はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆 新年特集

2009-01-08 08:27:10 | はがき随筆
新年特集-下

「今年も元気で」
 青竹は節があるので、あんなにも強く高く真っすぐに伸びていく。人の世も正月を節として一年一年強く生きたいものだ。私は正月に昔の写真を見る。昭和14年(1939)年の家族の写真である。年の初めに70年前をしのび心の糧とする。祖父母をはじめ2代目が9人、3代目の私たち子供が7人、合計18人と犬が1匹。日中戦争のまっただ中、集まれる者だけ集まった正月の写真だろう。皆、門の前に並び、晴れ着姿ですましている。2代目までの大人たちは早くに世を去ったが、3代目のいとこたちは70歳を越えても皆元気。DNAに感謝せねばなるまい。
   鹿児島市 高野幸祐(76)



「ぴかー」

 年の瀬にうれしい贈り物。それを開ける時しみじみ正月を感じる。もう今年までかしらんが口癖の82歳の母が、せっせとつけた真っ白い白菜漬。8月に種をまき、収穫して大だるに漬け込み、また小だるに移し、手間ひまかけてしんなりさせる。それが絶品なのだ。正月料理に腹いっぱいの胃袋。もう何も受け付けぬと思いきやアラ不思議。白い漬け物の登場に皆のはしが進み、ついにはお代わりとなる。私の料理は途端に色あせる。ムムッ、憎き白菜め!と思うも「最近、漬け物石が重くて……」と腰の曲がった母の姿が浮かび、ありがとうと心の中で手を合わせる。 
   出水市 伊尻清子(59) 



「七所祝」
私の住んでいる町がまだ村と呼ばれていたころ「七所祝(ななところいわい)」というのがあった。正月7日に七つになる子を地域で祝う行事だ。私が7歳の時、近所の遊び友達で一番の仲良しの女の子が母親と訪れた。もらった七草がゆの椀を私は戸棚に大事にしまっておいた。ところが家の誰かが、それを他家からもらったかゆとごっちゃにしてしまった。それですっかりご機嫌斜めになった私を、原因の分からぬ母や祖母らは懸命になだめすかした。幼児死亡率の高かった時代。7歳はある程度の抵抗力もついて、もう大丈夫ということを地域のみんなで温かく祝ったのだ。
   伊佐市 山室恒人(62)



「新年の夢」
私の作詞曲はいつ出来るだろうか。楽しみだ。
 年末の12月、ダム問題が残る川辺川を訪ねた。「『五木の子守唄』はあるが、川内川の歌はない」と村の方に聞いた。
 「川辺川情歌」と題した3番までの作詞に挑戦。つらい思いをされている方々の気持ちに少しでも添えたらと願い、行方不明の恋人を、美しい谷奥の川辺川原で待つ村娘の哀しみにかえた詞にした。
 作曲を五木中学校のI先生に依頼。幸運にも引き受けてくださった。出来たら、今年11月の五木村の合唱祭で披露したい。
 私のかなえたい新年の夢。
   出水市 小村 忍(65)
   2009/1/8 毎日新聞鹿児島版掲載