怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

又吉直樹「火花」

2015-08-15 09:14:32 | 
芥川賞を取って200万部突破。話題の本です。図書館では予約が殺到して名古屋市の図書館システムでは予約が2千件以上あり2年待ちとか。
普段は文庫本になってからか図書館でしか読まないのですが、新し物好きのかみさんが買ってきた(本屋で予約待ちでした)ので、私も読んでみました。
あらすじはあちこちで紹介されているので感想だけ。

一読しての印象はやっぱり芥川賞ですね。言葉が普段使わないような難しい言葉が多くて文学しているって感じ。ことさら辞書を引いて確認するほどでもないので適当にスルーしていきますが、語彙が豊富です。
主人公の先輩芸人の「あほんだら」の神谷のモデルがいろいろ言われていますが、これは小説である以上一人のモデルがいるわけではないでしょう。笑いに人生を賭け狂おしいまでに笑いを追い求めているたくさんの芸人をジューサーにかけてそのエッセンスをこして造形した人物でしょう。もちろんジューサーにかける前の又吉が現実に見聞きした芸人はいるわけで、部分部分にはモデルとなる人物出来事はあったのでしょうけど、あくまで神谷は又吉の頭の中で肉付けされ形作られた人物です。
同じようにお笑いコンビ「スパークス」の主人公も又吉そのものではありません。自分自身の経験はもちろん入っているのでしょうけど、そこにもいろいろ見聞きした芸人の話が入っているはずです。
だからこそ小説として成り立っているのですし、これから別の視点からの次回作を書いていけると思います。
最初の内は文学ぽ過ぎるのが鼻についてなかなかページが進まなかったのですが、徐々にお笑い芸人の世界に入り込むと後は一気でした。芸人の世界だけにとどまらず人生の普遍性を描いていてちゃんと文学に昇華しています。
特にスパークスの最後のライブの描写はネタとしてもよく考えてあってよかったですし、終わったときは思わず熱くなりながら拍手(もちろん心の中で)ですね。
でも最後はちょっと、ちょっと。
神谷が最後にそこまでするというのは引いてしまいますし、如何に破滅型芸人としても、もう少し余韻の残る終わり方があったのではないでしょうか。
又吉の作家としての評価は本人の言っている通り次回作、次々回作を書いてみて、その出来によって定まるのでしょうけど、今度も芸人の世界を舞台にするなら全く違う視点が必要かな。
文学好きの人には読む価値あるけどお笑い芸人の内輪話を期待している人は映画化されて文庫本になってから読みなさい。
コメント
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