「中国の漢方医の先生に見ていただいたときには腎臓が悪いといわれました。」
「私は以前、鍼灸の先生に肝臓に問題があると言われたんです。。。」
時々こんな患者さんがいらっしゃいます。
みな、心配そうに自分はこういう病気があるのだから、、、と悲痛な面持ちで私の問診にお答えになります。
東洋医学の先生に、このように指摘された場合、本当に腎臓や肝臓に問題があるということは、ほとんどありません。読者の方で、過去に東洋医学の先生に、こういう言い方をされた方は、どうぞご安心ください。
これは、いわゆる五臓六腑の五臓である、肝、心、脾、肺、腎と肝臓、心臓、脾臓、肺臓、腎臓の違いをきちんと説明されていないから起きる誤解です。
皆様は、肝臓、心臓、脾臓、肺臓、腎臓を西洋的な意味合いで認識されています。
しかし、東洋医学では、敢て「臓」の字を取って、これらを肝、心、脾、肺、腎という言い方に変えて、その意味合いが同じではないことを表しています。一部だけを簡単に説明しますと、このようになります。
1.肝(かん)筋肉や腱、怒り、細かい作業のし過ぎ、血が足りないなどの症状。目の働きに関係する。
2.心(しん)脈関連、喜びうかれる、熱があるなどの症状。舌の働きに関係する。
3.脾(ひ) 消化器のコントロールを司る。後天的な体の構造を司る。考えすぎる。口の働きに関係する。
4.肺(はい)全身の気の流れを司る。悲しみという感情を司る。鼻の働きに関係する。
5.腎(じん)先天的な体の働きや構造を司る。恐れという感情と骨の状態を司る。耳の働きに関係する。
そして、この五臓は各々から経絡という気血の通っているとされる流れが出ていて、その流れの線に沿っている場所での病気もこれらに入れて考えられるのです。
たとえば、コンピューターで眼を使いすぎて、イライラして、頭痛がして、足の内側から膝や太ももが冷えて引きつって、生理が重くて、深く寝られない。という患者さんが来た場合、問診、脈診、腹診、舌診をしてこのように判断いたします。
「うーん、、この方の病変部位は肝の経絡の流れにのっている。とてもお疲れのようだから、肝が虚しているから補っておこう。肝に気と体液を送っているのは腎だから、これも疲れの原因になっているようなので、これも補っておこう。食欲は最近落ちているらしいので、適度に脾も補う作用のあるツボを探そう。そして、目のある頭に熱気が強いからよく寝られないようなので、それを排除する鍼をしよう。」という風に治療の計画を立てます。
ここで、配慮のない治療家は、安易に「肝臓が弱っています。腎臓もだめですね。脾臓のツボも使って治します。」という言い方をするんですね。
患者さんはここで、「あ!肝臓と腎臓が悪いんだ、弱いんだ。。。。」と思い込んでしまいます。
だから、私の東洋医学校の授業では、「西洋的な意味合いでの肝臓、心臓、脾臓、肺臓、腎臓も東洋的な意味合いでの肝、心、脾、肺、腎も英語では、Liver, Heart, Spleen, Lung, Kidneyということで、一緒くたにしないこと!きちんと患者さんに説明をして、無駄に患者さんに心配をさせないこと!私の場合は、敢えてOriental Liver, Oriental Heart, Oriental Spleen, Oriental Lung, Oriental Kidneyという言い方をして患者さんの混乱を避けている。」と戒めています。
ちなみに、本来の五臓六腑の六腑とは東洋医学から出ている考え方で、胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦(さんしょう)の6腑を指します。この三焦以外はみんな管の形をしている臓器です。専門的には管腔臓器といいます。五臓の方は、管ではなく中が詰まっている臓器なので、実質臓器と言います。そして、三焦というのは、簡単に言うと体の上中下の熱の配分を司っているとされている、実体がなくて機能だけが存在する臓器?です。実体のない臓器というのは、東洋医学ならではの考え方です。これは、今回の話題とは異なるので、別の機会にお話しすることにいたしましょう。
次回も、このお話の続きをいたします。