「生徒に反省文を書かせたら『すいません』と書いてきた。最近の子供たちは正しい日本語が分からなくなっている」。嘆きの主は、県NIE推進協議会の鷲東重明会長(松陽高校長)だ。
NIE(教育に新聞を)は授業の教材として新聞を活用する取り組み。1930年代に米国で生まれ、世界に広がった。国内では日本新聞教育文化財団が音頭を取り、鹿児島では前述の推進協議会が選んだ研究委嘱校で授業が展開される。冒頭の発言は、16日に鹿児島市であった1年間の実践報告会でのものだ。
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昨年9月に毎日新聞が実施した第61回読書世論調査で、新聞を「読む」と答えた人の割合は全体で78%。だが20代では57%、10代後半は48%にとどまる。一方「活字離れが若者の日本語力低下につながっている」と思う人は77%に上っている。
NIEは新聞に親しむことから始まり、特定のテーマで複数紙を読み比べ、感想を述べ合うことなどで判断力や思考力、情報を「読み解く」能力を高めるのが狙い。併せて活字離れを食い止める役割も期待されている。
07年度の県内の実践校(小学校4▽中学校5▽高校4)では、国語や社会、総合学習などで新聞を活用した授業を実施した。報告会では「世の中の出来事に興味を示すようになった」「情報をうのみにするのではなく評価・識別する能力(メディア・リテラシー)の芽が養われた」などの成果が聞かれた。
文部科学省が15日に公表した学習指導要領の改正案では、言語活動の充実が盛り込まれ、具体的には批評・評論・論説などの活用重視や、報道による情報を比較して読むことなどがうたわれている。NIEの有用性を多少なりとも意識してのことだろう。我々も今まで以上に、正しい日本語でより分かりやすい記事を提供していかなければと痛感している。
鹿児島支局長 平山千里 2008/2/18 毎日新聞掲載