はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

つかの間の夢

2009-01-28 17:37:02 | はがき随筆
 元旦には姉妹からの励ましの電話がうれしかった。
 仏前に2人分の雑煮と正月料理を並べると昼前になった。右腕が少し強くなったので今年は物を破損したり転倒したりすることが少ないようにと念じた。
 午後は小倉百人一首のテープで一人遊びをした。ベッドの上にカルタを並べた。暖かい。
 ──朗詠の声がだんだん遠くになる。亡き母と夫が、私の少女のころの羽子板模様の羽織、髪飾りなど初詣の準備中。叫ぶが、声が出ない。夫の好きなロウバイの香りが漂い、心が癒されたひとときの幸せ──。
 つかの間の夢だったのだ。
   薩摩川内市 上野昭子(80) 2009/1/28 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はバセさん