はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆 新年特集

2009-01-07 08:12:17 | はがき随筆
新年特集-中

「新聞凧」
 正月の凧揚げ大会に、私は手作り凧で参加した。手作りと言えば聞こえはいいが、市販の凧を買ってもらえない苦肉の策だった。凧骨作りに父の指導を仰ぎ、新聞紙を張った凧が完成。
 会場は、参加者と見物客が200人を超すにぎわい。凧揚げ仲間に一笑された新聞凧が一番高く舞い上がり「おーっ」と観衆のどよめきが上がった。周囲には黒山の人だかりが出来て、私は得意満面の笑顔。アイデア賞の賞状を掲げて、鼻も高々だった。
 48年前の記憶をたどり、凧を作成してみた。平成の正月に揚がる新聞凧、いかに。
   出水市 道田道範(59)



「大観覧車」
 アミュプラザの大観覧車にぜひ乗ってみたい。満6歳の正月、七草祝いに新調してもらったもえぎ色の半コートと焦げ茶色のズボンを着た私を、祖父が叔母一家の住む宮崎に連れていってくれた。唯一記憶にあるのは、大きな観覧車(小さい私にはそう見えた)に乗ったこと。上から見下ろすと、祖父と叔母がニコニコ笑いながら我々を見上げていた。2歳上のいとこにどこの遊園地だったか尋ねると、橘屋百貨店の屋上だったという。そして中に千代紙の入った朱色のビニール製ハンドバッグを買ってもらったよ、と。天国のお祖父さん、ありがとう。
   鹿屋市 田中京子(58)



「羽子板を買いに」
 祖母の家から、その集落に1軒きりの店までは、歩いて20分以上もかかった。親類の姉ちゃんたちの後を10歳くらいの私は必死について歩いた。祖母からもらったばかりのお年玉を握りしめて。
 絵柄にあれこれ迷い、ようやく決めた羽子板とカラフルな羽子1個でお年玉は消えた。それでも初めての買い物に気分は高揚していた。
 おまけにもらったあめ玉をほおばり、ポケットの羽子を時々確かめながら、羽子板のお姫様をチラッと見ては遅れぬように歩いた。行きよりは少し大人になった気分の私がいた帰り道。
   出水市 清水昌子(56)



「平凡にいきます」
 新年といえば初夢であるが、初夢はともかく今年にかける私の夢はなんだろうか。還暦を迎えるにあたり、何はさておき心身の健康が第一である。「行運流水」なる金言を座右の銘にと気取ってみるのも一興かもしれない。だけどムリムリ。重箱の隅をつつくがごとき性格に、今でも手を焼いているんだから。いっそ「ガンバラない、ムリしない」が分かりやすくていいかもしれない。そして欲を言えば、若い娘と健全な友達になれたら申し分ないのだけれど。これもムリでしょう。世のご婦人たちの総攻撃に遭いかねない。ということで、今年も平凡にいきます。
   霧島市 久野茂樹(59)
2009/1/7 毎日新聞鹿児島版掲載