怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「森林異変」田中淳夫

2016-04-16 08:06:55 | 
以前「森林飽和」をレビューした時のも同じようなことを書いた気がしますが、日本の森林は現状として有史以来最も森林面積が多い。江戸時代や明治時代そして戦前には人の手が入る山はほとんどが禿山となっていたのを戦後造林に励み、開発が進み緑の森は失われているとか何とか言われようが、実際には今や国土は緑で覆われている。
問題はいつの間にか林業が成り立たなくなってしまい、山に手間とカネをかけることができなくなる中で、下刈りも間伐もされずに荒れ果て、伐採しても植林されずに放置されているところも出ていることです。

どうして林業が成り立たなくなったかというとよく言われているのは安い外材に対抗できなかったということ。さらに燃料革命で薪とか炭はどんどん石炭石油に置き換えられてしまい雑木林も振り向かれなくなってきました。
では外材はどうなっているかというと、戦後しばらくは南洋材でしたが今はヨーロッパが主流。でも国産材と比べて決して安くありません。でも国産材と比べて品質が安定していて必要な規格の必要量がきちんと供給されるため、ハウスメーカにとっては使い勝手が良いのです。ただあまり規格に制約のない合板用素材で最近右肩上がりに上がり平成20年現在の国産材の割合は54%。円安やら何やらもあって全体の自給率も2000年に18.2%だったものが09年には27.8%にまで上昇している。それなりに日本の林業も復活はしているのです。
では外材に対抗できるようにするにはどうすればいいのか。
日本の林業は木を切ることだけに目が行って、マーケティングは人任せ、そして最後は行政に頼っての補助金頼み。ハウスメーカーがどんな建材を求めているか、それに対してどう対応していくのか考えていませんでした。
ハウスメーカーにとっては同じ品質であらかじめ工場でプレカットできるような木材が稼働率を上げるために大量に必要でした。それに対応できるような木材を供給しなくてはいけません。
この本では時代に即した新しい流れの萌芽ともいうべき取り組みをいくつか取り上げています。
まずは日本最大の国産材製材所・協和木材。機械化を進め、品質管理を徹底して含水率などの情報開示を積極的に行っている。営業部員に全国を回らせ外材や集成材を使ってきた工務店を国産材に切り替えさせようとしている。そして注文があれば翌日配達。商品の情報開示、販売の安定性、迅速な流通、まさに製造業では当たり前のことなのにやっていなかった国産材業界の中できちんとやっている。原木の集荷には自前の伐採搬出チームを持ち機械化部隊を各地に派遣している。ところでこの企業は所在地が福島県。あの震災後の放射線騒ぎでどうなったているのだろう。
次は栃木県矢板市にある母船式木流システムのトーセングループ。地元の経営難になった製材所と提携して規模を拡大していたのですが、重要なのは乾燥施設を集中化させたこと。
提携工場が1次加工を行い、それを全量トー線本体が買い取って人工乾燥させてから2次加工し、生産管理、在庫管理もしながら販売を仕切る。本体の工場は設備稼働率を高め、乾燥コストを縮減している。
京都府南丹市の日吉町森林組合。初めて知りましたが既に林業界では有名な存在だそうです。森林所有者に面積、林齢、現況写真をつけて森林整備のための費用と売り上げ予想を提示した「森林プラン」を作成している。そこでは森林所有者には金銭的負担がなく微々たるものでもいくばくかの利益を出せるように設定してある。このプランを提示することによって小規模の所有者の同意を取り付け間伐などの整備を集約して行っていく。これも事業内容を説明して損益を提示する、これはビジネスの世界では当たり前のことですが林業の世界ではほとんどなされていなかったことだったのです。森林組合の職員も作業班を完全月給制にして、待遇も事務職員と同じにする、人事異動も行う、全体会議を開き、組合の経理状況や見通しを報告し、定期的なミーティングで現場の進行状況を確認。これも当たり前のことですけどできている組合はほとんどない。これを可能にしたのは湯浅氏というすぐれたリーダーの存在とダム建設に伴う潤沢な資金だったのですが、全国から視察が絶えないとか。
日本の林業の中でも機械化による大増産により高い生産性を誇る木材搬出業者がある。兵庫県宍粟市の八木木材。高性能な林業重機を導入することによって間伐施業で通常の4~6倍の生産性を出し林業は儲からないという既成概念を吹き飛ばしている。従業員の年収を1千万円以上にするのが目標とか。森林所要者にも多額の還元金を出すことができているので依頼が押し寄せている。ただし少々荒っぽいので批判する人もいるみたい。
林業が産業として持続可能になるためには、木を伐るだけではなくて川下の需要に対する対応も必要だし、従業員の働き口と生活を安定したものにしなくてはいけない。さらには間伐材の活用方法を開発したり、無駄なく木を使える方策を考えていかなくてはいけないのだろう。
日本の山林所有者は小規模の個人が多く、世代交代する中で都会に移り住み山林に関心をなくし、きちんとした地積図もなく境界線もわからなくて所有地の特定さえ難しいことが多い。何を隠そう私のかみさんの実家がそういう状態で今はただ無駄に登記簿に載っているだけの状態です。おかげでいろいろ考えさせられましたが、岡崎森林組合は森林プランを提示してくれないのだろうか。

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