けい先生のつぼにくる話

はりきゅう漢方の先生が教えてくれる健康に関する話
Twitter(X)リンク @kkclinic

こむら返りなど筋の引きつり   芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

2013-07-28 08:52:31 | 漢方アメリカOnline
ある白人のテニスプレイヤーの男性で、いつも正念場の時にふくらはぎが攣(つ)ってしまい、勝利のチャンスを逃してしまう方がいらっしゃいました。

その日はちょうど試合前なので、鍼灸治療の時間が十分に取れず、漢方薬を処方してもらいたいとのことでした。

少しばかり問診をして、結局、芍薬甘草湯(しゃくやくかんんぞうとう)を処方いたしました。
試合のストレスということもあり、このような場合の処方は往々にして抑肝散加陳皮半夏(よっかんさんかちんぴはんげ)などを出すことが多いのでが、今回はあえて芍薬甘草湯にいたしました。

この方はスタートレック(宇宙大作戦)に出てくるレナードニモイ氏演ずるバルカン星人の乗組員ミスタースポックに似ていて、冷静沈着な感じです。でも笑顔がマイルドで角がありません。抑肝散加陳皮半を処方する根拠は、脈や表情や動きにイライラした感じがあることが決め手になります。

彼にはそのようなイライラ感が見られなかったので、芍薬甘草湯にしたのです。結果は大変喜ばしいものでした。
その日から、この漢方方剤が切れる3週間の間、まったくこむら返りの症状が出ず、大変満足すべきテニスの成績を収めることができたとのことです。

芍薬甘草湯(しゃくやくかんんぞうとう)は後漢末期から三国時代に書かれた「傷寒論」という医学書に載っている漢方方剤で、引きつり系の痛みに広範囲に使われます。

そのほかに、肩こり、腹痛、歯痛、手足の各種の痛みにも処方されます。

専門的には何らかの理由で、気血津液のうちの血と津液(水分)が虚して(減って、不足して)しまうと、筋肉が引きつります。これに対し、甘草(かんぞう)で津液を多くして緩めて、芍薬で組織を引き締めて血の流れを良くすることによって、結果的に引きつりが収まり癒されてゆくのです。

筋の引きつりという病症に対して、緩める漢方薬と、引き締める漢方薬を使って、筋肉の血管をシャキッとさせ、これが血の流れを良くすることになり、潤いが増すことによって、引きつりが取れることを目標としています。

漢方薬のバランスの妙味というところでしょうか。

漢方薬は基本的に食間に服用しますが、この芍薬甘草湯はおなかに重いという方もいらっしゃるので、そういう方は、食後に服用してもかまいません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

詠春拳 打ち込み10万回

2013-07-21 09:38:24 | 圓功禅拳、古武術
現在私は、転馬発拳という動作の10万回に挑戦しています。一種の突き(パンチ)の練習です。

普段の一人稽古のほかに、この動きを毎日欠かさずに1000回から3000回撃ち続けるのです。
本日は3000回打ったので、ちょうど7万発の転馬発拳を行ったことになります。
10万回まであと3万回。もうすぐです!

なぜ10万発かというと、、これは息子の空手の師匠が「いくらパンチの力が強くとも、肩に力が入っているうちは本当のパンチは出ない。どうしても力が(頸力)が肩で止まってしまうので、使えるパンチにはならない。10万発ほどしっかりと打ち込めば、意味が分かるはずだ、」とおっしゃっているのを聞いて、これを真に受けて、私の方が始めて見たのです。

この動きは両足を開いて立って、かかとに重心を置いて、左右にツイストします。左に体全体がツイストされたら、右の拳を前に突き出します。
次はその反対に体全体を右にツイストして、左の拳を前に突き出します。
この繰り返しです。

多くの米国式詠春拳の先輩方は、この動作をする目的は、踏ん張った両足のかかとから力を吸い上げて、その力を体をうねらせてツイストして、肩、肘、拳に伝えていって「腰を入れた」パンチを出す練習だと思っているようです。
これは大きな間違いで、これこそが、素人のちから相撲の根源となる動きです。
西洋体育の動きです。

大事なのは、
1.力まない(攻撃して手ごたえを得ようとせず、躍起にならない)
2.固くならない (ぎくしゃくしないでスムースに動く)
3.踏ん張らない

事です。
先生によっては、これに「うねらない」ということを加えていらっしゃいます。
でも、こんな風に力を抜いたパンチが効くのかなあという気がするものです。
しかし、この条件がそろうと、びっくりするような強い突きが生まれます。

一般的には、かかとから、膝、腰、背中、肩、肘、拳と順番に動く、ボクシングなどの西洋体育の理論で培われた動きは、パンチが来るぞーーという「起り」「気配」を消すことが困難なので、素人にもかわされてしまいます。あるいは鍛えた筋肉をつかった受け技で、がっちりと受けられてしまいます。

ところが、本場の詠春拳や、日本の古武道の考え方ですと、かかと、膝、腰、背中、肩、肘、拳、これらのパーツが、その順番を追ってではなく、バラバラに、しかし一息に同時に動いて、結果的に拳が相手にヒットすることを重んじます。
これは体がうねらない動きなので、「起り、気配」がなく、相手に察知されることが少なくなります。急に相手の拳が顔の前に現れた感じがするのです。

