はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

10月10日は…

2009-10-12 22:28:48 | アカショウビンのつぶやき
 英語の「テン」と日本語の「トウ」にちなんで、10月10日は、「転倒予防の日」、平成4年4月に発足したそうだが、知らなかった。
 「アレまあ、私のために作られたみたい…でも一年以上転んでないなあ、そろそろ危ないかな」なんて思いながら、読んでいた私。

 とうとう、やっちゃいました。庭仕事も終わりに近づき、だんだん足が重くなってきたとき、足があがりきらず、10センチの段差でつまずきドーン。

 両掌と膝をガレージ屋上のコンクリートに叩きつけた。膝のたんこぶにはアイスパックをくくりつけ足を引きずる哀れな姿。

 自分では十分注意してるつもりなのだが…。

流木の山

2009-10-12 21:48:13 | はがき随筆
 西之表港に流木が積まれている。想像以上の量と巨大さに目を見張る。これでは高速船が悲鳴を上げるのも無理はないと実感。
 表面には小さな貝がびっしり付着しており、太陽にさらされ腐敗していくのか、異臭が潮風に乗って流れる。その日の朝刊の記事によると10管、種子島・屋久島漁協などによる、これまでの回収本数は数千本というから、これはほんの一部だ。
 引き揚げられて間がないと見える流木は、水分をたっぷり含み、見るからに重そうだ。巨大な流木の山に異臭も加わって、不気味なムードでさえあった。
  西之表市 武田静瞭(73) 2009/10/12 毎日新聞鹿児島版掲載
  写真は武田さん提供

風船割り

2009-10-12 21:09:45 | はがき随筆
 かつて体育大会の種目。中学3年の男女がパートナーとなって風船割りがあった。男子は遠慮がち、女子は堂々とりードし、バーンと天高く元気よく割れて喝さい、喝さい。
 今年、久しぶりの風船割りが、小学6年と保護者のパートナーであった。ほおとほおに挟んでゆっくり走る。風船割りの地点で、父親が元気よく力を入れる。娘は乙女心で遠慮がちの感を受ける。風船は親子で挟まれ、力いっぱいはじける。
 おつかれさまの気持ちで、愛娘を背負ってゴールに向かう。日ごろの父親の厳しさの顔は、どこ吹く風か。
  出水市 岩田昭治(70) 2009/10/11 毎日新聞鹿児島版掲載

台風

2009-10-12 21:06:27 | はがき随筆
 ここ数年、台風の襲来がないので、豊作が続いて喜ばしい限り。稲作農家は自然が相手だけに始末が悪い。それでも毎年二百十日が迫って来ると気がもめる。殊に稲穂が重く垂れている期間に見舞われるともうお手上げだ。台風上陸後の倒伏した稲田は見るも無残で情けなくなってしまう。テレビやラジオで台風情報を事前にキャッチ出来たとしても、何ら施す術もないのが何ともやるせない。その昔、皮肉にも外国の女性名で呼ばれていた台風も今では懐かしい。願わくば、フィリピン近海で発生する台風よ。心あらば日本近海を避けて通過してほしい。
  霧島市 有尾茂美(80) 2009/10/10 毎日新聞鹿児島版掲載


青いトマト

2009-10-09 22:17:54 | アカショウビンのつぶやき
 去年もこうだった。
 こぼれ種から芽を出した、二毛作? のミニトマトが今頃鈴なり。
 しかし台風が過ぎて一気に秋の気配が深まってきた。熟れずに、このまま落ちちゃうかも…。
 
 今朝の最低気温は18度だった。昨日まで元気だった葉っぱが一晩で弱っている。ダメもとと半分あきらめながら、プランターにビニール袋をかぶせてやった。

 でも、ちょっと遅かったかなあ…。

秋半ば

2009-10-09 22:00:49 | 岩国エッセイサロンより
2009年10月 9日 (金)
「秋半ば」

岩国市  岩国エッセイサロン会員   山下 治子

 遅めにまいた朝顔は「残り物に福」。モクセイの芳香が漂い始めたのに、今朝もまた咲いてくれた。家の中から窓越しに空を映して眺めると、花びらは小さくなっているが、薄紫色と白と青の輪をにじませた朝顔には、小町娘がほほえむようなときめきがある。

 エコブームにつられて姶めたグリーンカーテンは、茎のほうが既に赤茶けている。三つ、四つ……と花がつけば片づけるのがしのびなく、その健気さがいとしい。

 いつまで咲いてくれるかなと思いながら、お疲れ様、ありがとうとお礼の液肥をジョウロの水に加えた。秋の風が葉をゆする。
    (2009.10.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)




