けい先生のつぼにくる話

はりきゅう漢方の先生が教えてくれる健康に関する話
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ご懐妊!お灸の威力

2006-12-29 02:00:37 | 婦人科系疾患
ご懐妊!お灸の威力

今月は3人ほどめでたくご懐妊された患者さんがいらっしゃいました。
何故かわからないが妊娠しない方、生理の期間が異常に長くて時々排卵がない方、極端な冷え性の方の三人です。
もちろん鍼灸と漢方薬の処方はしておりましたが、これらの方々に共通するのは「ご自分でお灸をしていた」ということです。
それもたったの一箇所「三陰交」です。使ってもらったのは「せんねん灸」とか「長生灸」などと呼ばれるインスタントのお灸です。
このお灸を始めると、間違いなく生理の痛みが軽減されます。自分でからだを可愛がれば、必ずよい結果が出るというよい例でした。
また、40代で生理がとまった方には、インスタントではない米粒大の直接灸をすえてもらいましたところ、これば熱くてかわいそうだったのですが、2週間ほどで生理が始まりました。お灸のすえ方は前回の婦人科系の項をご参照ください。
興味がある方は是非やってみてください。
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12月22日は冬至です!一陽来復です。

2006-12-19 07:48:13 | 易経、東洋哲学
ずいぶん前、まだ日本の鍼灸学校の学生だったころです。
西洋医学の生理学の授業中に、先生が急に「今日は冬至だから易を立てます。生理学の授業はなし!」とおっしゃいました。
生徒一同は生理学の授業がないというだけでうれしさにどよめきました。先生も「今年は西洋的な授業を担当しているけど、私も鍼灸師の端くれだからね、、、」とおっしゃいます。西洋医学も教えられて、易も立てられるなんてシブイねー!と惚れ惚れとしたものです。

冬至というのは天と地が一番近くなり、一年中で一番日照時間が短い日。「冬に至る」と書くけれども陰の気が旺盛になるのがとまり、やっとここに陽の気が盛んになり始めるターニングポイントです。また明るさが増し始めるとき、「一陽来復」のときということで、易経(えききょう)を学ぶ人たちは年筮(ねんぜい、この一年間の運気と注意点を体感する易)を立てて、来る新年のための心構えを新たにします。

この先生はその日、クラス全員の年筮をだしてくれました。ある女性の同級生は「君は特に今の彼氏は最悪だ、乱暴で甘えん坊でくさっとる!来年はそんな男は捨てて強い女になりなさい。」といわれて驚いて泣いてしまいました。
その最低の彼氏は実は私の隣の席にいて、で、その場では小さく小さくなっていたことを思い出します。

鍼灸師は占いで患者さんが治るかどうかを見ているのでしょうか??否!否!です。そんな薄っぺらいことはいたしません。

易経とか易学と呼ばれる学問は東洋哲学を学ぶための必須の学問で、世の中のすべてのものの動きや情勢、成り行きを客観的に且つ暖かい愛情で「観る」(「見る」よりも深く広い意味)学問です。西洋の科学のように分析分析、ミクロミクロの世界に行くのではなく、体や物事の全体を観て、それに無理がないか、自然の流れに沿っているか、そうでなければどうすればいい感じのバランスになるかという観方を養う学問です。
易経はどうしても、おみくじとか神秘主義的な占いの範疇と同等に見られてしまうことがあって、非科学的で、新興宗教的で怪しいものと見られていることも事実です。もちろん易経は占いとしても使えるし、またいろいろな占いを混合した自称易者が詐欺まがいの商売をしている場合もあるので困ります。
ちなみにどんな種類の占いでも、観たあとにものを売りつけてくるのは間違いなく本物ではありません。霊感商法です。

日本では伝統的な鍼灸医学や漢方医学を目指す人々の多くは東洋哲学を学びます。老子、荘子などもそうですが、特に易経を学ぶことによって東洋的な人体の観かたも学びます。学校の解剖学の時間では鍼灸学校といえども「ご遺体」の解剖の授業を受けるのですが、死んだ方の解剖だけでなく、天地の間で息をしている「活きている人間」の観方を学ぶのです。
もちろん易経は医学だけのものではなく、政治、ビジネス、心理学等の分野でも隠れた大ファンがいるのです。