日本の武術研究家の甲野善紀先生の表現をお借りすると、「海中の数千匹の小魚の群れが何かの音に驚いて全部が同時にバッ!方向転換をする時のようなイメージ」です。
全身がうねらずに、全体が一気に動くという感じです。

この突き方を助手さんに教えたところ、彼女はすぐに呑み込めたようです。

ある日、彼女はあろうことかこれを詠春拳の師匠の顔面にパコンッと打ち込んだのです。
彼女曰く、「師匠の顔面に打ち込んだら当っちゃったよ!顔面に突きを入れてそれを受ける練習だったから、わかっていたはずなのに受けられなかったみたい。先生はちょっとした自分の不注意で当っちゃったんだろうなと思ってくれてるみたいで助かったよ。。。少し慌ててるのわかっちゃった、、かっかっか。。」とのことです。

なかなかやるな。。。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

詠春拳 アメリカ式、本場の香港式

2013-07-19 14:27:35 | 圓功禅拳、古武術
この一年、私と助手さんは、詠春拳の修行に明け暮れておりました。

マジでやりましたね、週に3回道場に通い、毎回3時間は稽古に励みました。皆勤賞ものです。
それ以外に毎日1時間は大まじめに一人稽古を続けてみました。いい汗をかくことができて、実に充実した1年でした。

もちろん、習い事なんて言うのは10年くらいはこういうことを続けないと身になるものではありません。
しかし、一つのことを一定期間、気が狂うほど続けてみるのは、一種のおのれに対する限界突破を味わうことができて、満足感に浸っています。自己満足ではありますが、、、、

そして、何事にものめりこんでしまう私は、武術の研究という分野にも目覚めてしまったようです。
それまで修行をしてきた圓項禅拳を基礎に、息子が通っているUSA大山空手、友人が道場長をしている合気道、そして大東流合気柔術などの師匠たちとの交流も深まり、意外な方から意外な資料をいただけたりという、法縁ともいうべきつながりが煮詰まってまいりました。

さて、詠春拳に話題を戻しましょう。
多くのアジアの文化がアメリカに流れ込んでおりますが、その多くはアメリカ流にアレンジされてしまい、本場のそれとは異質の文化になってしまう傾向があります。

鍼灸漢方のそれも同じです。多くのアメリカ人の鍼治療は、太い鍼をグサグサっと深く刺して、それに電気をかけて20分くらい放っておかれます。その手技が大変乱暴で驚かされます。

これを料理にたとえると、美味しい刺身を作るときに、職人さんが柳包丁の重さを微妙にうまく使って、刺身の柵を切ってゆきます。だからこそ切り口の良い美味しい刺身が出来上がります。それをアメリカ人にやらせると、ナタや電気ノコギリで、ブーンとガスッとたたき切った魚肉が「これが本場の刺身です」といわんばかりに出されている感じです。

詠春拳を学ぶ先輩方の中にも、このような米人が多いのです。
詠春拳には特有の両手で行う太極拳の推手が直線的になったような「黐手」(Chi Sao)と呼ばれる訓練方法が存在しま す。

http://www.youtube.com/watch?v=80cuOoK11SA

私はこの本場である香港の動画のように、小気味よく、しかし勁力の効いた攻撃と受けやサバキを行いたいわけです。

しかし、多くの先輩方のそれは、バーベルで鍛え抜かれた力こぶと大きな体でお互いにハンガァーッ!フンガァーッ!押し合っています。「ちから押し相撲」です。
体の小さな私は、技というよりも 相手の稚拙で雑な筋力に負けてしまいます。これでは本来女性が考え出したという詠春拳とはちがうものになってしまいます。

そこで、このような米国式詠春拳に対抗すべく、できる限り本場香港の伝統的な詠春拳のそれである、力を使わない技の研究を同時進行で行ってきたのです。大体次のような要領で学んでまいりました。

1.日本語、中国語の関連書籍や映像による研究。(英文の武道書籍は勘違い外人によって書かれているものが多く、使えないので無視です。)

2.私が所属する中国系の東洋医学会CCAAは詠春拳が発祥した広東語圏の先生方で構成されていますので、武術好きの先生方をつかまえて教えを乞う。
まだ、日本の敵国となっていない、古きよき中国では、一人前に医師になるためには武術をふくんだ五術を修める必要があったため、その名残で中国系の東洋医師の中には武術に明るい人が多いものです。

3.異種でもよいので、武術や舞踊を修行している友人知人、患者さんなどに教えを乞う。

というわけで、趣味が高じて武術研究という分野にどっぷりとつかってしまいました。もちろんこれらは、呼吸、意識、気の流れ、兆し、経絡とその関連の経筋と呼ばれる人体の観かたなどにつながりますので、東洋医学の臨床にも活きてきます。

どうぞご心配なく。。。。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

熱で熱を発散させる。  陰陽のおはなし。 (ちょっと腰痛のお話もからみます。)

