庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

セヴァン・カリス・スズキ

2007-02-28 18:04:35 | 自然


今朝、この全文を読んでたら不覚にも涙を落としてしまった。探偵ナイトスクープの西田敏行ではないけれど、近頃涙もろくなったのかもしれない。(余談:彼とは学生時代、TVエキストラのバイトをしていた頃に生田スタジオで一緒に飯を食ったことがある)

カナダの12歳の少女が、地球環境サミットで地球の危機を訴えたスピーチだ。全文は自然保護を企業テーマにしている山田養蜂場のHPにある。彼女の大人世界への糾弾は鋭く正しく、子供たちがどれほど素晴らしく賢明な存在であるかが良く分かる。まさに大人は子供からこそ学ばなければならないのだ。すでに彼女も大人になって、現在は国連のサミット諮問委員としてますます活躍している。

それから、今朝の愛媛新聞で宗教学者の山折哲雄が、明治に輸入された「個人」と、古くから日本の歴史の中にある「一人」という言葉を持ち出して、この「個」について日本文化に基づいた深い検討が成されてこなかったことの問題を論じている。

実は彼も筋金入りのエコロジストで、すべてのものに神が宿るとする「万物生命教」とでもいうものが地球上でもっとも普遍的な宗教意識であり、自然との共生を語るだけでは片手落ち、「共死」という考えを導入することで共生は完結すると主張する。

砂漠地帯で生まれた一神教と比べて、実に豊かな自然の中で生まれ、森羅万象に内在する仏性と諸行の無常を説く仏教が、今後どれほど具体的に自然保護運動の展開に貢献していくか・・・大きな楽しみである。

ただ、私は自然保護という用語はあんまり好きではない。自然から常に保護されているのは人間の方なんだから・・・。


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スパムメール対策

2007-02-26 23:12:00 | その他
WEB上でメールアドレスを公開している限り、まあ仕方のないことではあるが、数年前からスパム(迷惑)メールの量が増えてきて、最近は毎日100通を越えるようになった。

去年までOE(OutlookExpress)の振分け機能で5割方、残りはひたすらデリートで対処してしてきたのだが、あんまり鬱陶しいのでこないだから「SpamFighter」というネット機能をフル活用したソフトを使ってみたらこれがとても良かった。ところが基本的に有料ソフトだけあって、試用期間が終わったら送信メールにこれまた鬱陶しい宣伝文が付くようになった。

それではと、フリーの「迷惑メール振分けソフト」を幾つかDLしてみたのだがどれも設定が面唐ナ使いものにならない。これはもう、メーラー自体を変えるしかないという結論に達した。

そこで、数日前から迷惑メール撃退機能が充実しているというベッキーを試し、最終的にサンダーバードに落ち着いた。これももちろんフリーのメーラーだが、OEの設定をそのまま簡単に引き継ぐことができる。動作が軽いし、学習能力があるというフィルター機能もすこぶる優れていて、すでに9割方自動的に削除してくれている。ありがたいことだ。これでつまらない作業に貴重な時間を使わないで済むようになるかもしれない。

ことほど左様に、文明の利器は常に便利と不便、明と暗が背中合わせになっている。人間が作り出したものはすべからくそうだと言えるだろう。小は手近な生活道具から大は社会国家の諸制度に至るまで、何らかの幸福を作り出すための道具が、同程度の不幸を作り出さずにはいない。

であるとするなら、もの作りを止めることができない宿命をもった人間が、自ら作り出したものの中で取るべき賢明な生き方は、幸不幸の狭間で幸の方向を見る眼を堅持するということではないだろうか。つまり「楽観主義」を採用することである。これを「幸福主義」と言っても差し支えない。どんな環境でも何があっても、心の持ち様を幸福の方向に向けることである。具体的には「・・・ありがたい・・・」と思うことである。

こんなことは、山ほどある人生論や処世術に書いてある単なる観念論ではないか・・・と思われるかもしれないが、実はそうではない。単なる観念は客観的現象を生まないが、心底からの感謝の一念は必ず何らかの具体的事実として現れ、手に触れることのできる形となって結果する。これがこの地球上に無数にある生命体の一つである人間という変な存在の面白いところだ。
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ビクトル・ユゴー

2007-02-26 15:46:16 | 言葉
今日2月26日はユゴーの誕生日。英訳から少し彼の言葉を拾っておこう。



Adversity makes men, and prosperity makes monsters.

