はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

教育に新聞を

2008-02-20 21:46:13 | かごんま便り
 
 「生徒に反省文を書かせたら『すいません』と書いてきた。最近の子供たちは正しい日本語が分からなくなっている」。嘆きの主は、県NIE推進協議会の鷲東重明会長(松陽高校長)だ。
 NIE(教育に新聞を)は授業の教材として新聞を活用する取り組み。1930年代に米国で生まれ、世界に広がった。国内では日本新聞教育文化財団が音頭を取り、鹿児島では前述の推進協議会が選んだ研究委嘱校で授業が展開される。冒頭の発言は、16日に鹿児島市であった1年間の実践報告会でのものだ。
◇ ◇
 昨年9月に毎日新聞が実施した第61回読書世論調査で、新聞を「読む」と答えた人の割合は全体で78%。だが20代では57%、10代後半は48%にとどまる。一方「活字離れが若者の日本語力低下につながっている」と思う人は77%に上っている。
 NIEは新聞に親しむことから始まり、特定のテーマで複数紙を読み比べ、感想を述べ合うことなどで判断力や思考力、情報を「読み解く」能力を高めるのが狙い。併せて活字離れを食い止める役割も期待されている。
 07年度の県内の実践校(小学校4▽中学校5▽高校4)では、国語や社会、総合学習などで新聞を活用した授業を実施した。報告会では「世の中の出来事に興味を示すようになった」「情報をうのみにするのではなく評価・識別する能力(メディア・リテラシー)の芽が養われた」などの成果が聞かれた。
 文部科学省が15日に公表した学習指導要領の改正案では、言語活動の充実が盛り込まれ、具体的には批評・評論・論説などの活用重視や、報道による情報を比較して読むことなどがうたわれている。NIEの有用性を多少なりとも意識してのことだろう。我々も今まで以上に、正しい日本語でより分かりやすい記事を提供していかなければと痛感している。
鹿児島支局長 平山千里 2008/2/18 毎日新聞掲載

ごめんね

2008-02-20 18:30:30 | はがき随筆
 「ごめんね、母ちゃん。ありがとう」。私が半身まひの夫の手伝いをするたびに夫は「ごめんね」と言う。ごめんねは困る。ありがとうだけでうれしい。ごめんねはつらい。悲しい。
 「父ちゃん、もっと堂々としてくれていいんだよ。当たり前のことをしてるだけなのだから。不器用で迷惑かけているのは私の方だし。『ごめんね』は絶対イヤだよ」と言ったら、時々しか言わなくなった。
 「つらいなあ、母ちゃん」
 そのことばがもっとつらい。私の方が「ごめんね、父ちゃん」とあまりたくなる。
   鹿児島市 萩原裕子(55) 2008/2/20 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆1月度入選

2008-02-20 18:24:57 | 受賞作品
 はがき随筆1月度の入選作品がきまりました。
▽出水市高尾野町、岩田昭治さん(68)の「夢抱く古稀」(6日)
▽薩摩川内市木脇長市比野、下市良幸さん(78)の「心のリハビリ」(17日)
▽肝付町前田、吉井三男さん(66)の「へんてこりん」(16日)
──の3点です。

 立春を過ぎ、太陽の光に春らしさを感じさせられます。1月度は新年特集(上・下)が組まれました。岩田さんの「夢抱く古稀」は、自分が発行する新聞への強い思いを述べています。大いに元気で独立心をみせています。西尾フミ子さんの「兄ちゃんの休暇」(4日)は、戦死したお兄さんを忘れられない、つらい気持ちを描いた文章です。その他、田中京子さんの「正月っどん」(4日)、小村豊一郎さんの「げたの思い出」(4日)は子供の時分の、正月を迎えるうきうきした気持ちをリアルにうまく表現してあり魅力を感じます。
 下市さんの「心のリハビリ」は、離れて住む娘さんから常時、暮らしの中で、車の運転、火の用心など十分気をつけるよう注意され、そこで一大決心をします。そのことを心のリハビリと心得るところが活気みなぎっていますね。文章の構成がよくて分かりやすく書かれています。
 吉井さんの「へんてこりん」は、文章の始めに定年を実感する一つが朝の連続テレビ小説を見られることだ、と書き、充実した朝の暮らしが伝わってきます。さらの次々に展開する、人生経験豊かな夫婦の関西弁の味がとてもよく、会話中心の文章であるのに言葉の面白さが文章を引き立てていますよ。また、題が内容をよく読ませるきっかけになりましたね。
 有村好一さんの「年越しそば」(12日)は、恒例のお母さんと自分との年越しそば打ちに期待していたが、お母さんが突然の体調不良で来られなくなり、1人で頑張る姿が面白く個性的に描かれました。馬渡浩子さんの「あんかと共に」(20日)は、あんかの操作ミスを自虐的に表現してシャレた文に仕上げましたね。竹之内美知子さんの「義姉と妹」、秋峯いくよさんの「健康第一」は、いずれも文章が鮮明で明るくいいですね。
 今回のように個性あふれる文章は、魅力を感じさせます。

(日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)

係から 入選作品のうち1編は23日午前8時20分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝の取っておき」です。