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「火の昔」 柳田国男

2017-02-10 | 読書

2014年末、藤が丸山で。携帯用の軽量な燃料を燃やし、今から味噌汁作ります。


遠野物語で有名な民族学者の、火にまつわる歴史と聞き書き。たいそう面白かった。昭和18年上梓。今回読んだのは2013年、角川ソフィア文庫。

人類は火を使うというけれど、熱と光を得るための火も、その始まりから今まで、ものすごく変遷し、進化してきたことを実際の例を知って、しみじみと実感した。

世界史的に見て、人類が火を起こす方法は三種類あるそうで…あたりからワクワクしながら読んだ。

乏しい燃料を工夫して、いかにうまく煮炊きをし、暖を取り、闇を明るくするか、そのたゆまぬ工夫の連続。

木の枝を焚き、油を焚き、蠟燭ができて、行灯や提灯ができて、ガスになり、石油になり、電気になりと明かりだけでも気の遠くなるような時間をかけて進化してきたわけで、時代と土地の制約を受けながらも、ついこの間まで、火を使うということを中心に暮らしがまわっていた。それを全国各地の例を出して、図版入りで説明するので、火打石くらいしか知らなかった私だけど、さてその火花を何につけて火を起こすかということまで考えたことはなかった。

実にいろいろな火を移す焚きつけ、燃料もいろいろ。昔は水と燃料の木が取れるところに街ができたそうで、今はその制約からはかなり自由になったけれど、社会的インフラなくして暮らしの成り立たないことは今も昔も同じ。そして女性は何よりも火を節約しつつ、上手に煮炊きする腕がないことには大人と言えない。大変です。

遠い遠い祖先の懐かしい声が聞こえてくるような本でした。


で、昭和生まれの私の見た、暖房器具や、燃料など思い出すままに書いてみます。

ある時、息子に「火鉢って何?」と聞かれてびっくり、説明してやると「そんなもんで暖かい?」とさらに聞かれました。親の知っていることを子供は知らない。どこかで読む若い人のために。自分自身の備忘ために。

コタツは、土を瓦のように焼いた箱型。中に炭火を入れて布団をかぶせて暖を取る。

大きな掘りごたつも同じように炭火を入れて、宵の口だけ暖かい。豆炭あんかというのもあり、隅の粉を丸めたたどんを入れて使う。

やがて電気炬燵や一人用電気あんかが登場。石油ストーブにガスストーブ、今はエアコンですが。

煮炊きの燃料は我が家はもっぱらもみ殻。一年中の煮炊きするだけの量があった。もみ殻用のかまどは薪と違って手前上から燃料を落とし込むタイプ。それ用のかまどが家にあった。手前がご飯、奥は茶釜で沸かすお茶、おかずは七輪だったと思う。

照明は白熱電灯から蛍光灯に変わるくらいの変化だけど、昔は灯火の燃料も貴重、たくさんの本を読み、たくさんの著作をあらわした昔の学者はさぞ大変だっただろうとこの本にはある。

今のぜいたくな暮らしをときどき反省する好著。


読書のエントリーは久しぶり。本読んでなかったわけではないけれど、ここに書く余裕がなくて。年末年始の数冊はいずれまた。

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