逆境は人間を作り、繁栄は怪物を作る。

An intelligent hell would be better than a stupid paradise.

聡明な地獄は愚かな天国よりも良いものだ。

As the purse is emptied, the heart is filled.

財布が空になるにつれて心が満たされる。

Fashions have done more harm than revolutions.

流行は革命よりも害をなしてきた。

Forty is the old age of youth; fifty the youth of old age.

40歳は若年の老齢、50歳は老齢の若年。

Have no fear of robbers or murderers. They are external dangers, petty dangers. We should fear ourselves. Prejudices are the real robbers; vices the real murders. The great dangers are within us.

強盗や殺人者を恐れることなかれ。彼らは外側の些細な危険である。我々は自分自身を恐れるべきだ。偏見が真の強盗であり、悪徳が真の殺人者である。巨大な危険は我々の内側にある。

It is from books that wise people derive consolation in the troubles of life.

賢明な人々が生活上の困難から慰めを得るのは書物である。

Mankind is not a circle with a single center but an ellipse with two focal points of which facts are one and ideas the other.

人間は中心を一つしか持たない円ではなく、理想と現実という二つの中心を持つ楕円である。

The first symptom of love in a young man is timidity; in a girl boldness.

男の臆病、女の大胆・・・これが若者の恋愛の最初の兆候である。

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水木しげる

2007-02-26 11:10:06 | 自然
昨夜のNHKアーカイブスに66歳の水木しげるが出てきた。『妖怪たちはどこへ行った・水木しげるの寝ぼけ人生』・・・平成元年、20年近く前に放映されたものだが、私はどうやらこの番組を観ていたらしく、部分々々の記憶がはっきり蘇ってくる。

彼は召集されて行ったニューギニアの原住民の生活に強く魅(ひ)かれ、戦争が終わっても現地に残ることにしたのだが、上官の説得で帰国し、戦後日本の混乱と喧騒の中で大変な苦労をしている。

ニューギニア原住民といえば、食生態学者の西丸震也も彼らの生き方に深く共鳴する人物であり、私はずいぶん以前からお二人のファンである。1922年と1923年生まれで同じ時代を生き抜いてこられた大先輩だ。お二人ともまだまだお元気なのが嬉しい。

水木しげると西丸震哉
 


初対面で気が合っちゃうわけですね、言葉が通じなくても。ということはね、いろいろ今頃になって考えてみると、彼らは森の人ですよ、いわば。人間よりも森が多いですから。だからそういう中で育つと、人間の心も何パーセントか直物化するんでしょうかね。いわゆるこう、植物と同じような感じが入ってくるんでしょうね。

だから、なんとなく暖かいし平気なんですよね。ほいで、彼らもそういう、何ていうのかな、いわゆる社会生活やいわゆる都会の生活というものがないわけですから、素直に育っちゃうわけですよ、子供のときから。だから素直な人たち、巨大なベビーですよね、ある意味で。

で、私も考えてみると巨大なベビーだったわけですよ。今頃になって分かったですけどね。ていうのはその、一部の頭は大人になっとるけど、子供のままの部分がかなりあるわけですよ。最近になって分かったですけどね。だからその子供の部分が一致するんでしょうね。で、半ばもう彼らと同じような生活をしとったんですわ。
--------------------------

やっぱりこの転生を信じたいわけですよね。生まれ変わるってことを。これは世界いたるところありますから。だけど、ただ確証もないから・・・まあ、転生すればいいと思ってますけども、ひょっとしたら何もないかも分からんです。何もないと思うとこりゃ寂しいですよね。やっぱ生まれ変わるという考え方をいろいろ研究して、頭の中にこう植えつけなきゃいけないんじゃないかと思ってますけどね。

