はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

冬来たりなば

2009-01-24 20:59:32 | はがき随筆
 正月がすぎて寒波が襲来し、県北部でも天気図に雪だるまが並ぶようになった。私の住む町では雪こそ降らないが、冷たい風に乗って氷雨が落ちてくる。
 毎年のことながら、いまが一番寒い時なのかもしれない。昔とくらべいろいろ寒さをしのぎやすくなってきたのは事実だが、それでも寒い。
 しかし庭に出ると、水仙がりんとして咲き乱れ、紅梅の枝先につぼみがかすかにふくらんでいる。花も、咲く春を待っている。まして人として生きる身にとって、強くたくましく冬を生きねばと思う。冬来たりなばと言うから……。
   志布志市 小村豊一郎(82) 2009/1/24 毎日新聞鹿児島版掲載

母と娘

2009-01-24 20:53:03 | はがき随筆
 種子島の漁港、突堤にうずくまった母の傍らに私は立っていた。3歳になる前の冬のこと。
 東シナ海から吹く冷たい風がやんで、寒満月がさえていた。母は長い間黙っていた。私も黙っていた。ついに母は私に向かって「一緒に死のうか」と言った。私は「うん」と答えた。
 晩年、病む母と暮らしていたある日、この話をしたら、「誰に聞いたか」と厳しい口調になり、「覚えている」と答えたら、「恐ろしい子だ」と言った。
 今考えるに母はあの時、ついこの間朝鮮から引き揚げ、鹿児島に着いてすぐ死んだ娘を思い、悲しみに暮れていたのだ。
   薩摩川内市 森 孝子(66) 2009/1/23 毎日新聞鹿児島版掲載

自分へのケア

2009-01-24 20:46:34 | はがき随筆
 昨年の11月より体調不良に悩んでいる。加齢による体力的な衰えと外見の変化に、心まで影響を及ぼしている。年を取ったという自覚のないままに無理を重ねたのがいけなかった。心も身体もバランスを崩し、弾力を失ってしまった。睡眠を十分に取り、ストレスをため込まず、休養を心がけ、趣味を楽しみながら生きたい。気持ちの張りや心の持ちようで日々の暮らしも好転するのでは……。スポーツや芸術に感動して、胸をときめかせることも「心のケア」といえる。残り少ない人生を自然や人に優しく、自分にも優しく、前向きに生きていきたい。
   出水市 橋口礼子(74) 2009/1/22 毎日新聞鹿児島版掲載