ごっとさんのブログ

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人類が行った新種誕生という自然破壊

2024-07-19 10:31:14 | 自然
先日も蚊の話を取りあげましたが、ここでは人間の行動による新種の誕生という進化の話しです。

蚊はかなり嫌われていますが、普段は花の蜜や草の汁などを食べているおとなしい昆虫です。しかし産卵期になり交尾したメスは動物から吸血し、卵を作るための栄養分としてタンパク質などが必要となります。

余談ですが蚊の細長い口の中には、6本の針が仕込まれています。外側の2本の針の先端にはギザギザした刃がついており、これで皮膚を切り裂きながら針を差し込んでいきます。次に使うのは管になっている針で、血液が固まらないようにする唾液を注入します。

この唾液によってアレルギー反応が起きると、ヒトは痒みを感じます。最後に使うのが中心にある太い針で、先端に開いている穴から血液を吸入します。残りの2本は、皮膚が開いた状態で固定するために使われているようです。

こう書くと簡単に思えますが、吸血は蚊にとっても命がけの仕事といえるようです。血液を吸うためには2〜3分はかかるし、その間は動くこともできません。気付かれれば叩かれたりして命を落とすことも多いでしょう。

さてロンドンで世界初の地下鉄が開通したのは、日本がまだ江戸時代の1863年です。ロンドンにはアカイエカ種に属する蚊として、トビイロイエカとチカイエカが生息しています。トビイロイエカは地表にすみ、冬季には休眠します。

卵形成には吸血が不可欠であり、主に鳥類から吸血します。一方チカイエカは地下鉄のトンネルなどの地下にすみ、一年中休眠しません。ヒトやネズミから吸血しますが、卵形成のために吸血は不可欠ではありません。

チカイエカの起源についてのひとつの仮説は、地表にすんでいたトビイロイエカが地下鉄のトンネルに侵入して、別種か亜種に進化したというものです。地下鉄のトンネル内は一年中暖かく、四季の移り変わりがありません。

そのため地下に侵入したトビイロイエカは休眠せずに、一年中活動するようになりました。吸血する対象をドブネズミや人間に変えたのですが、吸血できるチャンスは減ってしまいました。その代り、幼虫(ボウフラ)が生息する環境は豊かになりました。

このチカイエカがトビイロイエカから進化したという証明は、遺伝学的な実験により行われました。この辺りの詳細は省略しますが、人類が地下鉄を作ったことにより、新しい蚊の種類を作り出してしまったようです。

このようにわずか180年で新種が出来つつあるという事は、進化は意外と早く進むのかもしれません。人間は自然を破壊して多くの生物を絶滅させていますが、新しい生息環境を作りだして多くの新種を生み出していることも事実といえるようです。