吉田茂以来、田中角栄を除いて中曽根康弘まで日本の歴代首相のご意見番であった陽明学者安岡正篤(やすおかまさひろ)師も、もちろん易学の大家で、戦後の日本人がこれ以上自分の文化に誇りをもてないようにならないように努力した方です。彼は易経を占いとしてではなく、人生哲学として、混沌とした政治の舵取りのための基本を明確にするためにつかいました。

また、一部の鍼灸師はこういった東洋的なものには興味がない方もいて、患部にいきなり太い鍼を2本以上刺して、そこに電気をかけて、西洋医学的な治療を好む方もいます。アメリカの鍼灸師にはこのような直接神経治療型の先生が多いようです。これが多くの皆様に「鍼は怖い、痛い」という気持ちを抱かせているようです。

易経については、これからも時々投稿して、お話を進めてゆきたいとおもいます。
退屈なときもあるでしょうが、おつきあいください。
いずれにしても今年は12月22日が冬至となります。この一年を反省して、来年はご自分の人生の主人公になれるよう、私自身も含めてがんばりましょう!!
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足湯 頭寒足熱

2006-12-15 08:48:00 | 東洋医学全般
足湯(あしゆ)をやったことはありますか?

ご自宅に日本式の風呂があるから全身浴をされていらっしゃるのですか?
あるいは半身浴をされていらっしゃる方のほうが多いかもしれません。
これが意外と落とし穴になっていることがあるのです。

暖めすぎて冷やしていませんか:
たとえば頑固な腰痛や膝の痛みのある方に鍼灸治療を施して、まったくよくならない場合があります。多分私の腕のほうが悪いからなのでしょうが、こういった患者さんに限って、長風呂をしている場合が多いものです。
急性の症状は冷やして、慢性の症状は暖めるとよいのだから、毎日全身浴や半身浴で患部を暖めています。とおっしゃるのですが、多くは暖めすぎて、結果的に冷やしています。
ヒトの体は温めすぎると冷やすほうに傾き、逆に冷えてくると暖めるように傾きます。だから、長風呂は湯上りのときは温まっていて気持ちいいのですが、後から冷えてくる場合が多いのです。
ですが、足湯ですとそういうことがおきにくく、いつまでも体が温かいままで、のぼせたりしにくいものです。

足湯の仕方:
バスタブに大きなバケツといすを持ち込みます。バケツはアメリカでよく見かける洗剤が入っている白い大きなバケツがいいでしょう。
要はお湯を満たして両足を入れたときに、ふくらはぎくらいまでお湯につかる高さがあればよいです。
まずはこのバケツをシャワーの下のお湯が出る大きな蛇口(カランっていうんでしたっけ?)に置いて、お湯を満たします。
その手前にいすを置いて座り、両足をバケツのお湯に浸します。
しばらく浸しておいて、お湯がぬるくなったらお湯を足しましょう。
これだけです、、、

いつ、どのくらいの時間でしょう?:
寝る前とか、なんだか体が冷えたときとか、足腰が硬くなっているなと感じたときにして見ましょう。
5分から10分あるいはそれ以上でしょうか。 体が気持ちよく温まったところでやめましょう。体が温まる時間は日によってちがいます。
私は雑誌も持ち込んで脱力のひと時を楽しんでいます。

足を暖めることによって、のぼせや肩こり頭痛うなども緩和され、頭寒足熱になりますので、よく眠れるようになります。
ぎっくり腰や一般の腰痛の方も足が暖まるので腰の状態が改善されます。長風呂は腰の組織を緩めすぎて、風呂上りに半裸でいたりすると体表との温度差ができて、重いぎっくり腰になることがあるのです。
特にぎっくり腰になったばかりの時に風呂にはいって腰まで暖めたりしたら、間違いなく悪化します。
足湯であれば、こんな危険もなく、簡単に頭寒足熱の状態に持ってゆけますので、リラクゼーションとしても活用できます。
簡単ですので、今日からやって見ましょう。


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皮膚疾患 その2

2006-12-08 05:07:02 | Q&Aコーナー
体質に対するアプローチ

前回は患部に直接行う治療法でしたので、今回は漢方薬による体質改善のお話をいたします。

一般的に水虫、疥癬(かいせん)、いぼなどはご本人の免疫が落ちているときにかかるものです。また、治っていたと思っていたのに再発するのも、多くの場合はストレスや仕事の疲れで体が弱ってきたときに起こるものです。からだからの熱の発散に問題が起こるのです。
アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の場合は感染症ではありませんが、皮膚の下に熱がこもってしまっている状態です。

