特定緊急事態宣言都府県以外の県知事さん方は、明日と予定される緊急事態宣言解除後も県をまたぐ移動の自粛を求めている。
どこまで島国根性なのか、県境に壁も関所もない県境閉鎖もしないヒトダダ洩れの世の中で、「県をまたぐな」という発想は、町をまたぐな、町内をまたぐな、家の界標をまたぐな、という村意識のあらわれで、それなら、奈良や滋賀から大阪への出勤、栃木、群馬から東京への大量出勤、物流や交通に係るヒトの頻繁な行き来も止めなければ、趣旨が一貫せず、ウィルス流入対策にならんだろう。
例えば今の東北地方、感染数が少ないからと県内の移動制限は許しておいて、感染数の少ない、あるいはゼロの隣県への移動自粛を求めるのは意味不明だ。
なにゆえに、こんなに怒っているかといえば、大好きな隣県の岩手、山形、福島の山々や温泉地にさえ、6月以降も「入ってくるな!」、「登るな!」と諫められ、白い目で見られることが辛いからである。
地方のリーダーたちには、いつまでも、こんな島国根性を振りかざすのはやめて、せめて「検査をして感染していないヒトは、どうぞご自由にお入りください」という発想に切り替えるべきではないのか。抗原検査が承認された。早く、安く、迅速に検査ができるその日を、首を長くして待ちたい。
青葉の森は、3月のキクバオウレン、カタクリ、ショウジョウバカマにはじまって、4月のタチツボスミレほかのスミレ属、イカリソウとつづき、5月半ばのいま、林床はしっとりした薄紫のアヤメの仲間のヒメシャガ咲き誇り、純白のチゴユリやマイズルソウといったユリ科の花が暗くなり始めた草むらにひっそりとひかえめに咲いている。
自粛がなければ、こんなに青葉の森を歩くこともなかったし、こんなに彩の変化を目の当たりにすることがなかった。高い山に行けば、いまごろ雪解けの後に、ニリンソウやキクザキイチゲなどが咲き誇って、そろそろハクサンイチゲやチングルマも咲き始めているのだろうが、徒歩圏内の低い山であっても、なかなか味わいがあることに、いまさらながら気づく。
シャガより薄紫に色づいて美しいヒメシャガ
一眼マクロで撮ってみた。
林床だけではない。木々も花の時季だ。ツリバナ、ハウチワカエデといった、これまで見向きもしなかった花は、じっくり観察すると美しい。
ハウチワカエデの赤く小さいのが花で、ピンクの翼を広げたようなのが果実の皮にあたるところが翼果と呼ばれているところ。どのような受粉の過程を経て、果実に種が宿されるのか、考えたこともなか
どうやら赤く小さいのが雄花で、翼果がついているのが両性花といわれ雌しべがついている花なのか。
眼の高さに、小さく美しい花がたくさんぶら下がっている。ニシキギ科のツリバナのようだ。低木の世界にも美が宿っている。
森に行く途中、橋の上からホオノキの花が開いていたので、撮影することができた。
ホオノキ、オオヤマレンゲ、ハクモクレン、コブシ、タムシバ、タイサンボク、いずれもモクレン科モクレン属で、学名にMagunoliaが冠されている「マグノリアの木」の仲間だ。
賢治は童話「マグノリアの木」で、ホオノキをマグノリアとしているが、木が高いので橋の上からでも眺めないと花の姿を望むことがむつかしい。東北の野山にいっぱい咲く花といえば、ほかにコブシやタムシバもある。一番美しいのは、いっせいに天を仰ぐハクモクレンなのだろうが、野生では見たことがない。童話の「・・・山谷の刻みにいちめんまっ白にマグノリアの木が咲いているのでした。」とのくだりは、コブシでもタムシバでもいいのだし、むしろ純白なのはこれらの花だろう。ホオノキの花はやや黄を帯びている。
マグノリア・・どれもこれもが白い花弁が美しく、「天に飛びたつ銀の鳩」、「天からおりた天の鳩」、賢治が言ったように天上と地上を結ぶシグナルのような花だ。
5月の、青葉山。まだまだ通い続けて、これまで見過ごしてきた花たちの美と生きる術を教わりに行こうか。一期一花(いちごいっか)自粛の旅は続く。