ごっとさんのブログ

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推移的推論のはなし

2015-09-26 10:16:47 | 自然
先日知人と(昔の研究者仲間です)飲んだとき、面白い話をしてくれなした。これは知人もどこかのブログで読んだということですので、また聞きのまた聞き風になりますが、少し書いてみます。

まず例からですが、AさんがBさんと喧嘩をして負けてしまいました。その後Aさんが見ているところで、BさんとCさんが喧嘩をし、Cさんが勝ちました。そうするとAさんは絶対にCさんと喧嘩をしようという気にはならないわけです。つまり自分が負けてしまった相手に勝つ人とは勝てるわけがないと判断するわけです。これを社会学?では推移的推論と呼ぶそうです。

人間は社会的活動をするときは、当然のこととしてこの推論を無意識に使っています。上司と歩いているとき知らない人と会っても、上司が丁重な対応をすれば、自分も丁寧な態度をとるといったことです。この推移的推論は高等動物では当然できており、サルなどはこれによって無駄な争いを避けているようです。また鳥類でも賢いとされているカラスの仲間のカケスで、知っているカケスと新人カケスとの関係を見て、新人カケスとのかかわり方を決めているという報告があるそうです。動物はどこまで個体認識ができるかという問題とも絡んで、なかなか面白いテーマのような気がします。

さて知人の話は、魚類でも推移的推論のような現象が起きたということでした。群れを成して回遊している魚が、個々の魚を区別できるとは思えませんが、種類によっては可能なようです。今回何という魚を使ったかは知人も分かりませんでしたが、一定の縄張りを持っていて、ほかの魚が入ってくると戦うという性質を持った魚のようでした。

まず2匹の魚を同じ水槽に入れると、すぐに戦いが始まるようです。どうやって勝敗を見るのかわかりませんが、見ていれば分かる形で決着がつくのでしょう。勝った魚と負けた魚を別の水槽に入れ、並べておくと、負けた魚は勝った魚に対して威嚇行動などせず、その水槽から離れた場所に逃げるという行動をとるそうです。そこでこの状態のまま、勝った魚の水槽により強そうな魚を入れ戦わせるのです。そうして最初に勝った魚が負けてしまったとき、新たに勝った魚を水槽に入れ、先ほどと同じように最初に負けた魚の水槽と並べるわけです。この負けた魚は、新たな魚と戦ってはいないのですが、明らかに負けたときと同じ行動をとったそうです。つまり魚でも推移的推論があることが証明されたということです。

私は若いころから、動物行動学に興味があり、そのたぐいの本を読んでいましたが、久しぶりにある意味くだらないけど面白い話を聞きました。こういった研究が何の役に立つのかというと、難しいところです。