逆切れ

2009-10-09 21:58:29 | 岩国エッセイサロンより
2009年10月 5日 (月)
「逆切れ」

  岩国市  岩国エッセイサロン会員   沖 義照

 15年間使った冷蔵庫で氷が全くできなくなった。電気店に診てもらうと、ポンプが壊れていると言われて取り替えた。その後は氷ができ始めて一件落着。

 1週間後、今度は氷ができないばかりか庫内が全く冷えなくなった。心臓部である圧縮機のダウンだ。もう買い換えるしかない。「どうせ壊れるのなら壊れる順番が逆だろう!」。

 ポンプの取り換えに定額給付金分くらいをすでに支払った。ただの箱となった冷蔵庫に向かって素直に「お疲れさん」とは言えず、ドアを何度も開けては新品のポンプを恨めしげに眺めている。
  (2009.10.05 毎日新聞「はがき随筆」掲載)


新型インフル

2009-10-09 21:25:28 | はがき随筆
 新型インフルエンザが猛威をふるっている。
 首都圏に住む小6の孫娘の体の中に、病原体が侵入したらしい。かかりつけの病院で検査したら陰性だという。明くる朝、機嫌もよく体温も平熱である。小4の妹をはじめ家族4人とも全く異常ない。
 感染しても、常日ごろ元気で持病もなければ病原体ははびこれず、病気の症状が現れないことがわかった。
 人込みの中でのマスク使用やうがい、手洗いを励行して、事前に侵入を防ぐことが、より大切なことは言うまでもない。
  出水市 田頭行堂(77) 2009/10/9 毎日新聞鹿児島版掲載

おんな大学

2009-10-09 21:23:22 | はがき随筆
 さあお嬢さん、四角い色紙とハサミを皆に配ってください。その色紙の四つの角を切り取って正八角形を作りましょう。ではもう一度角を切って正十六角形にしましょう。さて、その出来上がった丸い色紙をあなたたちの「心」だと思ってください。自分から進んで角を落としていけば、皆きれいな丸い色紙になるのですよ。隣同士合わせてごらんなさい。ピッタリ気持ちが合うでしょう。少しゆがんでいれば自分で直しましょう。
 では今日はこれでおしまい。
 夏目漱石著「虞美人草」(1907)中のおんな大学とは、こんなものだったでしょうか。
  鹿児島市 高野幸祐(76) 2009/10/8 毎日新聞鹿児島版掲載

風より雨を

2009-10-07 18:11:28 | はがき随筆
 かすかに木の葉が揺れる。風がある。たしかにもうすぐコスモスが風に揺れるころなのに、また今朝、灰がつもっているし朝から噴く。やわらかい葉に灰がつもり、日射を受けて葉は縁を焼いてちぢれてしまった。
 この灰に必要なのは大雨だ。風が吹くとかえって吹きまくり、空気中に絶えず浮遊して呼気を汚しています。降灰の微粒は地中で消却されているので、木の葉に小雨じゃ塗りついて取れはしない。
 要は雨への期待だけだ。
 なぜ降らないの。雲がないから。雲をつくる願いが雨ごいだったのか。
  鹿児島市 東郷久子(75) 2009/10/7 毎日新聞鹿児島版掲載


自分の後始末

2009-10-07 18:01:33 | はがき随筆
 2度目のペースメーカーの手術を終えて退院する日に、元気だった夫が急逝した。
 私はパニックに陥り、体の自由も失った。歩行困難と激しい腰痛……。葬儀は介助してくれた人々のおかけで車いすに乗って何とか終え、一周忌に納骨することもできた。ただ1人暮らしの重度障害者で、左手は肩の高さまでしか上がらない。何でも右手だけでするが、物を落として壊すこともある。歯がゆい。
 80歳という年も考え、自分の後始末をつけておかねばと、4月下旬に広島の妹夫婦に来てもらい、一緒に司法書士を訪ねて遺言状の作成を依頼した。その面倒な手続きに驚き戸惑ったが、何とか公正証書が出来上がった。
 健常な心を持つ今の状態 ▽認知症の気配が感じられた時 ▽死後──その3期にわたる説明と文書の確認が求められた。迷惑をかけたくないので尊厳死宣言公正証書を追加した。献体をし、葬儀、埋葬、供養は不要とした。書類を提出し、公証役場を出た時は、何とも言えない不安と寂しさに食事ものどを通らなかった。
 土地家屋は自分が処分したいが、思うようには進まない。すべてを背負う妹には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。現在体調が悪く呼吸困難を感じる時もある。そんな私を励まそうと常に電話をくれる優しさに救われている。
 ありがとう。迷惑をかけてごめんね。
 鹿児島県薩摩川内市 上野昭子・80歳 2009/10/7 毎日新聞の気持ち欄掲載

