はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

不発

2008-02-01 22:52:21 | はがき随筆
 一向宗は薩摩藩では厳しい弾圧を受けたと聞いた。でもその実像は資料が乏しく闇の中だ。
 シラス台地の下、外城(とじょう)や門割(かどわり)といった盤石の重しを肩に農民と一部武士がいた。彼らが尚武の精神にまで染められてお上に従ったかは疑わしい。
 日照りの夏ははだかで大地にはい、牛馬を追い、声高な、でも忍耐強いおなごん衆の耳に、修養掟(おきて)などは届かない、などとイメージしてみた。
 失うものがない者の反転爆発力はすごい。彼らが支えとした浄土真宗に対して、支配層は恐怖し、嫉妬(しっと)したのだ。一揆、それは未然に弾圧された、と思う。
   出水市 松尾 繁(72) 2008/1/31 毎日新聞鹿児島版掲載