はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

忘れてしまうよ

2009-02-02 16:12:14 | はがき随筆
 「将棋をしようよ」と隣に住む孫がしつこく言う。そこで、未経験の私が、しぶしぶ相手をすることになる。
 一念発起して、毎日1回は対局して覚えよう提案する。孫が勝てるのは唯一、私だけなので、将棋の本をプレゼントしてくれたりする熱の入れよう。彼の優越感をくすぐり、早く言えばカモにされているのである。
 それでも、祖母の私が1回だけ勝ったことがある。勝ってもいいのかなあと思ったぐらい、あっさりと。
 ところが最近、孫はテレビゲームに夢中で休局状態。将棋を忘れてしまいそうな私である。
   霧島市 口町円子(69) 2009/1/31 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はparusさん

冷やかねえ

2009-02-01 19:50:06 | はがき随筆
 冬になり寒くなると思い出すことがある。私は甑島の中学から鹿児島市の高校へ進学した。鹿児島市へ来て最も驚いたのは言葉の違いだった。今も忘れられない同級生との会話がある。
 1年の冬、快晴だか寒い日だった。鹿児島市出身のO君と後者の屋上に行き、私が「今日は冷やかねえ」と言うと「冷やかって何よ」と言い出した。「寒いってことよ」「寒(さん)かじゃねえの?」。しばらく沈黙の後「甑島は鹿児島市より北にあるから寒いじゃなく冷たいなんだろう」と言うことで友に納得。
 今はお互いおじさん、寒さが身にこたえる年齢となった。
   鹿児島市 川端清一郎(61) 2009/2/1 毎日新聞鹿児島版掲載

センバツ

2009-02-01 19:34:29 | かごんま便り
 小雨まじりの23日はけっこう寒かった。第81回選抜高校野球大会の出場校を決める高野連の選考委員会当日、神村学園(いちき串木野市)の会議室で、学校関係者や大勢の報道陣とともに吉報を待った。

 秋の九州大会準Vの実績から出場は間違いないと思ったが、連絡がないまま時計の針が刻々と進む。やがて電話が鳴った。神村勲学園長の手が伸びるとフラッシュの嵐。笑みを浮かべた神村学園長が静かに受話器を置き、拍手がわき起こる。県勢の出場は一昨年の鹿児島商、昨年の鹿児島工に続き3年連続の快挙だ。

 正面玄関前。別室で待機していた野球部員が興奮した様子で走り寄る。松ケ野透教頭が一同を制して整列させ、出場決定の報告。バンザイ三唱に始まり、円陣を組んで雄たけび、帽子を放り投げてガッツポーズ。彼らは何度も何度も、全身で喜びをはじけさせた。

◇ ◇

 学園の正門を入って左手に「栄光のあと」と題した石碑がずらりと並んでいる。記されているのは、全国大会で活躍した先輩たちの歴史だ。前身が女子校のためかソフトボールに駅伝、剣道、野球、サッカー……と女子の華々しさが目立つが、創部わずか2年目で初出場した第77回選抜高校野球大会の準優勝も誇らしげに刻まれている。
鹿児島支局長 平山千里 
2009/1/26 毎日新聞掲載