怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「脳科学者の母が、認知症になる」恩蔵絢子

2019-10-28 17:53:55 | 
著者の母は65歳でアルツハイマー認知症と診断された。
実際にはその前からおかしいと思っていたのですが、なかなか病院に行くという決断ができずに、ここに至ったということ。
まああ、65歳と言うと私と同じ歳で、子どもにとっては知りたくない現実でしょうし、本人にとっても(状況はよく理解できないかもしれませんが)なんてこったというしかない現実です。
著者は脳科学者だけに知りたくない現実も知らなければならないのですが、それでも何かできることがあるはずと悩みながら試行錯誤していきつつ、母の姿を描写しています。

最初に認知症とは何かというおさらいがありますが、これは知っている人は知っている。認知症にもレヴィ―小体型認知症とか脳血管性認知症とかありますが、アルツハイマー型認知症は、脳に老人班と神経原繊維変化が起きると言われている。老人班の元はアミロイドβなのだが、それが最初に海馬に貯まる。海馬は短期記憶を司り、ここが傷つくと既に蓄えられた記憶は消えないけれど、新しいことが定着しなくなる。結果、記憶障害とか、見当識障害、理解判断力障害が起こる。これらは不可逆的で今のところ治らない。
因みに海馬については池谷裕二の「海馬」という本の方がより詳しくかつ解説として面白いので是非ご一読あれ。
著者の母はアルツハイマーの症状が出てから料理をしなくなり、掃除もしなくなり、趣味の合唱の練習もしなくなってきている。
実はこれを読んでいて私の母も全く同じような症状だと納得するのだが、一人暮らしなので食べなければいけないのに料理はほとんどしなくなっている。かろうじて電子レンジは使えるので出来合いの総菜か我が家で作っておいた料理を温めて食べている。掃除は一人暮らしなので汚れていないと言い張り掃除機をかけようとしない。確かにゴミが落ちていれば拾うが埃は漂っている。仕方ないので私が行った時に掃除機をかけている。
う~ん、正しいアルツハイマーだ。
それでも攻撃性とか徘徊などの周辺症状は、感情面のケアによって緩和できるとか。
治ることはないけれどできることはあるはず。デフォルト・モード・ネットワーク(詳しくは読んでみてください)を活性化すれば、記憶の整理整頓ができ落ち着くことができるみたい。
ではどうすればいいかと言うと、家に閉じこもってばかりいてはいけなので「散歩」。著者の所では父に言って毎日一緒に散歩するようにしたとか。知らず知らずのうちに適当な刺激を受けてリラックス出来るみたいです。私も母を週に2回は買い物に連れて行くのですが、足だけは丈夫なので歩いて15分ぐらいの所のスーパーに行くのですが、途中の家を見てあそこは昔何だったとか毎回話しているので多少は回想法も兼ねて刺激になっているんでしょう。さらに判断力は低下してしまったけれど、料理などの手仕事はできるはずで、実際著者は必要な指示を出して判断を補いながら一緒に料理を作っている。それでも新しい食べ物は信頼しないし受け付けない。味覚も分かりやすい味に嗜好が変わってしまい、著者にとっては腹立たしいみたい。
こういうところってなかなか実の母と娘というのは難しんだよね。
こうやって記憶障害が起こり判断力もあてにならないようになってくると、一体その人らしさとは何だろう。知性とは何だろうと思う。
著者の考えは「感情」こそ「知性」
海馬が傷ついても新しく学べることはあり、言語では忘れたことになってしまっていても体の方はしっかり学習している。感情を司る大脳辺縁系は委縮に対して強い。今の脳科学の常識は感情がないと理性的に行動できないだそうで、感情的判断は、地球に生物が誕生して以来、どういう状況にどういう反応をすると生き残ることができるのかという経験を、生物が代々積んで進化してきたもの。アルツハイマーの人たちの感情的反応は生存に役立つ正しい反応、そういわれても実際の母を見ていると怒れることばかりで到底正しいとは思えないのですけどね。まあ、著者も頭の理屈はともかくかなりイラつく日々をおくっているみたいなのですが、脳科学者としての知見からすればもっと感情面を尊重しましょうとなります。
たぶん私も自分がケアマネぐらいであれば母に対してもっと理性的に対応できるし、仕事だと思えば我慢できると思うのですけど。
題名にひかれて読んでみましたが、私も著者も苦難の道はまだこれからです。

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