岩倉実相院 2005年9月
同志社、京大、立命館の日本歴史の先生方が、京都市内外の15のコースを案内するという体裁の本。
歴史の専門家にかかると、重層的に積み重なった京都の歴史が明らかになり、今、私たちが「京都らしさ」と感じているものよりもずっと複雑らしいことが分かる。いろいろな勢力が、この都市と関わってきた痕跡が、よく見るとあちこちに残っていて、それを訪ねるのは面白いうなと思った。
京都は近代になって整備し直され、また戦後の高度経済成長時代に、観光都市として飛躍的に発展した街。今見えているものは案外浅い歴史だったのが分かって意外だった。
この本で新たに得た知見、花街はおもてなしだけではない歴史があること。明治になって整備された京都御苑は、近代天皇制を知らしめる場所でもあったこと。そして、京都の伝統行事も近代になって多く復活されている。
葵祭が明治になって、復活されたのにはとても驚いた。源氏物語の昔から連綿と続いているとばかり思っていた。
嵯峨野、宇治の観光地としての整備は、物語をあたかも現実にあったことのように錯覚させて観光客を呼び込む試み。なるほど。嵯峨野は野宮神社や直指庵ではなく、何よりも二尊院。信仰の王道。
源氏物語や平家物語に引っ掛けて名所を復活させたり、整備する。人は想像力だけでは観光できないので、分かりやすい目印大切。見て納得する。
それを知ったうえで、騙されまいと歩いてみる。それもまた一興かと。京都を歩くのに必携の書と思われます。
岩倉実相院近く。対岳文庫。岩倉具視の資料を保存展示している。武田五一設計の瀟洒な建物。2005年9月、平日で見学者は私だけでした。