熱の発散とはなんでしょう?
東洋医学では熱の正常な発散が妨げられたときに皮膚疾患や、ゼンソクなどが起こると考えられています。
体内で発生した熱はからだを温めたり、消化吸収を助けたり、気力を養ったりします。そうして一部は皮膚から発散されて行くのが正常な状態です。

この熱が何らかの理由で皮膚の下にこもったときに、皮膚疾患が起こりやすくなるのです。
たとえばアトピーの方にはあまり汗をかかない方がいらっしゃいます。これは発散できない熱が皮膚の下にこもって皮膚を壊してゆく原因の一つと考えられています。
感染性の皮膚疾患の場合も、もし熱気の発散がよい方でしたら感染しないか、たまたま菌の力が強かったとか、湿度が高かったとかで感染してもすぐになおってしまいます。前回お話した薬を塗るだけですんでしまうかもしれません。

今回は皮下に熱をこもらせずに発散させることを目的とした漢方薬を中心に進めていきます。

1)薏苡仁(ヨクイニン)はと麦のことです
これはただのはと麦の粉か、錠剤のことです。日本ではカネボウやツムラなどが薏苡仁(ヨクイニン)錠という名前でだしています。
このヨクイニンの効能は、脾臓を健やかに、肺を補い、体の水はけをよくしてむくみを取り、膿など熱性の悪いものを排出し、関節の痛みを取り、咳を緩和する作用がありますが、妊婦さんは不可ということになっています。
ヨクイニンで作った 苡仁茶という名前の製品があります。これは茶とありますがハトムギの粉です。緑色の粉ミルクのような円筒形の缶に入っています。安くて、飲みやすいです。コーヒーカップに添付のスプーンで1ー2杯お湯でといてお茶がわりに飲んでください。これで流産をした例はみたことがありませんが、漢方医学の古典に書かれているので、念のため妊婦さんは止めておきましょう。
 私は多くの患者さんにこれを紹介しているのですが、1週間くらいすると家族の方に、肌が変ったといわれる方が多いです。是非試して見てください。
こちらではRanch 99とか Marina Marketなど中国系のマーケットのお茶売り場においてあります。

2)温清飲(うんせいいん)
月経異常や冷え性があって、逆に手足がほてることもあり、或いは不眠気味のかたで、皮膚が乾燥気味でかゆみのある方に用います。
体の血行をよくして、同時に患部の熱を取り、結果的に皮膚疾患にも効くわけです。

3)消風散(しょうふうさん)
夏に悪化するアトピー製皮膚炎や、ジンマシンに使います。

4)当帰飲子(とうきいんし)
冬に乾燥して悪化するアトピー性皮膚炎、高齢者の乾燥性皮膚炎、乾燥した湿疹などに使います。

5)黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)
小児のアトピー性皮膚炎や湿疹につかいます。皮膚関連だけでなく小児の健康促進用に最適です。

6)十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
皮膚の化膿性疾患に広く用います。

7)荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
青年期のアトピー性皮膚炎、にきびなど、上半身の皮膚疾患に主に使います。

8)柴胡清肝湯(さいこせんかんとう)
痩せ型で、くすぐったがりで、落ち着きがなく、偏食があり、熱を出しやすいタイプの方のアトピー性皮膚炎に使います。

9)八味地黄丸(はちみじおうがん)
金匱腎氣丸(きんきじんきがん)とも呼ばれ、老人性皮膚掻痒症に使います。

10)白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
かゆみの強い皮膚疾患に使います。

11)防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
おお喰らいで、がっちりとした体格で、内臓脂肪がびっしりとついているようなタイプの方の湿疹などに使います。


アメリカの当診療所で入手調剤ができる皮膚疾患に関連する漢方薬を挙げてみました。見覚えのある漢方薬もあると思います。
これはたまたま皮膚疾患という病名で便宜的にくくって列挙しましたが、これらの漢方薬は糖尿病、肺炎、白内障、或いは中耳炎にも使用したりします。ようはそれらの疾患が起こりやすい体の状態を改善するためで、例えば下半身にとどまっていなければならない熱が、体力が落ちたり冷えたために上に上がり、そのあがった所が、皮膚であったり、耳であったり、肺の中であったりしたために、その場所に熱がこもって切れよくでてゆかず、病名がついてしまう状態になったとされるわけです。体質を変えることによって病の存在理由をなくしてしまう。この考えてゆくともちろん上記の漢方薬以外にも無数の方剤や使い方が存在するわけです。

