庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

海からの贈りもの 前書き 3

2019-07-09 12:06:00 | 創作

 私は自分自身を前に進めるために、彼女の智恵と勇気を再び必要としていると感じていた。そして、希望し期待していたとおり、彼女が私を失望させることはなかった。『海からの贈りもの』の、どの章やページを開いても、筆者の言葉は、一休みしながらもっとゆっくりと生きる機会を読者に与えてくれる。本書はその環境がどうであれ、人を「今・現在」という時間の中に、静かに落ち着かせ休息させることを可能にする。その全部でなくても、ほんのわずかでも読むと、読者はしばらくの間、日常を離れた、より平和な速度で生きることになる。彼女の言葉のゆらぎや流れそして抑揚さえも、安らかで避けがたい海の動きに言い及んでいる、と私には思えた。

 

私の母が、これを意識的に書いたのか、あるいはこれを書く間、砂浜を歩きながら暮らした日々の、自然な結果であったかは定かでない。その理由が何であれ、本書をほんの数ページ読むだけで、海辺の脈動の中で私はくつろぎ、自分自身が潮の満ち引きにと共にある何ものか、であるように感じ始めるのである。ちょうど、この大宇宙という太洋の、壮大なリズムの中に浮かぶ漂流船の欠片(かけら)のように。この感覚はそれ自体が深く確かなものだが、本書の中には、心の平穏以上のもの、静かな生活や静かな言葉から来る、潮の満ち引きに似た心地よさ以上のものがある。これら全ての底流にあるものは、確固として揺るぎない強さである


リーヴ・リンドバーグ(作者・アン・モロー・リンドバーグの末娘)
Reeve Lindbergh



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