読売新聞 2025/01/20 05:00
中川さんの新著「アイヌ語広文典」
漫画「ゴールデンカムイ」でアイヌ語を監修した言語学者の中川裕・千葉大名誉教授が、アイヌ語の文法書「アイヌ語広文典」を白水社から出版した。言葉の歴史や発音、独特の表記や豊富な例文も掲げており、アイヌ語ミニ百科事典とも言える内容となっている。(土田浩平)
アイヌ語文法書は、登別生まれの言語学者、知里真志保が研究書として1942年に著した。佐藤知己北大教授も2008年に「アイヌ語文法の基礎」を出版している。
新著で中川さんは、これまで詳述された沙流方言(沙流川地方の方言)や千歳方言、樺太方言に加え、幌別、石狩、静内、十勝、白糠、様似、釧路、白老、鵡川、虻田、美幌の各方言について文献や音声データベースも含めて紹介した。
日本語などにある一人称(私・私たち)や二人称(あなた・あなたたち)、三人称(彼・彼女・彼ら)に加え、アイヌ語は四人称(単数は物語中の叙述者、複数は聞き手を含む私たち)という、独特の人称があることも詳しく説明した。
口承文芸では、「ことばあそび」で「口もなく目もなく手もなく足もなく腹が膨れているものの答えは卵」といったなぞなぞや、おまじない、喉鳴らし歌、英雄叙事詩など、様々なジャンルについても詳述した。
新著について、中川さんは「平取町では日常会話をアイヌ語でする復興活動も盛んでインターネットなどの学習環境も整っている。アイヌ語ハンドブックとして使ってもらえれば」と話す。A5判、657ページ。税込み9350円。
https://www.yomiuri.co.jp/local/hokkaido/news/20250119-OYTNT50217/