人間に生まれ変わるより、もちょっと楽なもんに生まれ変わったほうがいいじゃないかと思いますけども、虫なんかに生まれ変わるといきなり殺されますから、ありゃちょっとかなわんですけど、もちょっと楽な何かがあるんじゃないかと思いますけどね。

人間はあれですよ、この漫画描きなんかに生まれたら忙しいばかりで、もう何もないですよ。ハッと気付いたときは60歳でしたからね。あ!これから楽しまなきゃならない。時間が余ってしまったな・・・て感じなんです。

無我夢中で働かされるんです。ちょっとねえ、慌しすぎるんですよ、この日本の毎日の生活ってのは。もうちょっとゆったりした自分の時間みたいなものが欲しいわけですよ。たとえば仮に8時間労働でもね、私なんかでもそうですけど、話の筋なんか考え始めると、いったいこれ面白いのかな面白くないのかななんて考えちゃうと、8時間労働では終わらない。家に帰ってからまで考えますからね。風呂入ってから寝てからまで考えますから。そういうのは、こう、心配をしょっちゅう持ってる感じなんですよね。

だからこの、まあ胃癌は関係ないかもしれんけど、胃癌なんかなったりする人が多いってのは、やっぱこの仕事から来る心配みたいなものが多いからじゃないかと思うんですよ。だからこういうこのなんて言いますか、猛烈に働いて心配社会みたいな感じになってるんで、それがこう今嫌なんですよね。物が豊富になったことは結構なことですけどね。

だけど、何て言うんですかね、自分の地位なり何なりを確保するためにかなり心配しなくちゃならんということ。やはりこりゃえらいですよね。だからこう、幸せを感ずる余裕がないんじゃないでしょうかね。

妖怪もまた、この現実にはないけどもいるかもしれないと、そういう世界があるってことを考えるだけでも面白いし、事実またそういういうおぼろげながら何かいるじゃないかと、これがまあ妖怪をいじくる原動力なんでしょうね。すなわち快感があるっていうこと。すなわち現実が嫌いだっていうことですよ。あまり好きじゃないってことですよ。だから夢想の世界の方がファンタジーの方が子供のころから好きだったから。


今年で85歳の水木は「最近はどんどん人間離れして妖怪に近づいてきています。そのためますます元気ですよ。」と言っている。
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お堀の梅

2007-02-25 23:42:54 | 自然
昨日から幾らか冬らしい寒さが戻ってきた。久々にピンと張った大気の感触が心地良い。いつもの自転車散歩で河原まで出たら、石鎚連山の1500mほどから上が雪できれいに覆われているのが遠望できた。

今日は冠雪の境目が一直線に整っているのに妙に感心する。標準大気の気温減率でいくと平地に比べて10℃ほど下がる一線がちょうどこの高度になる。自然の法則性が描き出す幾何模様は、やはり誤魔化しようがなく見事なものだ。

例年はこの時期、お堀の白梅・紅梅が美しく、私は毎年楽しみにしているのだが、今年は西堀端も南堀端も一本残らず枝切りがしてある。何か植栽上の理由があるのだろうが寂しい限り・・・それでも数本の八重桜は元気に花を付けている。


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学問

2007-02-23 11:44:39 | 言葉
子曰、君子不重則不威、學則不固、主忠信、無友不如己者、過則勿憚改、

子の曰わく、君子、重からざれば則ち威あらず、学べば則ち固ならず。忠信を主とし、己に如(し)からざる者を友とすることなかれ。過てば則ち改むるに憚ること勿(な)かれ
-論語・学而第一

先生がいわれた、「君子はおもおもしくなければ威厳がない。学問をすれば頑固でなくなる。[まごころの徳である]忠と信とを第一にして、自分より劣ったものを友達にするな。あやまちがあればぐずぐずせずに改めよ。」

※現代語訳は論語の世界から引用させて頂きました。

論語が面白い。国語辞典では、“君子”は「すぐれた教養と高い徳をそなえた人格者」とあり、和英辞典では、"man of virture"(徳のある人物) とか、単に“gentleman"(紳士)というのもある。最も現代風に言えば「人格者」ということになろうか・・・。

