北海道新聞2025年1月20日 9:54
十勝管内の観光事業者らと連携し、アドベンチャートラベルの普及に取り組む実重貴之さん(小川泰弘撮影)
帯広開発建設部次長の実重貴之さん(38)は、十勝の基幹産業の農業や自然、文化を生かした体験型観光「アドベンチャートラベル」(AT)の普及に取り組んでいる。観光資源に恵まれた十勝管内のATの現状や可能性について聞いた。
――ATはどのような観光ですか。
「観光客が受動的に楽しむのではなく、地域にある、ありのままの自然、産業、文化、人の営みなどをストーリー仕立ての案内で体験する旅を指します。冒険心を高める『超能動的な旅』です。違う価値観に触れて自己変革につながるといわれています」
――どんな魅力があるのでしょうか。
「私自身の体験でいえば、コロナ禍前の5年前に、北海道運輸局のATに関する事業に参加し、ファットバイクで真冬の知床を海外からの旅行客と一緒に巡り、本物の自然を体感しました。東京で生まれ育った自分が普段いかに便利なものに囲まれているか、気づかされる強烈な体験でした。世界が開けたような感覚で、それ以来、自然との共生を意識するようになりました」
――従来の観光とはどのように違うのでしょうか。
「かつて主流だった観光は、観光客向けにつくられたコンテンツを楽しむものでした。ATは、これまで観光コンテンツとして認識されていなかったものに光を当てます。農業や漁業といった地場産業を観光客が体験して尊敬の念や好奇心をもつことで、新たな観光として付加価値が見いだされ、住民たちの誇りも醸成されていきます」
――北海道のATの特徴は。
「北海道は火山や湖など自然が豊かで各地域に特色があります。アイヌ文化や縄文文化に加え、本州からの入植が進んだ近代化以降の150年の歴史をひもときやすい面もあると考えています」
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<略歴>さねしげ・たかゆき 1987年、東京都出身。東大経済学部卒業後、2011年に国土交通省入省。北海道運輸局観光部時代の同僚らと共著「アドベンチャートラベル大全」(21年)を執筆した。観光庁観光地域振興課総括課長補佐などを経て23年4月から現職。