はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

マクワウリ

2010-05-07 20:16:49 | はがき随筆
 農家の叔父から今年もメロンが届く。規格外だが味に変わりはない。昔はウリを栽培していた。近ごろは店頭でもウリは少ない。ましてマクワウリともなるとめったにお目にかかれない。この黄色でだ円形のウリは、私の子供のころは主流だった。実家の裏の小川のたまりにスイ力などと浮かべてあった。味は淡泊だったろうが、冷蔵庫のない時代は冷たくておいしかった。私と弟は皮だけになるまでかじって食べたものだった。
 初夏のメロンの時期になると亡き弟との思い出が浮かぶ。縁側で足をぶらつかせながら夢中で食べた遠いころのことが。
  伊佐市 山室恒人(63) 2010/5/7 毎日新聞鹿児島版掲載

09年のはがき随筆・年間賞に竹之内さん

2010-05-05 19:29:40 | 受賞作品
 09年度の「はがき随筆」年間賞に垂水市市木、竹之内政子さん(60)の作品「金御岳」(昨年10月20日掲載)が選ばれた。表彰式は16日午後1時から、JR鹿児島中央駅前の鹿児島市勤労者交流センターである。竹之内さんに受賞の喜びと作品への思いを聞いた。

「共感誘う作品書きたい」

 「宮崎県の綾町からの帰り道で迷ってしまい、たまたま渡り鳥のタカバシラの案内板を見つけて行き着いた先が金御岳。そこで見たサシバのタカバシラに感動したんです」
 タカバシラはサシバなどの渡り鳥が上昇気流を求めて群れ飛ぶさま。柱のように見えることからこの名が付いたという。
 以来、あの日に鳥たちが見せた不思議な光景が忘れられず、渡りのシーズンになると観察地に出かけるようになった。
 88年から営む駄菓子屋の一角に設けたミニ書斎が創作の場。いつも小さな丸テーブルに向かって題材や文の構成を練る。はがき随筆創設のころからの投稿者で、掲載数148回の常連。
 「心が穏やかな時でないとなかなか書けませんね。主人がとても穏やかな性格。こうして投稿できるのも夫のお陰だと感謝しています」
 「活字を読むのが大好き」と言い「休刊日の翌日は新聞が来ないので落ち着かないんです」と笑う。はがき随筆も「投稿者の皆さんの顔を知っているのでページを開くのが楽しみです」。
 これからの創作について「ふだん見逃してしまいそうな瞬間を心に留め、読み手にフフツと笑ってもらえるような、共感を誘うようなものを書きたい」。 【新開良一】


一体感の描写が秀逸

 今年も年間賞を選ぶ時期がきました。
 1年間分の作品からI編を選ぶのは大変で、大いに迷いました。その結果、次の4作をまず候補として選び、その中から選びました。
 出水市高尾野町、清田文雄さんの「四海春」(1月6日)は、雄大な新春の風景に爽快さを感じることができましたが、やや正月向きに過ぎる理由ではずしました。出水市緑町、道田道範さんの「今晩泊めて」(5月11日)は、上質のコントの味わいがあり捨てがたさを感じましたが、少しばかり作りすぎの感が否めませんでした。出水市明神町、清水昌子さんの「風をかわして」(9月24日)は、確かに生活に潜む危機を感じさせる好文章ですが、題名の付け方に一工夫必要だと感じました。
 垂水市市木、竹之内政子さんの「金御岳」は、「タカバシラ」という大空で演じられる自然のドラマ、それに感動する人達のはからざる一体感、この両者の組み合わせがすばらしい文章になっていますので、結局この1編を選びました。
 最近は新しく投稿される方も多くなり、良い文章が目立ってきました。今年も大いに期待しています。
 (鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)


