大変に光栄。貴重な学術資料として後世に引き継いでいきたい」としている。同図書館北方資料データベースで実物の画像を公開しているほか、レプリカを図書館で閲覧できる。問い合わせは同図書館北方資料担当(メール hoppo@lib.hokudai.ac.jp)へ。
また、文化審議会は札幌市中央区の「札幌市旧三菱鉱業寮」を登録有形文化財とするよう答申した。
道指定有形文化財の旧永山武四郎邸(1877年ごろ建築)に隣接する鉱山会社の福利厚生施設で、1937(昭和12)年ごろに増築。木造モルタル2階建て、切り妻造りの洋館で、柱や梁(はり)の骨組みを模様として見せたデザインや、西側の円窓などモダンなつくりが特徴だ。
2018年6月、2年間の改修を経てリニューアルオープンし、新設されたカフェが人気を呼んでいる。年間来場者1万人の目標を大きく上回り、すでに4万4千人以上が訪れている。
入館無料。問い合わせは旧永山武四郎邸及び旧三菱鉱業寮(011・232・0450)へ。(芳垣文子)
https://digital.asahi.com/articles/ASM3L55DSM3LIIPE01N.html?_requesturl=articles%2FASM3L55DSM3LIIPE01N.html&rm=315

かつてのカラフトアイヌと清朝、日本との関わりを示す文書が、国の重要文化財に指定されることになった。18日、国の文化審議会(佐藤信会長)が開かれ、北海道大学付属図書館が所蔵する「カラフトナヨロ惣乙名文書(そうおとなもんじょ、ヤエンコロアイヌ文書)」を、国の重要文化財(美術工芸品)に指定するよう文部科学相に答申した。
文書はアイヌ民族の氏族長「ヤエンコロアイヌ」の家に保管、伝来したもの。氏族長はカラフト西岸のナヨロで複数の村落を統括していた。全13通で清国の関係文書が4通、日本側が作成したものが9通。2巻に分かれて軸装されている。
当時のカラフトアイヌが、清朝に貢ぎ物を献上するなど朝貢関係にあったことを示す貴重な資料だ。
清国関係文書は18世紀後半~19世紀前半のもので、漢文で書かれたものと、満州語の文字で記されたものがそれぞれ2通ある。満文の1通は、清朝がアイヌ氏族長にあてた公文書。赤い官印が押され、氏族長が貢ぎ物に来る際の季節などについて書かれている。縦書きだが、日本語とは逆で、左から右へ読み進むようになっている。
漢文の文書には、貢ぎ物の献上が途絶えた氏族長に来貢を促すよう、清朝の役人が別の氏族長に依頼する文書も含まれている。
日本側が作成した和文の文書は、18世紀末~19世紀半ばの江戸時代後期のもの。北蝦夷地探査に携わった最上徳内が文書を見て「大切に保管するように」としたためた書き付けや、箱館奉行所がアイヌの村落統括者に与えた辞令類などが残っている。
北大付属図書館によると、明治末期ごろに軸装されたとみられ、1954(昭和29)年に北大が個人から購入したという。
同図書館は「指定は大変に光栄。貴重な学術資料として後世に引き継いでいきたい」としている。同図書館北方資料データベースで実物の画像を公開しているほか、レプリカを図書館で閲覧できる。問い合わせは同図書館北方資料担当(メール hoppo@lib.hokudai.ac.jp)へ。
また、文化審議会は札幌市中央区の「札幌市旧三菱鉱業寮」を登録有形文化財とするよう答申した。
道指定有形文化財の旧永山武四郎邸(1877年ごろ建築)に隣接する鉱山会社の福利厚生施設で、1937(昭和12)年ごろに増築。木造モルタル2階建て、切り妻造りの洋館で、柱や梁(はり)の骨組みを模様として見せたデザインや、西側の円窓などモダンなつくりが特徴だ。
2018年6月、2年間の改修を経てリニューアルオープンし、新設されたカフェが人気を呼んでいる。年間来場者1万人の目標を大きく上回り、すでに4万4千人以上が訪れている。
入館無料。問い合わせは旧永山武四郎邸及び旧三菱鉱業寮(011・232・0450)へ。(芳垣文子)
https://digital.asahi.com/articles/ASM3L55DSM3LIIPE01N.html?_requesturl=articles%2FASM3L55DSM3LIIPE01N.html&rm=315