本書を読むたび、母のその「揺るぎない強さ」を目の当たりにするようで、私は驚く。たぶん、彼女のこの資質を忘れていたか、当然のことだと思っていたからだろう。彼女は華奢(きゃしゃ)で、いつも繊細であるように見えたし、その知性の深さや感受性の細やかさも覚えている。しかし、本書を読み返すと、これらの性格にありがちな脆(もろ)さの幻想は抜け落ちて、真実が残る。ともあれ、彼女は1932年に、初めての息子を悲劇的に失った後(注1)、5人の子供を育て上げた。1930年には、アメリカ初の、一級グライダー・パイロット・ライセンスを取得し、1934年には、航空と探検に関する冒険に対して贈られる「ナショナル・ジオグラフィック・ハバード・メダル」(注2)を与えられた最初の女性となった。
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・注1:リンドバーグ愛児誘拐事件。1932年3月1日、初の大西洋単独無着陸飛行に成功したことで有名な飛行士チャールズ・リンドバーグの長男チャールズ・オーガスタス・リンドバーグ・ジュニア(当時1歳8ヶ月)がニュージャージー州自宅から誘拐される。現場には身代金5万ドルを要求する手紙が残されていた。10週間に及ぶ探索と誘拐犯人との身代金交渉をしたが、5月12日に邸宅付近でトラック運転手が、長男が死亡しているのを発見した。
・注2:ハバード・メダル(Hubbard Medal)は ナショナルジオグラフィック協会が顕著な探検や発見、研究を行った人物に贈る賞である。賞の名前はナショナルジオグラフィック協会の初代会長のG・G・ハバード (Gardiner Green Hubbard) に由来する。
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