2013-07-14 20:09:41 | 東洋医学全般
ご存知のとおり、東洋哲学では、世の中の物を陰と陽に分けるものの観方があります。

天地、男女、昼夜、上下左右、寒熱などなど、両極を観て物事を判断いたします。
しかし、この両極の多くの場合、かっちりと二つに分けられないことの方が多いのです。

西洋人は、二元論というんでしょうか、、絶対に右か左か、、、と、かっちりと分けたがる傾向にあります。だから、私の授業でも、「それは陰ですか陽ですか?!」と白黒をつけたがります。

私は「いやいや、、世の中はむしろ、グレーゾーンの方が多いでしょう。限りなく女性に近い男性、その反対、そして、高齢になっておじいさんより強くなってしまう(陰から陽に転じてしまう)おばあさんがいたりするでしょう。。。」というのですが、「いや、おばあさんは女性だから陰、おじいさんは男性だから陽と決まってます。」とくるわけです。

そこで、「独陰生ぜず、独陽長ぜず」ということの説明をします。これは、陰的なものはその陰だけで生まれてくるのではない。陽的なものはそれだけでは育たない。」というお話をいたします。これは、「陰中有陽、陽中有陰」ということで、純粋な陰だけ、純粋な陽だけということはなくて、物事には、必ず一定量の反対要素が含まれている、それで一体となっているということになります。その比率は常に変化をしています。
この話は長くなってしまいますので、ここまでにします。

さて、治療のお話ですが、陰的な治療と陽的な治療というのも存在します。陰的なそれは、どちらかというと冷やす、落ち着けるような治療が主になります。
陽的な治療は温める治療が主になります。

しかし、陽的な治療は、やりすぎると逆効果になります。
冷えた人の体を体を温めたい場合、当然温めます。お灸やヒートランプなどを使って温めます。

一つ温めると患者さんは「あー温まってきました。。」
二つ温めると患者さんは「あーいい感じでぽかぽかしてます、汗が出て暑いくらいです。」
よし、もっと温めて気持ち良くしてあげたらよかろうと、
三つ温めると患者さんは「なんか、気分が悪い、むしろ寒気がしてきた。つかれた。。。」

となることがあります。これは典型的な「過ぎたるは猶及ばざるが如し」で、逆に冷やしてしまったことになります。
これは、失敗例ですが、逆にわざと温めを多めにすることによって、結果的に熱を冷ますという治療法もあるのです。

陽、陽、陽、ゴーゴーゴー!と積極性が増しすぎると、結果的に陽的なものは逃げてしまいます。発散されてなくなってしまいます。するとしっかり温めたはずなのに、結果的にクールダウンを通り越して冷えてしまうのです。これは「物極必反」といいます。
行き過ぎると反発される、逆の方向に行ってしまうということです。
恋愛なんかはまさにそのようになってゆくようですね。

だから私は駄目だったんだなあ。。めちゃめちゃ女性のためによくしてあげよう(陽的いきすぎ)と思い込んでいて、あるいは、何とかしたくてしゃべりすぎて(これも陽的ないきすぎ)、逆に冷たくされてしまって終るというか玉砕することが多かった。。。恋には実りの少ない青少年時代でありました。

当時の私は、ドラマや映画ですと、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」映画版 テレビ版、「みんな エスパーだよ!」の中の青年のような日々でした。大バカヤロウでしたね。

実は大昔に、愛情というよりは、成り行きでというか勢いあまって(いや、押し切られたのかなあ)、あーなってこーなってしまったお姐さんがいたのです。そういうわけで私の方は淡々としていたんですね。

するとどうでしょう、その女性には例外的にとても好かれたような気がします。。。。熱さが少なく、こちらからの積極性がないというか、むしろ冷たさが適当に混ざっていたからなのでしょうか。いろいろお世話になりましたが、その後お別れしてしまいました、、、○○○さんありがとう。。。

そういえばずいぶん前ですが、日本の東洋医学会仲間の講習会に行ったときの事です。昼ご飯の時に同年輩の先生が「むかし○○○ちゃんという彼女がいてさーー」と話し始めました。
「え?」ともう一人の仲の良い先生が「そういえば俺も同じ名前の女がいたなあーー。」
そこで私も「ええっ?私も○○○さんという名前の人とお付き合いしてたよ!」

三人の先生はちょっと緊張してあっちの方でこそこそと打ち明けあったのです。。。。みんなそれぞれ別人の○○○さんでした。。。なんか一同ほっとしてコーヒーを飲みに行きました。

みんな額に少し汗をかいていました。。。。。

ボーイズ・オン・ザ・ラン。。。。


ちょっと参考までに過去の記事をご覧ください。。。(腰痛がらみのおはなしです。)

http://blog.goo.ne.jp/keisclinic/e/c4b2b5c96cecc7c1be0d7799b4b212f0
http://blog.goo.ne.jp/keisclinic/e/fb85ee316c2006e9d6b98d1cf0e6c7a0
http://blog.goo.ne.jp/keisclinic/e/1a0c860a2a6ed4dd262e3d5fe30e1693
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする