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ごっとさんのブログ

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生物多様性の危機が一層深刻に

2022-12-11 10:48:19 | 自然
最近世界の人口が80億人を突破したというニュースが流れましたが、生物多様性に関しては絶滅危惧種が増大しているようです。

10月に世界自然保護基金(WWF)が生物多様性の豊かさの指標となる数値が、過去48年間で69%低下したとする報告書をまとめました。地球の全人口はこの半世紀で40億人以上増加しましたが、この間野生生物は3分の1以下に激減しという計算になります。

WWFが分析したのは「生きている地球指数(LPI)」と呼ばれる指標の数値です。WWFは英ロンドン動物園協会と協力して世界の哺乳類、鳥類、魚類、両生類、爬虫類の5230種、約3万2000個体群を対象に個体数や生育密度、巣の数などのデータを基に最新のLPIを産出しました。

LPIによって野生生物の個体群の変化や推移のほかに、個体数の減少の主な原因である生態系の変化を知ることができます。このため自然環境が中長期的にどのように変化し、破壊されているかが分かるとしています。

最新のLPI分析の結果、1970年から2018年までの48年間にLPIは平均69%低下し、生物多様性の消失が急速に進んでいることを示しています。特に世界の淡水域の野生生物の個体群のLPIは平均83%も減少していました。

報告書によると、人類の半数以上は川や湖などの淡水域から3キロ以内の圏内で生活しています。このため汚染や取水、野生生物の乱獲などが淡水域の生物多様性を脅かす原因になっているようです。

世界の地域ごとの分析では、生物種の個体群の減少率(LPIの低下)が最も大きかったのは中南米・カリブ海地域で94%も低下しており、魚類の中でも淡水魚や爬虫類、両生類が目立って減っていました。

次いでアフリカ地域が66%、アジア・太平洋地域が55%、北米地域が20%とそれぞれ低下していました。報告書は温暖化や気候変動が種を絶滅させた具体例も紹介しています。例えばオーストラリアでは2014年の猛暑日1日で、オオコウモリの4万5000羽以上が死んでいます。

コスタリカでは1989年、熱帯・亜熱帯地域の雲霧林で霧が発生しないために、オレンジヒキガエルが絶滅しました。気候変動は1000種類を超す動植物の個体群の全滅に関連しているようです。

報告書は「温暖化による気温上昇を1.5℃に留めることが出来なければ、今後何十年にもわたり気候変動が生物多様性損失の主要な要因となる可能性が高い」と指摘しています。

こういった生物多様性の危機が叫ばれてからずいぶん経ちますが、はたして人類がこの危機を回避することができるのでしょうか。絶滅危惧種が増加していくことは、ある意味生命の進化のひとつとして受け入れなければいけないことなのかもしれません。

酵素や微生物の有機合成への応用 昔ばなしその5

2022-12-11 00:08:17 | その他
前回合成したDL体の化合物に酵素を作用させ、光学活性体を作る手法は確立できたものの、酵素の価格が非常に高く実用化が困難であることを書きました。

そこでこの反応をいかに安価にするかで、精製した酵素ではなくこの酵素を持っている微生物を直接固定化して使用する方法の検討を行いました。

幸い私の会社はもともと微生物発酵を得意としており、多くの微生物のストックを持っていました。また微生物の固定化はそれを得意とする大学からその技術を教えてもらいました。

ある種の放線菌に加水分解の酵素活性が高いという菌があり、それを培養し菌体をそのまま固定化しました。

この固定化微生物反応は、モデル化合物の簡単なものの場合は比較的順調に反応しましたが、少し複雑な化合物になると色々な副反応が起き、生成物が多くの類似物質の混合物になることが分かりました。

これは菌体すべてを固定化していますので、当然目的とする酵素以外の多くの酵素も入っていますので、ある意味当然ともいえるものでした。この副反応を抑える検討などやっているときに、別の医薬品開発を担当している研究所から面白い相談を受けました。

新薬候補の医薬品を動物に投与すると、当然代謝を受けて排泄されます。当時の厚生労働省の指針では、この代謝物に関しても基本的な性質を抑えるようになっていました。

ところがこの代謝物は化学反応では難しい箇所に水酸基(OH)が入ったりして、化学合成では非常に時間がかかってしまうということでした。そこでこの動物の代謝物を微生物を使って作れないかという相談でした。

そこで微生物のスクリーニングをしたところ、カビの類にそういった活性があることが分かり、培養液に直接医薬候補化合物を加えるという乱暴な方法でしたが、低収率ながら動物の代謝物を得ることができました。

この結果こういった研究が医薬開発の支援研究として位置づけられ、私のグループの正式な研究テーマとなったのです。この医薬開発研究所は常時数種の候補化合物を扱っていますが、新たな候補化合物の開発が決定されると、その化合物が私のところに来るというシステムが出来上がりました。

それを良さそうな微生物と反応させ、生成物を同定し動物の代謝化合物の可能性がある物質として報告しました。それまで数十匹のマウスの血液から代謝物を精製単離して構造を決めていたものが、私のところのデータと比較するだけで済み非常に楽になったと感謝されました。

結局このテーマに時間を取られ、安価な酵素反応の開発はしぼんでしまいましたが、それまでのデータをいくつか学会や論文として発表し、良い評価を得ていましたのでまあ面白いことができたと良い思い出になっています。これで思い出話は終了します。