◆ 年間賞作品 

金御岳〈かなみだけ〉
 「タカバシラ」を初めて見たのは一昨年、偶然通りがかった都城の金御岳(かねみだけ)。それ以来、この時期になると心躍る。今年も早朝に自宅を出発して、現地に着くとすでに大勢の人。立派な望遠鏡が並び車のナンバーも遠くは鳥取、福岡、大分……。金御岳は日本でも有数のサシバ観測点であることがうかがえる。
 そのうちタカバシラが確認できると、誰からともなく歓声があがり、一斉にその方向に人が動く。今日、ここで出会った者同士なのにすごい一体感。この日、4500羽のタカバシラがカウントされた。いつの日か生の鳴き声を……。
垂水市市木 竹之内政子〈60〉

自然淘汰

2010-05-05 18:19:54 | はがき随筆
 裏に竹山がある。二月ころは期待して少ない竹の子探しをした。三月下旬からはどんどん出てきた。たくさん掘って知人や子どもにも送ったし、いっぱい食べた。とくに雨の多い今年は「雨後のたけのこ」と言われるほど思わぬところからも出てきた。あまり出すぎて山鍬で切り捨てた。少しやっかい者扱いになった。
 人間は勝手なもので欲しいときは目を皿のようにして探したが、多すぎて困るときは目を皿のようにして探して掘り捨てている。この場合も自然を大切にすることだ。すまない気持ちで「ごめんなさい」と。
出水市 畠中大喜(73) 2010/5/5 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はkusatomoさん

はるじょおん

2010-05-05 17:14:23 | はがき随筆
 花びらの一枚一枚が、小針のようなはるじょおん。
 娘が小学校に入学して間もなくのことだった。
 「春じおんよ」と、空き地を埋め尽くした花を指さすと「はるじょおんだよ」と、訂正されてしまった。
 大人げない意地を起こして、連絡帳で尋ねたところ、担任からの返事は「『はるじょおん』と教えています」だった。
 チビにしてやられた。けれど、小踊りする程うれしかった。
 先生の一言一句を吸い上げる娘のかわいいパワーを見た。
 ことしも、やさしい白や淡いピンクに咲き乱れている。
  鹿屋市 伊地知咲子(73) 2010/5/4 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はcrecsentさん

ご近所のファン

2010-05-05 17:09:43 | はがき随筆
 ご近所さんから「はがき随筆を見ているよ」と言われ、90才のおばあさんがお読みになるとは予想外。私も頭が下がった。
 「ありがとう」とお礼をした。喜怒哀楽の激しい私もなんだか感激した。
 お菓子屋でお菓子を買うと店主が「はがき随筆に載っていたね。いつも見ているよ」と。「ありがとう」と心からお礼した。文章でのストーリーを楽しく語り合った。うれしいばかりかファンがいる。一人二人と声をかけられて感動した。
 ファンにはありがとうの感謝の念を忘れないで今後も夢、希望を抱いて明るく飛躍したい。
  姶良市 堀美代子(65) 2010/4/3 毎日新聞鹿児島版掲載






「春告げ鳥」

2010-05-04 21:28:38 | 岩国エッセイサロンより
2010年5月 4日 (火)
     岩国市  会 員   稲本 康代

 朝、庭の草花をながめていると「ホウ、ホウ……」。あれ、ウグイス?「ホウ、ホウッ」。まさしく発声練習中のウグイスの鳴き声だった。耳をそばだてて聞くと、少々じれったいが、可愛いさえずりだ。

 近所のものしり博士いわく「ホウ」は吸う息、「ホケキョ」は吐く息で、このバランスがなかなか難しいのだとか。

 春告げ鳥の異名を持つウグイス。胸をいっぱいにふくらませながら、さえずっているのだろう。さあ、私も弱気を捨てて「頑張ってるね」と子供たちに言われる春にしよう。    
   (2010.05.04 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載


咲いた

2010-05-02 18:29:17 | はがき随筆
 えっ、それは確かにあのシクラメンだった。
 去年、鉢植えのシクラメンを畑の片隅に植えかえた。鉢植えのシクラメンは、いつも一年で終わってしまう。育つだろうか、枯れてしまうだろうか。たくましく生きよ。
 そんなこんなでもう忘れかけていたら、何と立派に根付き、小さな赤い花を八つも咲かせていた。葉の数は大小さまざまで十枚。水仙が青々と葉を茂らせて、その周りを囲んでいる。まるでシクラメンを守り励ましているかのように─。畑の片隅でひっそりと生きているシクラメン。健気で美しい。
  出水市  山岡淳子(51) 2010/5/2 毎日新聞鹿児島版掲載 
写真はselaさん