漢方薬はヨクイニン以外は一人一人の体質に合ったものを服用することが必要ですので、専門家に脈診、舌診、腹診などの東洋的な診断をしてもらってから使いましょう。


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皮膚疾患

2006-12-02 09:36:49 | Q&Aコーナー
Q&A

黒谷先生に質問です。例えば長年続いている皮膚病とかも鍼灸などで治せるものでしょうか?薬を塗ったり塗らなかったりなので完治しないのだとは思っていますが、どうも根気がたりないので、お灸とかをどこかのつぼに毎日やれば治るような気がしました。
(2006/11/30 Mさん)

回答 その1 (患部に対する直接的な治療)

皮膚疾患ですか、これがいわゆる水虫や疥癬(カイセン)といわれるような菌に感染している皮膚病と、アトピー性皮膚炎のようなアレルギー疾患かによって治療方法が変わってきます。
どちらも当然、「菌が繁殖しにくい免疫力の強い体質」をつくったり、アトピーのように「強すぎる免疫作用」を緩めて、皮下に溜まった不要な熱を汗とともに発散させることのできる体質改善を行います。それプラス、とりあえずかゆみを停めたり、菌を殺したりする治療と併用することになります。

今回は菌に感染した皮膚疾患の直接的についてお話します。
アレルギー性の皮膚疾患については回を改めて、ゼンソクの治療と一緒にお話したいと思います。

今回はせんねん灸などの名前で売られているインスタントお灸を使ってみましょう。
http://sennenq.co.jp/ 

1.肩口にある肩髃(ケングウ)というつぼにお灸をする
これは肩の前にあります。両腕を横に水平に挙げたとき肩の付け根の前と後がちょこっと引っ込みますね。この前のほうの引っ込んだ所です。ここにせんねん灸のレギュラーかそれよりすこし強いのをすえるのです。肩口のお灸は跡がつきやすいのである程度覚悟してください。これは皮下に溜まった熱を一時的に発散させるので、ジンマシンも含めた全身のかゆみ止めになります。

2.患部にお灸をする
これはせんねん灸の強めのものを直接患部の真ん中あたりにすえます。
足の指のまたとかに水虫ができている場合などは、この熱さがなんともいえない「あつきもちいい」ものです。
ごく軽いヤケドが皮膚のたんぱく質を壊し、これを治すために集まってきた白血球などが
このヤケドを治しながらそこに存在する菌も処理してしまうために、効果がでるのです。

3.紫雲膏(しうんこう)をぬる。
これは江戸時代に麻酔薬を考案し自分の母親と嫁に乳がんの手術を行った、華岡青洲が作った膏薬です。有吉佐和子さんが「華岡青洲の妻」をだしていますのでご存知の方も多いでしょう。
これは切り傷以外の皮膚疾患に大変効果があります。そして、ヤケドやあかぎれ、しもやけ、痔の痛みにも著効します。日本では薬局でどこでも変えます。
本来これはごま油で練りこんであるために、アメリカでこれを使うと「シュウマイくさい」とか
いわれて評判が悪いので、私の所では必要に応じてオリーブ油で練りこんだ紫雲膏を作ってお出ししております。どちらも塗った感じはマイルドで安心して使えます。毎日使ってください。

4.華佗膏(かだこう)をぬる。
中国製の名薬です。漢方薬の成分にサルチル酸という強力な殺菌剤が入っているので、塗った感じは少しひりひりします。眼や粘膜の場所は避けてください。毎日塗ってかまいません。
これはチャイナタウンの薬屋か乾物屋に行くと必ずおいてあります。
日本なら普通の漢方を扱っている薬局においてあります。

5.土槿皮酊(どきんぴ)チンキをぬる。これはむくげチンキとも呼ばれています。
これを塗ると涙が出るくらいひりひりします。眼や粘膜のあるところは避けてください。2日ほど続けて塗って様子を見てみましょう。
例えば水虫のあるところに塗ると、焼けるように痛いものですが、その後2-3日するとその部分の皮がボロボロと落ちて、なおります。あとはきれいな靴に履き替えておきましょう。

以上は患部に対する直接的な治療です。まずは痒みなどをとってもらうために先に説明しました。しかし、同じ菌がついても感染しない方もいらっしゃいます。要はそういうからだをつくってゆくことが東洋医学たるゆえんです。

次回は間接的な治療、体質のほうを改善してゆくことによって行う、皮膚疾患の治療についてお話します。

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