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認知症の早期発見と低コストの予防法

2022-08-08 10:38:12 | 健康・医療
認知症の原因とされるアミロイドβに着目した治療薬の開発は、多くの製薬会社で失敗しており、最近アヂュカヌマブが海外でやっと承認されています。

しかし残念ながらこの薬は日本では承認が見送りとなりました。この課題のひとつがこの薬の価格の高さと、早期発見のための検査も高額になることです。

アヂュカヌマブの効果が期待されるのは、軽度認知障害(MCI)及び軽度のアルツハイマー病の患者で、神経細胞が元気なうちに原因物質を取り除くことで発症を遅らせることができます。

この薬の販売価格は投与1回で約47万円と年間で610万円もかかり、臨床試験で確かめられた予防効果は23%となっています。これでは残念ながら「費用対効果」は非常に低いといわざるを得ません。

最近低コストでできる早期診断法と治療法が話題となってきました。認知症予備軍のことを医学会では軽度認知障害(MCI)と呼んでいます。これは放置しておくと1〜2年後にアルツハイマー病に進行してしまうため、早期発見が重要ですがこれが実は難しい問題でした。

確実に見つけるには「アミロイドPET検査」という高額な検査(約22万円)が必要だといわれていました。この早期発見のためのツールとして、モントリオール大学から出されたMoCAが開発されました。

これは軽度認知症診断ツールで、10〜20分ほどで終えられる30問の簡単なテストで、感度(患者を発見する精度)80〜100%、特異度(健常者を見分ける精度)50〜87%といわれています。

これは日本人向けに開発された検査ではないため、東京女子医科大学のチームがより高い精度を目指して6年前にToCA(東京版のMoCA)を開発しました。

これを2000年から北海道の浦臼町(人口1671人)において、フィールド医学調査の一環として町の保健センターと共同で実施してきたもの忘れ検診に取り入れました。この結果もの忘れ検診を受診した高齢の住民121人に対して、感度88.2%、特異度88.5%でMCIを検出することができました。

ToCAは比較的長文(25語)の物語の短期記憶を評価することが特徴で、パソコンから課題を住民に語り掛け、順次回答していくものです。

さらに研究チームは、MCIと診断された住民を対象に、1,MCI追跡調査で認知症への進行を予知することができるか、2.遅くなった歩行速度と低下した認知機能を改善するための総合的生活指導を1年以上実施することで認知症への進行が制御されていたかを観察しました。

この生活指導の具体的なものは、簡単にいうと適度な運動ですが、現在この効果を検証しているところのようです。現在まで2380日の追跡調査では、これらの取り組みが認知症の進行の予防につながることが観察されています。

このToCAを広く認知症検査として実施するのは難しいかもしれませんが、MCIの早期発見が認知症への進行を止めるきっかけになるのかもしれません。 


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