はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

チェスト!

2008-02-27 08:40:41 | かごんま便り
 福岡ソフトバンクホークスの川崎宗則選手が先日、センバツ初出場の母校・鹿児島工への応援旗に寄せ書きした。「チェスト行け!!」。ご存じ、鹿児島特有の、気合を入れる時の掛け声である。
 23日、昨夏に県内で撮影された映画の完成披露試写会に足を運んだ。タイトルはずばり「チェスト!」。錦江湾横断遠泳を題材に、子供たちのひと夏の成長を描いた作品である。
 主人公は正義感の強い男の子。カナヅチのため恒例の遠泳大会をサボり続けてきたが、最後の6年生の夏、参加を決意する。彼を取り巻くのはクールで陰のある東京からの転校生、過敏性腸症候群でトイレが近いのを級友にからかわれる気のいい少年、大人びた学級委員の美少女──たち。先生や家族に見守られながら、薩摩伝統の「郷中(ごじゅう)教育」の精神そのままに、仲間同士で助け合いつついろんな困難を乗り越えていく……。
 舞台あいさつで雑賀俊郎監督やキャストの皆さんは、鹿児島の豊かな自然と人の〝熱さ〟が作品の下支えになったことを説明したうえで「忘れていたもの、忘れかけていたものを思い起こさせる映画です」と力説した。
 誰もが頑張っていた時代、一生懸命は美徳とされた。だが今「頑張る」は、はやらない。時には格好悪いとさえみなされる。でも本当にそうか?
 作品は「『ガンバレ』なんて気安くいわないで!」のキャッチコピーの通り、勤勉実直だけを鼓舞する内容ではない。それでも「全力を出し切って初めて見えるもの」をさりげなく伝えようとしていることは確かだ。
 菱刈町出身の榎木孝明さんが言った。「この映画が鹿児島発というのが一番うれしい」。鹿児島からのメッセージは県外の人にどう受け止められるだろう。楽しみだ。
 県内での先行上映は3月1日から。15日から九州各県で、4月19日からは全国で公開される。

鹿児島支局長 平山千里 2008/2/25 毎日新聞掲載

時代

2008-02-27 07:59:48 | はがき随筆
 ラジオの深夜放送で懐かしい人気番組を聴いた。
 川内市での録音。宮田輝さんの司会で盛り上がる会場、色濃く残る方言、笑い、出場者の明るい語りと歌。私は昭和30年代にタイムスリップしていた。夢うつつの中で当時の生活や思い出がよみがえり会えるはずのない人々にも出会った気がした。
 車やテレビもわずか、携帯電話など想像もしない時代。私たちは少しも不自由を感じず、毎日楽しく精いっぱい生きてきた。そのころは温かい人情と自然があふれていた気がする。
 まもなく還暦。懐かしい人たちに会える日が来る。
   指宿市 有村好一(59) 2008/2/27 毎日新聞鹿児島版掲載