はじめの部分はどうでもよい。これが「君子はおもしろくなければ威厳がない」となってれば拍手喝采するところだが・・・次の「学問をすれば頑固でなくなる」が面白い。普通、学問をすれば頭が固くなって柔軟な発想ができにくくなると思われることが多く、実際そういう例も多いのだが、それは中途半端な学問にすぎない。

さまざまな“ものの見方”を知れば、いやでも自らの見方もその一つにすぎないということが分かるのだから、頑固になりようがないのである。

そもそも、学問とは“問う”て“学ぶ”ことの連続の上に成り立つもので、生きた問いを発するには、ものに触れて驚くみずみずしい感受性と旺盛な好奇心が不可欠だ。その上に立ってはじめて主体的に学ぶ姿勢ができる。

ついでに、教育の字義は“教え”“育てる”ことであるが、教育が成立するために最も大切な条件は、その対象にこの基本姿勢があるということで、人間はこの世界に生まれ出たとたんに、新しい環境世界での出来事の数々に否応なく驚かされるのだから、どんな人間もその姿勢は生まれながらに持っているのだ。つまり、子供は生来、学問するようにできている。

ところが依然、管理教育、押し付け教育、減点教育などが盛んなこの国では、この無限に伸びようとする子供たちの学問の芽を、枯らし、踏みつぶし、切り取りとるという無残なことを平気でやっているのだ。

私は、安直に「教育は死んだ」「学校は死んだ」などと言うつもりはないが、多少なりとも教育に関わって生きている人間には、「子供の心を殺すなよ」とだけは言っておきたい。子供の心が死ねば、それが育って大人の心が死に、それが集まって人間社会の心が死ぬからである。
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自由の試薬

2007-02-22 13:51:00 | 大空
The most certain test by which we judge whether a country is really free is the amount of security enjoyed by minorities. Liberty, by this definition, is the essential condition and guardian of Religion;
- Lord Acton

ある国家が真に自由であるかどうかの確実な試薬は少数者が享受する安全の量にある。この定義によれば、自由は宗教の基本的な条件であり保護者である・・
- アクトン卿


これは、アクトンが1887年の2月に行ったu演の一部。「権力は腐敗する・・・」と看破したこの人物については、少なからぬ思い入れがあるので、この“The History of Freedom in Antiquity"の講演を全部、 仮題『古代の自由史』として末オてみることにした。

訳を進めるに連れて自らの教養・素養の無さを痛感してはいるが、これはいつものことなのでどういうことはない。同時進行で勉強をすればよいだけのことだ。

しかし、ほんとうに西欧を知るにはどうしてもラテン語・ギリシャ語の世界に多少は脚を突っ込む必要がある。加藤周一は電車の中でラテン語をマスターしたらしい。有限の人生、限られた時間でどこまでできるか分からんけど、これもちょっと楽しみながらやってみようか・・・と思っているところ。

私の青春前期はこの人の影響が大きい。

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退院

2007-02-21 21:13:00 | その他
10日ほど前にハートクラッシュを起こして入院していたレッツノートが本日無事退院した。これがあれだけの情報を出し入れしていた40GBのノート用ハードディスクだ。



発送してからわずか6日で完了。今回お世話になった修理屋さんSUSは、実に誠実でスムーズな対応をしてくれた。良い機会だからと2割ほど回転の速い60GBにアップグレード換装したのだが、これで3万円ちょっとの費用だから、メーカー送りの何分の1かの出費で済んだことになる。

ただ、ちょっと困っているのは、入院中替わりに使っていた、ノートの2倍以上の能力を持つデスクトップがもうすっかり体に馴染んで、冷却ファンが少々うるさいことを除いては、ビデオ類はもちろん、あらゆるソフトの処理がきわめて軽快・快適になっているということ。

これまでのようにFSと録画の用途に役割分担させれば良いだけのことではあるが、モニターやキーボードやマウスをいちいち切り替えなくて済む利便性も、ちょっと捨てがたいものがあるのだ。これも有難き現代文明が次々生み出す贅沢と不便の感覚の一つであろう。

・・・と、ちょっと調べてみたら、モニター切り替えだけではなくて、全部いっぺんにしかも簡単なキーボード操作でできる「パソコン切替器」なるものが複数のメーカーからちゃんと出てるではないか・・・やはり同じような悩みを抱えている人が大勢いるということだ。

