東スポ 2025年2月12日 11:30 山口敏太郎
オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第225回は「さかぶ」だ。
「山の神がさかぶ声」という言葉がある。これはベテランのマタギにしか聞こえないものであり、新人のマタギには全く聞こえない。このさかぶ声が聞こえた場合、その聞こえた方角には、獲物がたくさん潜んでいるという。山の神が山の幸を授けてくれたのだ。
また、現役ベテランマタギ以外にも山の神がさかぶ声は聞こえるらしく、山の神の導きにより大量の獲物を取ったマタギたちが地元の村に帰還した時にすでに宴会の準備がされていることがある。これは、山の神の声が麓の村までも聞こえていたからだそうである。
マタギという言葉はもともとはアイヌ語であるらしく、冬に仕事をするものというような意味があるそうだ。アイヌ語とも共通する言葉が多く、水をワッカ、イヌをセタ、大きいをポロという。マタギの先祖がアイヌなのか、マタギが成立した以降にアイヌの影響を受けたのか、まだ定かではない。
他にも「山が笑う」という言葉がある。これは春先に多くの植物が芽吹くことを指している。だが、山が笑う時は、すぐさま山を下りたほうがいいと言われる。また「山が鳴く」という言葉もある。これは地震の前触れとかであり、山全体が共鳴するものである。