怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「炭水化物が人類を滅ぼす」夏井 睦

2016-02-04 07:12:31 | 
如何にもあざとい題名ですが、前半は糖質制限がいかに効果あるかの宣伝。

本人がやってみて体型が学生時代に戻った、高血圧も高脂血症も自然に治った、昼食後に居眠りをしなくなった等々いいことずくめの糖質制限です。
自分でやってみて効果が見えてくると同じ病院でも糖質制限に挑戦する医師が現われだし、確実に糖質セイゲニストが増えていると。
これって数多のダイエットとか健康法の論法ですよね。やってみたらこんなに効果がありました、皆さんも是非やってみてください。こんな健康法とかダイエットは五万とありました。図書館で見ると肉を食べてはいけないとか和食(と言うことはご飯とおかず)が一番と言う本もあります。
何が正しいかよくわからないのですが、この説も比較試験を厳密にやるとかのしっかりとした学問的な検証をした結果ではないみたいです。たまたま体質的に会う人にはいいのかもしれませんが、万人に効果があるのかどうか。ぜひ大規模な実験で実証してほしいものです。
と言っても糖質制限自体は非常にお手軽にできます。血糖値を上げるような食品を食べないようにするというだけで、あとはお肉だろう揚げ物だろうとアルコールだろうとほぼ自由です。血糖値を上げるのはブドウ糖(グルコース)であり、糖質制限においてはブドウ糖そのものが含まれる食品や体内でグルコースに代わるでんぷんも控えなければいけない。ということはご飯とかうどん、パスタ、パンはダメ。砂糖が含まれているものも駄目。肉魚、卵、大豆製品や野菜はいくら食べてもいいけど、野菜でも根菜類は糖質が多いので控えるように。乳製品もいいですよ。でもお菓子類は原則的にはダメ。お酒も赤ワインはいいみたいですが醸造酒はいけません。蒸留酒にしましょう。
これを厳密にやろうとするとかなり大変ですが、大丈夫、最初はプチ糖質制限でいいのです。これだと夕食のみ主食抜き。ここからスタンダード糖質制限(朝食と夕食主食抜き)、スーパー糖質制限(三食とも主食抜き)にステージを上げていけばいい。
プチ糖質制限だと私は夕食でお酒を飲んだ時にはご飯を食べないので今でもオッケーです。もっともお酒がビールだったり日本酒だといけないのでこれは悩ましい。最近は飲むのは基本日本酒の純米酒と決めているのですが、焼酎にしないといけないのか…とにかく宴会の時はビールは乾杯だけでハイボールか焼酎にしましょうか。
筆者もそうですが糖質を制限しても外食の時には多少気を付けないといけないのですが普通に生活できるので、炭水化物が必須栄養というのは怪しいと。栄養学の教科書には糖質(炭水化物)、たんぱく質、脂質が3大栄養素となっていますが、それを外部から取り込まなければ生きていけない必須栄養素ではなくて、なければさみしい嗜好品だと。
う~ん、そう言われればそうかも。砂糖の甘さとかご飯の美味しさ、お酒の美味さって、なくてもいいけどないと人生さみしいですよね。
ここまでですと、この本の題名はいかにも大げさで、糖質制限の勧めだけなのですが、この本の白眉は後半の「Ⅴ糖質制限すると見えてくるもの」以降です。
現在の糖尿病治療に対する異議申し立てに始まって穀物生産、労働と食事の関係、そして話は地球に生命誕生して進化してきた諸相、そこでのブドウ糖の役割、話は無茶苦茶大きなレンジになっていきます。哺乳類がどうやって栄養を取り入れていくかでウシとかパンダを例にした話にはなるほどです。セルロースは消化器で分解できないのですが、牛の胃なりヤギの盲腸なりで分解する細菌を常在させることによって草食で生きていくことができるのです。因みに人類はその腸の構造からみると草食動物ではありえないとか。この本に書いてありますけど千日回峰の行者はカロリー計算の収支から見ればありえないはずで、修行の中で体質変換ができているとかなのですが、栄養学の教科書では説明できないことを道筋を立てて説明しています。
人類の誕生以来でも糖質から見た農耕の起源とか人類が定住生活に至って文明が誕生し、現在の世界を作っていった道筋とか、あまりにも気宇壮大なので付いて行くのがやっとですが、こういう大きな物語は面白い。
でもこれって壮大な仮説ですよね。専門家に言わせると突っ込みどころ満載かもしれません。それなりに最新の研究成果を敷衍していて筋が通っていると思いますが、見る人が見れば仮説にも至らない著者の勝手な妄想というか与太話というものかもしれません。
新書版で300ページを超えるのに税抜き880円は安いですね。
とにかくまずはプチ糖質制限をやりましょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする