Heaven is under our feet as well as over our heads.
-Henry David Thoreau
天国は我々の頭上にもあり足下にもある。
- H・D・ソロー
今日5月6日(アメリカ)はH・D・ソローの命日である。後にガンジーやキングやトルストイにまで強い影響を与えたこの稀有な人物は、1817年の夏に生まれ1862年の春、わずか46歳の若さで亡くなっている。今日彼の地では自然と自由を愛する幾人もの人々が彼の生涯や思想に深い想いを致していることだろう。好きな一文をもう一つ。
However mean your life is, meet it and live it: do not shun it and call it hard names. Cultivate poverty like a garden herb, like sage. Do not trouble yourself much to get new things, whether clothes or friends. Things do not change, we change. Sell your clothes and keep your thoughts.
-Henry David Thoreau
自分の生活がどんなにみすぼらしくても、忌避せず、過酷なものと思わず、それに立ち向かい、生き切ろう。セージなどのガーデン・ハーブを育てるように、清貧の土壌を耕そう。衣類であれ友人であれ、新しいものを得るために、あんまり自分を悩まさないようにしよう。周囲のものごとは変わらない。変わるのは自分自身だ。着飾りを売り払い、自らの思想を養おう。
- H・D・ソロー
若くして世を去ったという点では、憲法学者の鈴木安蔵が発掘した高知の自由民権論者、植木枝盛は若干35歳だ。鈴木の尽力で彼の私擬憲法案の存在が注目されることになり、明治の市井の先人が既にいかに先駆的な国家観と人権思想を自らのものにしていたかが明らかになった。
植木の『
東洋大日本国国憲按』は、戦後、憲法研究会の民間草案に受け継がれ、それをGHQの法学博士ラウエルなどが極めてリベラルなものと評価し、民生局長ホイットニーに確認され、最終的にGHQ草案となって政府・松本委員会の旧態依然の草案を一蹴することになる。
植木の「国憲按」は全18篇220条に及ぶものであるが、第4編の人権条項では、思想・信教の自由はもちろん、死刑の禁止から革命権の保障までうたう先進的なもので、ある意味現在の憲法を超えたものであった。これを読むと、日本に於いてまさに「
自由は土佐の山間より」生まれ出でていたことがよく分かる。
いまだに「押し付け憲法論」をたのみに憲法改正を主張する人たちが多いが、憲法の成立史を少しでも知れば、その主張に根がないことは容易に明らかになるだろう。もっとも、権力好きな人たちへ「押し付ける」ことこそが立憲主義の本質なのだから、彼らに
押し付けている国民が、押し付け
られていると感じる義理などそもそも全くないことである。いいかげん道理に合わない夢からは覚めたほうがよろしい。
国民の間から生まれ育とうとした自由・人権への息吹を、異常とも言える情熱を持って叩き潰してきたのが明治以来の政府であったし、敗戦後の政府も子供だましのような「松本案」しか作れなかったのだ。故あるかな・・・である。
「過去の原因を知ろうと欲するなら、その現在の結果を見よ。 未来の結果を知ろう欲するなら、その現在の原因を見よ」とはある仏典の至言だ。過去も現在も未来も厳然と連続している。現在をよく知り、良き未来を創るためには、歴史の一層深いところに埋まっている事実を、もっとしっかりと見取っていく必要があるだろう。