2度目のプロポーズ

2010-05-02 17:55:35 | 女の気持ち/男の気持ち
 1時間20分車を走らせる。若年アルツハイマー病で入院している夫に会うために。夫は私を見つけると、うれしそうに「よく来たなあ」と言う。涙を流すことさえある。今日は「一緒になろう」と言った。2度目のプロポーズだ。
 I度目は30年前。それはもううれしかった。昨日のことのように覚えている。2度目の「一緒になろう」は退院して家に帰ろう、一緒に暮らそうという意味だ。夫は病気のせいで適切な言葉が出てこない。医師からはもう自宅に帰るのは無理と言われており、夫の言葉はうれしくて悲しく、複雑な思いで聞いた。
 病気は初めゆっくり進んだ。その間に旅行や岐阜に住む義姉に会いに行った。やがてJRも飛行機も無理になった。夫は介護サービスを嫌がり、私以外はすべて拒んだ。生活は凄まじいものになっていった。
 夜間せん妄を頻繁に起こすようになった。まるで夢を見ているように暴れ出す。突然暴力も出る。私に手をあげたことなど一度もなかったのに、病気のせいなのだ。私は夜が不安になり、眠れなくなった。
 息子が「もう無理。病院に入れよう」と背中を押した。これで楽になれると思ったが、違った。私は入院させてしまったと自分を責めた。ますます眠れなくなり、苦しい日々が続いた。
 夫はまだ私が分かる。それが一番うれしい。一日でも長く続きますようにと、私は祈る。
  山□県下関市 本島由紀子・57歳 2010/5/1毎日新聞の気持ち欄掲載






私は眠れない

2010-05-02 17:52:19 | はがき随筆
 食品工場帰りの二十歳前後の美人と擦れ違う。あいさつをする私を一顧だにせず、地べただけを見つめ歩く。その表情に生気がなく、我が家の米寿のばあさんよりひどい。
 擦れ違うようになり二ヵ月。ど素人の私の見立てでも彼女は重症だ。あいさつに一言付け加えて、きっかけを探る私に糸□をください。
 死に神を背負う生きるしかばねと、今日も出会う。若さあふれる笑顔を、どこに忘れなさったと。耳打ちしてよ、私が取りに行くから。どげんもこげんも八方ふさがりに、彼女は眠れるか。私は二ヵ月も眠れない。
  出水市 道田道範(60) 2010/5/1毎日新聞鹿児島版掲載





すっきり…

2010-05-01 00:00:36 | アカショウビンのつぶやき
 友人のご主人Tさんが、選定に来てくださいました。
小さな庭ですが、夫の命日の前にさっぱりしておきたいと、この時期を選んでいます。

 子供たちの小学校卒業記念の紅白の梅は伸びすぎ、その上今年もアブラムシにやられました。梅の下にある、紫陽花とクチナシはいつの間にか真っ黒け…。早春からオルトランを撒いたのですが…油断しました。
 この梅をさっぱりしたかったのですが今回は見送り。Tさん曰く、いま剪ってもすぐ伸びるから、次にしようと…。あらぁ残念、伸びるから剪ってほしいのに…。

 狭い庭に樹を植えすぎた結果、花も野菜もプランター栽培。プランターが雑然と放置されています。
 「このプランターは、いけんかせんと、また転ぶよ!」
はい、ここで3回も転倒し、大けがをしたことがあるんです。

バラ、イチゴ、野菜、花とまとめて、並べ替えてくださいました。
あらあ、すっきり。これで水やりもらくになりました。

 植えすぎた皐を3本撤去し、鉢植えの白いランタナと梅の下で何年も我慢していた、ぼけもやっと陽の当たる場所へ。花壇用の場所が少しできたので、何を植えようか思案中。
油断するとまたぎゅーぎゅー詰めになっちゃうかもしれない(>_<)