風の若おかみ

2009-10-07 17:47:59 | はがき随筆
 いつもさわやかなYさん。彼女には「風の若おかみ」という愛称がよく似合う気がする。
 音楽仲間の、かけがえのない一 人、Yさんは私と同じ街の、ある味噌・しょうゆの製造、販売業者の若おかみさんだ。
 電話すると、ほとんど配達するトラックの運転中。かけ直すことが多い。あの細腕で’、朝早くから、あんなに重たい商品をよくも軽々と、出水市と阿久根市の十何軒も配達できるものだ、と驚嘆させられる。
 彼女の応対の声は、いつも軽やかですがすがしい。もちろん、美しい歌声はよく響く。
 Yさんは、まるで風のよう。
  出水市 小村忍(66) 2009/10/6 毎日新聞鹿児島版掲載

小児科の病室で

2009-10-07 17:40:41 | 女の気持ち/男の気持ち
 長男が小Iの時、急性腎炎で入院した。子供部屋は中学生まで8入。一番小さな4歳のK君は母親がいつも一緒だった。消灯後、K君が休んだのを見届けてから自宅に帰られ、翌日朝早く来られていた。
 ところがその日、母親は一日中姿を見せず、消灯前になってやっと父親が来院
した。
 「お母さんは」と待ちわびていたK君。「今日は来ない」「どうして?」「どうしても」。とうとう「お母さん、お母さん」と泣きだした。父親は「泣くな。早く寝ろ」としかりつける。シーンとした部屋で泣き声と父親の怒る声だけが響く。
 「静かにしてください。ここは病室ですよ」と言う勇気が私にもない。怒る声、泣き声……。
 よし! やっと決心して父親のそばまで行った。ジロッとにらまれ、身がすくんだ。強い口調で「静かにしてください」と言うつもりだったのに、出た言葉は「大変ですね」。自分でも驚くほどの優しい声だった。
 「K君、お母さんは明日早く来るよ。目を覚ましたら待っているよ。もう来たのとびっくりするくらい。今日はお父さんに帰ってもらおうね」
 そう言うと「うん」とうなずいた。父親は「お願いします」と帰られた。
 憤慨していたのにどうしてあんな言葉が出たのだろう。あの時、カッとなった感情のまま声を発していたらどうなっただろうと、今でも思う。
  福岡県嘉麻市 広瀬須代子・69歳 2009/10/6 毎日新聞の気持ち欄掲載

猫は嫌いだ

2009-10-05 22:25:36 | はがき随筆
 犬は好きだけど猫は嫌いだ。ついつい犬と比べるから猫を好きになれないのかも知れない。
 犬は、教えればお座りをするし、待てもする。エサも「良し」と言うまで、ヨダレを垂らしながらでも待つ。
 猫ときたら、飼い主の意向を全く無視している。自分の好きな時に寝て、食いたい時にめしを食う。外に行きたい時は、勝手に網戸を開けて出掛ける。こっちは好意を持っていなくてもシッポであいさつする。
 好きになれない理由は、犬と比べて余りにも気ままで努力していないからである。
 妻は癒やされているらしい。

  出水市 御領満(61) 2009/10/5 毎日新聞鹿児島版掲載

平常心

2009-10-05 22:25:19 | かごんま便り
 高校軟式野球の大会を毎日新聞社が後援している縁で、開幕試合に先立つ始球式を仰せつかっている。登板するのは秋・春・夏と年3回開かれる県大会と、隔年で鹿児島に回ってくる夏の南部九州大会だ。

 初っぱなは着任間もない一昨年の夏。前任者から開会式のあいさつは聞いていたが、始球式は当日まで知らず、あれこれ考えるヒマもなく本番。18・44㍍先の捕手が小さく見える。ワンバウンドだけは避けようと緩い山なりの球を放った。大リーグオールスター戦のオバマ米大統領のように。

 2度目は少々色気が出た。元来、お調子者である。大きく振りかぶり力を込めて投げ込んだのがいけなかった。見事にワンバウンドだった。

 ピッチャーズマウンドの高さは25・4㌢。実際に立つと分かるが、テレビの画面などで見るよりはるかに盛り上がっている感じだ。平地の感覚で投げると球筋は思ったよりも下に向く。力んで放れば言わずもがなだ。

 冷静に考えれば、始球式はいわば余興だ。どんな球を投げても打者は勢いよく空振りしてくれる。捕手が届かない大暴投や打者にぶつけるのは論外だが、格好良く投げる必要などさらさらない。3度目は自分にそう言い聞かせつつ「平常心、平常心」と心の中で繰り返し、力を抜いて投げた。

 結果的には絶妙のコースで捕手のミットに収まったが、その瞬間、平常心は見事に吹き飛んだ。高野連の先生たちから「ナイスボール」と冷やかされたお調子者は舞い上がってしまい、次回はやはり性懲りもなく「力投」する。結果はご想像にお任せするが、以来、こんなことの繰り返しだ。ああ、凡夫の悲しさ。

 言い古されていることだが、平常心が大切なのは何事も同じだ。一方で「言うは易く、行うは難し」とも。昔の人の言葉はやはり含蓄がある。次回の登板は6日の火曜日だが、果たして……。


鹿児島支局長 平山千里 2009/10/5 毎日新聞掲載