山際に小さな畑を作っている。ある日、高い土手から1匹の子イノシシが転がり落ちてきた。驚いたのもつかの間、相手はさっと立ち上がり、辺りを掘り返しはじめた。お前か! このところの畑荒らしはこの子の仕業だったらしい。畑荒らしは次の日、次の日も1匹で現れ、熱心に泥遊びをしたり、寝ころんでこちらを見ていたりする。親とはぐれたのだろうかと少しふびんに思えてくる。ついつい可愛くなり、名前などつけてしまう。しかし、その日を境に姿を見せなくなった。「イノキチ」という名前が気にくわなかったのかもしれない。
薩摩川内市 橋口恵美子(60) 2009/1/9 毎日新聞鹿児島版掲載
イラストはコケイジさん
薩摩川内市 橋口恵美子(60) 2009/1/9 毎日新聞鹿児島版掲載
イラストはコケイジさん