PC関係でもう一つの今日のニュースは、何年も使っているYahooBB・ADSL12Mのネット回線をNTTのフレッツ光に遂に変えることにしたということ。これについては経過も含めてまた書く予定。
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論語

2007-02-21 12:25:56 | 言葉
子曰、君子和而不同、小人同而不和、

子の曰わく、君子は和して同ぜず。小人は同じて和せず。
- 論語 巻第七 子路第十三

先生が言われた、「君子は調和するが雷同しない。小人は雷同するが調和はしない。」

子曰、學而時習之、不亦説乎、有朋自遠方来、不亦楽乎、人不知而不慍、不亦君子乎

子の曰わく、学びて時にこれを習う、亦た説(よろこ)ばしからずや。朋あり、遠方より来たる、亦楽しからずや。人知らずして慍(うら)みず、亦君子ならずや。
巻第一 学而第一

先生がいわれた、「学んでは適当な時期におさらいをする、いかにも心嬉しいことだね。(そのたびに理解が深まって向上していくのだから。)だれか友達が遠い所からからも尋ねて来る、いかにも楽しいことだね。(同じ道について語り合えるから。)人が分かってくれなくても気にかけない、いかにも君主だね(凡人にはできないことだから。)」

※現代語訳は論語の世界から引用させて頂きました。



「和を持って貴しとなす・・・」は聖徳太子の憲法17条の最初に出てくる一句だが、その後に「忤(さか)ふること無きを宗(むね)とせよ」、つまり「反抗するな」と続く。何に反抗するな、か・・・言うまでもなく当時の朝廷権力だ。

彼が、論語の「君子は和して同ぜず」から、その「和」の概念を抽出しようとしたかどうかはともかく、人の和が本当に貴くなるには、孔子の言う「同ぜず」の精神が不可欠であることには、知ってか知らずか、彼は触れていない。

論語は儒家の聖典として日本でも長い間読まれ、堅牢な封建体制の思想的バックボーンになったことは周知の事実で、現在も多くの経営者や指導者の伴侶になっている。

私はずっと、論語は封建時代の遺物・・・程度の理解でいたが、しかし、心を白紙にして読んでみると、これがなかなか大した哲学書ではないか。「君子は調和する」しかし「雷同しない」・・・こんな言葉は、よほど独立した個人としての自覚がないと出てこないだろう。

また、学而第一の「学びて・・・」の最後の段、「人知らずして慍(うら)みず」などは、一段、二段を受けることによって、より屹立した一人の人間としての強さと余裕を感じさせる。

やはり、古典は虚心になってじっくり読み込むべきものである。身長190cmに近い大男の人生の大半が“無冠の一学者”に過ぎなかったということも忘れるべきではないだろう。
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息抜き

2007-02-19 00:26:04 | 言葉
Every now and then go away, have a little relaxation, for when you come back to your work your judgment will be surer. Go some distance away because then the work appears smaller and more of it can be taken in at a glance and a lack of harmony and proportion is more readily seen.
- Leonardo da Vinci

たまには仕事を離れて、ちょっと息抜きをしてみるがいい。仕事に戻って来たら君の判断はより確かなものになっているだろう。いくらか離れたところに行ってみるがよい。そうすればその仕事がより小さく見え、更に何をすればよいかを一目で見ることができ、調和と均衡が欠けていたのを容易(たやす)く見て取れるだろう。
レオナルド・ダ・ビンチ




最近、ものごとの「調和」について想うことがよくあって、“harmony”で箴言類をちょっと拾っていたら、ダビンチのこの言葉を見つけた。

あれだけ多彩で膨大な仕事を残した天才的人物でも、やはりさまざまな理由で人生に行き詰ったり、どうしようもないスランプに悩むこともあったのだろう。

彼の自画像は半端な批評を許さないほどの迫力があるが、特にあの深い眼差しの中には、ものごとの本質をどこまでも見抜こうとする鋭さと共に、厚く降り積もった悲哀の痕跡があるように私には見える。 
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